「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」は私も涙がでました。

マーガレット・サッチャー氏が英国の首相となったのは、
1979年〜1990年のことで、日本では昭和最後の10年、
そうバブルの時代でした。

当時私は中高生位で、実家のテレビのニュース番組で見た
サッチャー氏の顔は良く覚えています。

ただ、残念なことに、当時のイギリスの経済状況や、
サッチャー氏がどのような政策をしたか等の重要な事は
全く理解しておらず、イギリスの首相は誰?とクイズ的に
質問されて、「サッチャー首相」と答えられる程度でした。

その後大人になり、当時のイギリスは産業空洞化による
不況だったことや、政府が赤字を抱えていたことが
わかりました。
日本の好景気とは対照的だった訳です。

しかしこれらは、サッチャー氏が実践した、
小さな政府政策などで改善され、イギリス経済は立ち直り
ました。ちなみに日本現状は皆様のご存じのとおりです。

思えば、当時の日本の首相は中曽根康弘氏で、アメリカは
ロナルド・レーガン氏ですが、どの方も在任期間が長い
こともあり、印象深いですね。


さて、映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」ですが、
映画を見た印象は、主演のメリル・ストリーブさんは、
サッチャー氏、本物に大変似ているという事です。

私がテレビで実物を見ていたのは、既に20も30年も前の
事ですが、本人では?と思うぐらいのインパクトをうけます。

そして、今も昔も思うのは、
女性で首相になる人はどんな私生活を送っているのか?
といった週刊誌的ことです。
旦那さんや家族がいることは知っていましたが、
自分よりも偉い人が奥さんとなる旦那さんはどんな気分
なんだろう。
当時はそんなことばかり思っていました。

今回映画をみて、四半世紀を経て、ようやくその疑問が
解消されました。


映画は近所の商店に牛乳を買いに行くサッチャー氏の
から映し出されます。
元首相が買い物に行く。ということがちょっと信じられない
のですが、レジに並んでも他の市民は誰も気づきません。
その様子がさらに信じられません。

その後で、ティーカップを洗うシーンがあり、
彼女の手から胸伝いに首そして顔と、画面が移動するのですが、
老齢のメイキャップということは、すぐに分かるのですが、
その技術の高さ、自然さは半端ではありません。

ちなみにアカデミー賞では、主演女優賞と、メイキャップ賞
を受賞しているのですが、これは間違い無い。と思いました。


ストーリーは、晩年(現在もご存命ですが)のサッチャー氏が
今は亡き旦那さんである、デニス・サッチャー氏との何気ない
会話を通じて、当時を振り返りながら進みます。

サッチャー氏が商店の娘であったこと、
学業に励みハーバード大学に合格したこと、
24歳の若さで選挙に出馬し落選したこと。
子供ができたり、そのあとで選挙に当選したりと、
彼女の20代から首相を引退する60代半ばまでの半生を描いています。


恋に落ちて結婚するシーンや、
旦那さんのスーツの色を細かく指定するシーンなどは、
普通の恋愛ドラマであり、普通の家族ドラマです。

それが見ていて意外性を感じるのですが、
そんな普通のシーンがこの映画の見所だと思います。

全編を通じて感じるのは、サッチャー氏の旦那さんへの愛情です。
私生活を直接描いたシーンは、映画全体の割合からすると少ないのですが、
二人のセリフから、その点は感じられます。

いわれてみれば、あたりまえですが、
サッチャー」さんは、愛する旦那さんの名字なわけで、
もともとは「マーガレット・ロバーツ」という名前だった訳です。

なお現題は「The Iron Lady」と彼女のあだ名ですが、
日本ではやはり「サッチャー」という名前が有名なので、
公開に当たり、名前を主題に出したのだと思います。

(映画をみたあとで、Wikiで調べて分かったのですが、
自伝(本)にサインをするときに、間違えて旧姓書いてしまうシーンが
あります。映画を見る前に覚えておくとよいかとおもいました。)


時に厳しい政策を断行する鉄の女でありつつ、
しかし一人の女性であり、妻であり、母親でもあった
マーガレット・サッチャー氏」の生き方に大いに感動する映画でした。
自分の信念に従って前向きに生きる姿に心動かされます。


若い方など、歴史的背景が分からないと、
理解しにくい部分もありますが、ヒューマンドラマとしてみても、
もの凄く質の良い映画と思います。

伊達にアカデミー賞にノミネートされていません。
日本でも、このレベルの作品を撮る人が現れないかと思いました。

http://ironlady.gaga.ne.jp/


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