「アーティスト」セリフが無くても感情は伝わってきました。

いまだ3D映画を見たことが無い私でも、
無声映画を見たことはありません。

この1本を見なければ・・・、
他にもっと面白い映画を見ることができるかも。

アカデミー作品とはいえ、無声映画をみるべきか、

・・・悩みます。

やっぱり、
外国の映画は、言葉が分からないのだから一緒だろう。
とか、思いませんよね。

映画を見ながらボリボリ食べるポップコーンの音が
迷惑にならないだろうか?

そんな、余計な心配まで思い浮かびます。

いつもは見ない、映画のレビューも、今回は少しだけ見ました。

そして、
「映像だけでも気持ちは伝わる」というコメントに心を押され、
いつもの映画館に足を運び、

そして、
何時ものように、ポップコーンを片手にシートに座りました。(笑)


本日ご紹介する映画「アーティスト」は、
今年のアカデミーショーで、5部門を制覇した作品です。
(作品賞、監督賞、主演男優賞、作曲賞、衣装デザイン賞)

予告編を見ると、かなり面白そうなのですが、
3D全盛の今時、モノクロ&サイレント映画である点が引っかかります。

映画「アーティスト」は1920〜30年代の無声映画から、
映画に音が出るトーキー映画への変遷期を舞台にした映画です。
主人公は、無声映画時代の俳優で、トーキー映画を否定し、
落ちぶれて行くのですが、この様子を当時と同じような
モノクロ映像と、BGMだけで表現します。

映画俳優と映画制作を舞台にした映画なので、
当時の映画館の様子も映し出されます。
スクリーンの前に、オーケストラの方がいて、
音楽を奏でています。
このシーンが、映画の最初のほうに登場するあたり、
ちゃんとシナリオが錬られています。
そして本作ももちろん、
当時と同じような雰囲気を醸し出しています。


Wikiによると、映画制作するに当たり、
当時のサイレント映画を徹底的に調査研究したそうです。
とくに、少ないセリフを字幕で表現する技法は効果的です。

絵的には、1920〜30年代の街の様子も沢山登場するのですが、
先日見た、Alwaysよりも遙かに古く、昔の車がバンバン走って
います。しかし全く違和感は感じませんでした。
また、当時既に家の中には冷蔵庫があるのですが、
豊かなアメリカを感じます。

もともとカラーで撮影して白黒にしたということですが、
一部、主人公が夢から目覚めるシーンは微妙に色が付いて
いたように感じました。(単なる気のせいかもしれませんが。)

途中から、カラーになったり、音が出たりするのでは
ないかと期待したのですが、最後までモノクロ&無声でした。


ストーリは当時の無声映画が、メロドラマが多かった
ということで、本作もメロドラマ仕立てになっています。

無声映画時代のスターである主人公は、
新しい映画であるトーキー(音声付き映画)を否定し、
無声映画こそが「アート」だとして、自主製作の映画を
作るのですが、失敗します。

そして一人酒に溺れ、ノイローゼ(うつ状態)になり、
そして最後はピストル自殺をしようとします。
そんな主人公を助けるのが、昔女優の卵で、トーキー映画
のスターと成った愛する女性でした。

「支えてくれる誰かがいれば、人生はこんなにも輝ける」

とは予告編のセリフですが、
最後に、主人公は愛する女性と再び映画撮影に挑みます。


映画全編を通じて感じるのは、主人公が
”常に”カッコ良いということです。

映画スターのシーンでも、落ちぶれてた後も、
男ならかくありたい。と思う凛々しさです。

私も歳をとったら、このような大人になりたい物だと
感じながら映画を見ました。

しかし、
映画の後、自宅に帰ってネットで調べてびっくりです。
主役のジャン・デュジャルダンさん。
私よりも3つもお若いというから驚きです。

また映画で見ると、50歳代の映画俳優が、長年連れ添った
妻との関係にさめ、20代の新人女優と恋に落ちるような、
メチャクチャ年の差を感じた、相方の女優ベレニス・ベジョさん。
お二人の実年齢では4〜5歳しか違い有りません。
カラーだったら普通のカップルです。

男はカッコ良く歳を取り、女は若く美しく映し出される。
これが、白黒映画の効果か。と思ってしまいました。

なお、本作で登場する当時の衣装も素晴らしくカッコ良いので、
そこも見所の一つだと思います。
モノクロなのに、アカデミーの衣装デザイン賞ですからね。


そして最後に、この映画の最大の俳優さんは、犬(アギー)です。
犬のことは詳しくありませんが、ジャック・ラッセル・テリア
というらしいです。

間抜けな顔なのですが、演技をみるとこれこそCGではないか?
というぐらいの演技をします。

個人的には、こんな凄い犬が登場すると肝心のストーリに
邪魔をするような気がしました。
それぐらい凄いです。


映画を見た後、こんな素晴らしい映画は見たことがない
と映画館の廊下を歩きながら話す声が聞こえました。

「アーティスト」という題名は、
無声映画こそがアートという主人公と、
この映画を現題作り上げることがアートという2つの
意味があるのではないかと感じました。

個人的には、若干映画好きのための映画。という印象も
持ちましたが、まずは騙されたと思って見て頂きたいと
思います。


http://artist.gaga.ne.jp/