岡本 太郎著「自分の中に毒を持て」を読んで、初めて岡本太郎という人を知った気分です。凄い方です。!!

むかし・むかし、

芸術は爆発だー」

・・と、叫びながら、
テレビに出ていたおじさんがおりました。

おじさんは結構テレビで見かけるので、
芸人さんだと思っていたのですが、

のちに岡本太郎さんと云う有名な芸術家で
あることを知りました。

全く余談ですが、
大学時代に岡本君という友人がいたのですが、
あだ名は、タローくんでした。

それ位、
つまり「岡本」と来れば、
続きは「太郎」になる程の、
当時の若者にとって有名人だったのです。

そんな岡本太郎さんの代表作は、
大阪万博のシンボルとなる
太陽の塔」ですが、

なんとも変な形で、
私は未だにこの芸術を理解することが出来ません。

ただ「太陽の塔」を見るたびに思い出すのは、
宮崎アニメ「千と千尋の神隠し」で登場する、
カオナシ」というキャラクターに、
なんとなく似ているという事です。

宮崎監督が参考にしたのではないかと勝手に思っています。
※本当は米林宏昌監督がモデルなんだそうですが。


・・・という訳で本日は岡本太郎さん著

「自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間”を捨てられるか」

をご紹介します。


先に書きましたとおり、
昔、岡本太郎さんをテレビで頻繁に拝見していましたが、

芸術は爆発だー」のイメージが強く、
実際はどのような人物で、どういった功績が
あるのかを知りません。

本書を読んで、今頃はじめて
岡本太郎さんの人生を知った次第です。

本書によれば、
小さい頃から、理屈っぽく一本スジが通っており、
両親に議論をふっかけたり、小学校の先生と合わず
4回も転校したり、

芸術の道を志し、
パリのソルボンヌ大学に留学するのですが、
そこでは、哲学、社会学そして民俗学に没頭した
そうです。

18歳で渡仏しした岡本太郎さんは、
パリ郊外のジョージ・ル・ロアにある
パンシオン・フランショという学校の寄宿制になり、
教養や詩の朗読合唱などを身に付けました。

その頃、一番驚いたのは、
自分より少し若い16〜17歳の同級生が、
休みになると街に繰り出し、
可愛いと思う女の子に声をかけて、
消えて行く様子でした。

つまり女性を次々とナンパして、
そのまま寝んごろになっていく様子です。

当時の日本では、
異性は羞恥心と謎のものであり、
フランスの自由と開放的な空気に驚いた
ということですが、

自分も積極的にこの空気になじまないと行けない
と思い、次から次へと女性に声をかけたそうです。

そして、様々な女性と付き合い、
同棲した話が赤裸々に語られています。

岡本太郎さんの、
文体は至って普通の現代の文章ですので、
意識して読まないと、気付かないのですが、

これは戦前の話なのです。!!
単なるモテ男の自慢話ではありません。

そして、
フランスがナチスドイツに占領される
昭和15年岡本太郎さんは日本に帰ってきます。

その後がまた凄いのですが、
昭和18年岡本太郎さん30歳の時に徴兵に合い、
軍事訓練をうけた時の辛さが書かれています。

パリの大学を卒業し、
自由恋愛を謳歌した岡本太郎さんが、
戦前の教育を受けた18歳位の若者と、
一緒に出兵するわけです。
いったいどれ位大変なことだったのかと思います。


本書で書かれるのは、
このように岡本太郎さんの幼年期から、
30歳位までの話が中心です。

書評では順を追って書きましたが、
実際はテーマ毎にバラバラな印象です。

本書を読むと、
岡本太郎さんの偉大さが本当に分かります。

人は弱く、何をやったらよいか常に悩み、
三日坊主になっては落ち込み、
・・・そんな生き物であることを、
言葉を変え、重ねて書かれています。

また大学卒業の学歴は、
昔の人が偉そうに見えるためにヒゲを
生やしていたのと同じ程度と言い放ち、

バブルまっただ中で経済発展著しい
日本の経営者達に、
文化や教養、心が無いと言います。

なによりも、日本人が持っている
常識という名の世間の目や、
自分が知らず知らずのうちに、
凝り固まってしまったカラを破ることの重要性を
説いています。
これがタイトルの、

「自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間”を捨てられるか」

になっています。
食えなきゃ食えなくても言い。と覚悟することで、
オレはもっと他の行き方があったんだ。
と迷いや後悔をせずにすむ。

 たとえ食えなくても、
 本当の行き方の方向に進みたい、
 そう決意した情熱が自分を突き動かしている。<p28>

当時は今よりもさらに常識に縛られる
時代だったと思います。
この覚悟こそが、
岡本太郎さんが岡本太郎さんである所以です。


単なる絵描き・芸術家を越えた深い教養や、
若い頃にパリで身に付けた文化性、自由感、
そして客観的に日本を見る力などが
本書からは伝わって来ます。

今時のビジネス本と違って、
ちょっと日本語が難しい印象もありますが、
落ち込んだ心に勇気を与え、
心を動かされた今日の一冊です。

日本人なら是非とも、
読んで見たい名著だと感じました。


追伸)

本書では「芸術は爆発だ」の意味も
解説されております。
なんとなく言った言葉がはやって、
流行語大賞になってしまったそうですが、

爆発というと、爆弾の爆発のような
イメージがありますが、
岡本太郎さんのイメージは、
音もなければ物も飛び散らない、
精神が宇宙にパッとひらく。
そんな感じなのだそうです。


↑文庫本の他に、単行本も出ています。


 
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