佐藤留美著「なぜ、勉強しても出世できないのか? いま求められる「脱スキル」の仕事術」をご紹介します。

本日は佐藤留美さん著

「なぜ、勉強しても出世できないのか? 」
ーーいま求められる「脱スキル」の仕事術ーー

をご紹介します。

著者の、佐藤留美さんは大学卒業後、
出版社や人材関連会社を経て、
現在は経済誌や情報誌など
主に週刊誌向けのビジネス系の
ライターをしています。

過去には、
スキルを身に付け、
資格を取得し、
転職や起業等でキャリアアップを推奨するような
記事をたくさん書いていたそうです。

その過程において、
成功者と呼ばれる沢山の起業家や、
MBAホルダーなどのビジネスマンを数多く
取材する機会を得ました。

今回「なぜ、勉強しても出世できないのか? 」
というタイトルの本を出版するに至ったのは、

当時取材した、彼・彼女らのどれ位の数が、
現時点で成功を維持できているかを知ったとき、

つまり、
思うように成功できなかった沢山の現実を目にして、
こうした本を出すに至ったようです。


本書では、勉強をして出世を目指すタイプを

スキルアップ教」

と読んでいます。

私も本書で教祖として書かれる、
勝間勝代さん、中谷彰宏さん、
大前研一さん、堀紘一さん・・
などの著書を沢山読んでいます。

私の場合は、特に意識はしていませんし、
勉強や資格取得に夢中になっている訳でもありませんが、

私も確かに「スキルアップ教」の一員であることには
違いないと思います。

そんな私が、本書を購入したのは、
反対意見も読んだ方がよい。と思ったからです。


本書によると、
この「スキルアップ教」を生むきっかけになったのは、
80年代〜90年代の社内留学のMBA取得組や、
リクルートの転職市場の開拓などがあると解説されます。

確かにその一世代前に
大前研一さんは日立から、堀紘一さんは三菱商事
から社内留学制度を利用してMBAを取得し、
有名になってきました。

私も、高校生やせめて大学生の時に、
MBAコンサルタントという言葉を知っていれば、
漠然と憧れ、そうした道を目指したと思います。


一方、90年代と云えば、
リクルート社の「とらばーゆ」に代表される
転職やフリーターの時代です。

資格と云っても、簿記検定や秘書検定もしくは、
IT系の資格なので、本書の「スキルアップ教」とは、
また違うように感じます。


私個人的には現在の「スキルアップ教」の元祖は
2007年に出版され、私も大いに感心した
勝間勝代さんの、「年収10倍アップ勉強法※」

※正確には「無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法」


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※正確には「無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法」

ではないかと思うのですが・・。


本書の面白いところは、
90年以降の世の中の流れや代表的な著書など
年表的な流れを詳しく記している点です。

また、先にも書きましたが、
著者は沢山のインタビューより本書を
書かれているため、

個々の内容に関する内容も深く、
信頼性も在るように感じます。

何故そのように感じるとかと云うと、
私の属する業界である、
IT系やコンサル系の内容が、
現実と一致しているからです。

本書にもありますが、
現在は何かの本やドラマのように、
コンサルタントが提案書を作り、

御社の改革案はこれです。

・・と”今”やっても、
それに大金を払う会社は殆どありません。

私の体感でも、コンサルタントの仕事は、
もっと泥臭い実行支援にシフトしています。

即ち、今のコンサルタントは、
人手不足時の臨時派遣のような雰囲気に
なりつつあります。

堀紘一さんの「コンサルティングとは何か」

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によれば、コンサルティングとは、
クライアント企業の経営戦略を練ること。

とありますが、
こちらのほうが実態とは乖離しつつあるように
感じられます。

本書でも、欧米の有名コンサルタント企業が、
日本支社のリストラをしている様子が書かれています。


その他に書かれるのは、医者、弁護士、会計士など、
一昔前は資格があるだけで、高給が保証された
いわゆる「士業」の衰退です。

特に弁護士や会計士など、
国策として増やした訳ですが、

従来、資格を取って最初に就職するであろう、
弁護士事務所、会計事務所などに属することすら
出来にくい状況が生まれています。

士業の問題は、
タイトルの「なぜ、勉強しても出世できないのか? 」
の出世=企業内の話とはちょっと違う印象もありますが、

世の中の厳しい実態を知るという意味では、
良く取材され内容もまとまっているように感じます。


私が一番興味が有る、
企業内の勉強における話題に関して触れますと、
MBA取得や、資格、週末や朝の勉強会の話題が
触れられています。

多くの場合、資格を取ったからといって給料に
反映されないことや、会計監査の基準が変わったり
して資格が使えなく無かった話題、

TOEIC変調主義の話も面白いです。
某インターネット会社や某アパレルと表現されて
いますが、楽天ユニクロであることは明確です。

内情が詳しく書かれていますが、
そういった実態を知るのも、
週刊誌的好奇心を満たすという意味では面白いです。


また印象に残るのは、
朝の勉強会に参加する部下の査定を下げた。
という話です。

理由は朝の勉強会の準備に力を入れることで、
業務に身が入らない。という本末転倒なものですが、

多くのビジネス本では、
早起きして勉強したり、ブログやメルマガ、
本まで書いて成功したような話が多々あります。

思うに、
朝一のすっきり頭で、仕事の効率が上がる時間帯に、
本業の仕事以外の”勉強”に振り分けたら、
残りの疲れた頭で本業をこなすことになります。

これでは本業で成果が上がる筈がありません。


先日も「30代で年収3000万」本をご紹介

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※正確には「30代で年収3000万円を実現した300人に聞いた!稼げる人 稼げない人」

しましたが、

その中には、朝起きる時間の調査があります。

データにると7時台に起きるというのが30%で最多で、
取り立てて早起きする必要は無いという結果が
得られました。

ちなみにこちらでは、
成功者の25%程度がいわゆる「士業」です。
ただ、過去実績ですので、今後は本書のように
士業は難しくなってくるという事はあると思います。

※本書でも地方では、医者不足などということもあり
 士業で成功するかどうかは、土地柄の要素が大きいとあります。


話がそれましたが、
組織に属するサラリーマンが、
勉強することによる最大のディメリットは、
自分だけ偉くなってしまうことです。

例えば、
MBAホルダーの横文字の単語が鼻につく。
に代表される状況が発生すると云うことです。

私も経験がありますが、
ちょっと勉強すると、
その言葉やフレームワークを試してみたくなります。
また、知らない周囲の人間がバカに見えます。

知識は上手く使えば、生産性の向上に繋がり成果と
なりますが、正しく使わないと単に反感を生むだけです。

私の勤める会社でも、
少し前に「ファシリテーター
という会議を予定通り仕切り成果を出す。という、
議事進行スキルを習得するブームがありました。

会議の段取り(つまり時間割)を予め決めて、
それにそって進めて行くわけです。

私も含め相当数の人数が研修に参加し、
スキルを得たわけですが、

事前の準備や根回しが大変なうえ、
納得感が得られなかったりと、
だんだん廃れていきました。

会議をマネジメントし、成果を出す。
という欧米型のやり方がなじまなかったのです。

会社ぐるみで勉強したことが使えない例も
あるというのに、個人で勉強したことを
会社内で生かすのは、かなり大変な事です。


本書では、スキルや資格などの現状の分析に始まり、
スキルアップのウソと称して9つの理由、
成功するための仕事術として28の方法を紹介
しています。

これらを読むと、著者が企業人として活躍したことが
在るのか?といった薄さを感じますし、
従来スキルアップ記事にしていた、手のひら返し?
的な心証を持つ事も事実ですが、

しかし、先にも書いたように
現状を書くことに対する精度は高いと思います。

ですから、これから就職や、資格取得、スキルアップ
目指す人特には特に参考になるのではないかと思います。

また「スキルアップ教」の方には、耳の痛い話も多いです。

世の中には、色々な面があるということを知る意味では、
参考になります。
私は本書を読んだからと云って、
勉強が不要とか役に立たないとは思いません。

本書を読むのも、勉強しスキルアップする一環だと思います。

大変参考になりますので、
是非読んでおきたい一冊と思いました。



 
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