ジェイソン・クラーク主演『エベレスト 3D』を観ました。エベレスト登山とは何か。それがわかる映画です。

何年か前に漫画「神々の山嶺」を読みまして、
それがすこぶる良かったのですが、

※その時の記事です。
谷口ジロー/夢枕獏「神々の山嶺」を読みました。 - つれづれなるまゝに、日ぐらしMacに向かいて・・・

実はその漫画を読んで初めて、

登山というものがどのようなものなのか、
エベレストに登るというのは、
どうゆうことなのかを知りました。

今日はそのエベレスト登山を題材にした映画を
ご紹介するわけですが、
偶然でしょうか?

来年3月に岡田准一さん主演で
神々の山嶺
が映画化され近々公開されるということで、

http://everest-movie.jp/

誰かが打ち合わせをしたかのように、
洋画と邦画でエベレストの関連の映画が重なるのです。

映画版の「神々の山嶺」も今から楽しみです。

・・という訳で本日は、ジェイソン・クラークさん主演映画

 『エベレスト 3D

をご紹介します。

今から2年前の2013年5月に三浦雄一郎さんが
80歳の高齢でエベレストの山頂に立ちました。

下りで体調を崩し、
途中からヘリで下山したことで、
これでは登山成功でないなどと議論となりました。

しかし私は、少々残念(自力で下山するに越したことはない)ですが、
登山の成功という観点では全く問題無いと考えていました。

というのは、エベレスト登山というものがどうゆうものなのか、
神々の山嶺」を読んで少し登山の知識があったからです。

この映画でも似たようなエピソードが登場しますが、
そもそもエベレストはジェット旅客機が飛ぶような
高高度にあるため、
空気も薄く、
空気の浮力で飛ぶヘリコプターでは
到達できないところにあるのです。


つまり文明の力、
乗り物では到達出来ないところにエベレストはあり、
自らの足で歩いて行く他無いのです。
そのような場所が地上にあるということは、
普段日本にいるとピンと来ません。


予告編でも登場する、
渓谷に掛かる旗が沢山連なる美しい吊り橋を越え、
エベレスト山頂を目指す一行はベースキャンプを目指します。

そこから先は高所に少しずつ体を慣らしながら、
時間をかけ高度の高いキャンプ地に移動していきます。
そして最後のキャンプ地から山頂を目指し
軽装備で山頂を目指しアタック登山をするのです。

登山ルートの途中にある難関は、
アイスフォールと呼ばれる氷河のクレパス帯です。

何キロもある装備が満タンのリュックを背負い、
滑りやすい靴底の登山靴で、更に滑りやすい
アルミのはしごを渡るのです。

映画でも滑って転んでクレパスに落ちそうになるシーンが
出てくるのですが、エベレストに登る前には、
このような危険ゾーンをいくつも越えて行くのです。


「エベレスト3D」は、予告編を見た瞬間、
この映画は絶対に観たい!と私は思いました。
予告編から素晴らしいのです。

しかもハリウッド映画なので、
きっと素晴らしい映像があり、
危機を乗り越え最後には生還する山男が
ヒーローの映画に違い有りません。
安心して観ることができそうです。

そんなことを思いながら映画館の席に着きます。

劇中の年代は1996年。
今から約20年前です。

最近、20年位まえの時代設定の映画が多いような
気もするのですが、なにかの偶然だろうと、
思うことにします。

映画の主な登場人物は、
エベレストに民間人を登頂させる登山ガイド会社
「アドベンチャー・コンサルタンツ(AC)社」の
社員とツアーに参加するメンバーです。

映画ではAC社の設立者である、
ニュージーランド出身のロブ・ホール、
顧客でアメリカ人で精神科医のベック・ウェザーズほか
6名の顧客が麓の街に集まり、
居酒屋でツアーの説明を受けるシーンから始まります。

映画の前半はわりと暇というか何気ないシーンが多く、
もしかしたらドキュメンタリー映画
ちょっと失敗だったかも。
などとすこし不安も感じました。

・・がしかし、映画を見終わって思うのは、
この冒頭をよく見て記憶していなかったのが失敗でした。

というのは、
冒頭のシーンで主要人物の紹介をしており、
映画の後半を観るときに大切なのです。

そうでなくとも外人の俳優さんは区別が付きにくいのですが、
特に映画の後半の登山シーンでは、髭とかゴーグルなどの装備で
区別が付きにくくなります。

そんなこともあり、
ジェイソン・クラークさん演じる
ロブ・ホールが映画の主役であると認識したのは
途中まで映画が進んでからでした。


映画の物語の設定となる
1996年のエベレストのベースキャンプは、
沢山の登山隊が一斉に山頂を目指していました。

しかも日程はどの隊も、
一番天候が良いと考えられる5月10日が山頂アタック日です。

中には素人と思えるような登山隊もいます。
このため、登山ルートの至る処で渋滞が発生し、
それが危険な状況を生む原因の一つになっていきます。

神々の山嶺」でも書かれていた、
過去に遭難して亡くなった登山家の死体
(エベレストからおろせず、
登山の目印になっているケースも有る)などの
残酷な現実も表現されています。

途中様々な事件が起きつつも、
しかし、互いのチームは協力をすることで、
主要メンバーは5月10日のアタックを迎えることができます。

そしてAC隊でも、全員ではありませんが、
リーダーであるロブ・ホール他、数名は無事に
エベレスト山頂の登頂に成功します。


若干気になるのは、
役者達に、あまり寒さを感じさせない点です。
もちろん雪はあるので、氷点下の世界に違いないのですが、
しかし、エベレストの−40度の世界らしさは感じません。

(後でYouTubeの製作画像を観たら、
スキー場のリフトっぽいものが写っていました。
それでも冬山は寒いですがね。)

・・などと思っていると、
ここからが映画の始まりです。

当時、世界最多4度のエベレスト登頂経験がある
主人公ロブ・ホールは計画性の高い緻密な男です。
今回のアタックでは下山時刻を午後2時と決めていました。

下山を始めると、
前回のツアーでも、時間切れで登頂出来なかったメンバー
ダグ・ハンセンが登ってくるのです。

もちろん静止を促すのですが、
しかし、これが最後のツアーだからと言うことを聞きません。

彼はエベレスト登山のツアーに参加するための
1,000万近い費用を、
郵便局員など3つの仕事を掛け持ちし、
さらに寄付を募ってやってきたのでした。

彼がエベレストを目指すのは、
「夢はかなうものだ」
と寄付をしてくれた地元の子供達に伝えたかったのです。

途中まで下山した主人公ですが、
前回の登頂を目前に諦めたことや、
登山に対するピュアな気持ちを知っていることもあり、
再び二人で山頂を目指します。


恐らく、映画を観た全ての人が、
あ〜。これはいけない。
と思ったに違いないシーンです。

外人さんも人の子。
人情には弱いんだ。
と思いながら私も映画に釘付けになります。

とはいえ、
ハリウッド映画ですから、
ヒーローは困難に負けません。

そう信じて映画を観るのです。

無事登頂に成功し、下山をはじめるのですが
しかしダグ・ハンセンは弱り切っています。
そして、そこで嵐に巻き込まれるのです。

今回、映画を観て初めて知ったのですが、
最後のキャンプを出てアタックに向かうのは午前0時頃で、
そこから12時間以上もかけて山頂にたどり着き、
そして下山して降りてくるのです。

得てして山の遭難は下りで起きる訳ですが、
12時間も登ったらそりゃ疲れるわけです。
しかも酸素濃度は地上の1/3しかありません。

そのような状況で、
肝心の酸素が欠乏(酸素ボンベが空になる)
していきます。

崖の稜線にある細い登山道で動けなくなり、
ダグ・ハンセンは滑落して消えて行きます。

映画的には予想通りの流れです。

そこへAC社のサポートメンバーが僅かに残る
酸素ボンベを背負い主人公を助けに来るのですが、
しかし彼も低体温症で狂ったようにして
亡くなってしまいます。

そのシーンと同時に、
先に下山したメンバーも嵐にやられます。

ベック・ウェザーズや、
七大陸最高峰のうち六峰の登頂に成功し、
日本人女性として2番目にエベレスト山頂に立った
難波康子さんも遭難します。
そんな凄い登山家も遭難してしまう状況です。

それでも私はハリウッド映画だし、、
と余裕で映画を観ます。

主人公ロブ・ホールとは無線が繋がっているのですが、
手足の感覚が無く、もう動けない。と言っています。

普通に考えれば、
あきらかに凍傷で動けず、遭難しています。

ハラハラしながらも、
そこから生還するのがアメリカンヒーローだろう。
と思い映画を観ます。

実際の映画でも、
奥さんと無線で会話できれば、ロブ・ホールは
元気を取り戻し、下山するのではないか。
そんなセリフが入ります。

これに違いない。・・と私も思います。

早速ニュージーランドにいる奥さんと、
衛生携帯電話と無線機をくっつけて会話をします。

極めて映画的な表現です。

しかし、主人公ロブ・ホールは動けないのです。


さらに映画では、
途中で遭難して死んだと思われた
精神家のベック・ウェザーズが生き返ります。
そして自らの足でキャンプに帰って来るのです。

凍傷で重症であることや、
ヘリコプターの飛べない山岳帯のため、
生還は難しいだろうというセリフが入ります。

しかし、アメリカに住む奥さんが政府に働きかけ、
必死の努力で無事に生還するのです。

このシーンをみて、
映画を観ている人は、主人公のロブ・ホールも
きっと生還するだろうと思うのです。

再びシーンは主人公ロブ・ホールと、
奥さんの会話のシーンです。
娘の名前はサラがいい。という会話を最後に
主人公は亡くなって行きます。

え〜〜っと!マジーーぃ。と思います。

主人公は死んでしまうのです。
ハリウッド映画だから、生還するんじゃないの。

と思うのですが、そうではなかったのです。

映画のエンディングロールで、
実際のサラ(本物)が映し出されるのですが、

そうです。
この映画は1996年に実際に起きた
エベレストの大遭難事件を題材にした
ノンフィクション映画だったのです。

自宅に帰ってWikiで調べて初めて知りました。

無線機と携帯電話をくっつけて、エベレストの
山中とニュージーランドで会話したのも、
本当にあった出来事なのです。

改めて、そうだったのか。と思います。


さて、
このエベレストでの遭難事故に限らず、
この大事故が起きる原因は一つではありません。

映画を観る限り、
・沢山のツアーが集中しすぎた。
 →コース渋滞が発生。レベルがバラバラ。
・ロープ帯が切れている箇所があり復旧に手間取った。
・何故か予備のガスボンベが空だった。
・急激な天候悪化。
・計画を遵守しなかった。
等々

どれか一つの問題が発生していなければ、
この大遭難事故は起きなかったように思います。

逆に言えば、ここまで不幸が重ならなければ、
エベレスト登山の難易度は下がりつつあるということです。

映画を観て意外だったのは、
山頂近くまでロープが貼ってあることでした。
登山者はそのロープを頼りに登るのです。

それぐらいまで準備された環境ができあがっており、
だから民間から募集をするツアーが組める
ようになったのだと思いました。


主人公の死の間際、
祖国に残した身重の奥さん(キーラ・ナイトレイさん)と
会話するシーンに涙する人も多いと思います。

ドラマとしてだけでなく、
エベレスト登山とはどんなことなのか、
そして雄大なエベレストの自然が良く分かる、
素晴らしい映画と思った今日の一本です。


追伸)
映画に登場する、日本人難波康子さんを演じるのは、
森尚子さんというロンドン在住の役者さんです。
最初中国か韓国の方かと思ったのですが、
しっかり日本の方でした。

難波康子さんを少し調べてみると、
早稲田大学在学時に登山を始め、
その後も自ら働きながら資金を貯め、
世界七大陸最高峰を目指しました。

通常プロの登山家となりスポンサーを集め
その資金を得て登山をするのですが、
そういった意味で一線を隠しています。

映画を観ながら、
この人だけは生き残って欲しいと思うのですが、
亡くなったシーンなど絵的に厳しい物でした。
(そういったリアル感もこの映画の特徴です。)

Wikiによると翌年シェルパにより遺体が回収され、
現地で荼毘に付されたそうです。
ご冥福をお祈りしたいと思います。

今日のアクセス:411,285

http://everestmovie.jp/