「人生を創る言葉」を読みました。

小さい頃、父や母が生まれた戦前は、遠い遠い彼方でした。
両親のお説教に対して、「そんなの古い!!」と、よく口論をしたものです。

私は終戦から四半世紀後に生まれたのですが、
年をとってみると、20年位前、つまり学生の頃はついこの間のようにも思い出されます。
そして、「じつは戦前は、そんなに昔の事ではない」と思うようになりました。
すると、両親の説教のもとになった考え方が古い。というのは必ずしも正しくない、
ことに気づいたのです。

本書は、著者である渡部昇一氏が子供の頃(戦前)に読んだという、講談社の雑誌の
偉人伝の内容を記した物です。
この偉人伝は、キングという当時大変に人気があった雑誌の付録で、時の子供達は
回し読んでいたそうです。

この本があったからこそ、渡部氏は知識人としての今がある。
という位のことを書いています。
偉人伝の内容は、新渡戸稲造徳川吉宗エジソンやクラーク、といった面々が
どのような時に何を考え何を語ったか。を中心に記載されています。
どこかで、聞きかじった内容も多かったのですが、たとえば
シートンシートン動物記の著者)の若い頃の話など、偉人の行動に心を動かされた
章も多々ありました。
※詳細は是非読んで頂きたいです。


渡部氏のように、このような本を読み戦前の教育をうけた若者が、
戦後のアジアの奇跡といわれる、高度成長を支えたということは言うまでもありません。
戦争に負けても、国民全体が高い志とモチベーションを維持していたのです。

おそらく明治期における、福沢諭吉の「学問のすすめ」にも相当するものかも
しれないと思いました。


本書を読んで重要と思ったことは、
(たまたま終戦記念日の前後に読んだこともあるのですが)
参照元となった偉人伝は、対米戦争直前であるにもかかわらず、欧米の偉人が
多数紹介されている点です。
渡部氏もコメントしていますが、これは鬼畜米英などといわれるのは、
ごく短い期間だった。という事を表しています。
古くて暗くて真っ暗な、戦前のイメージはどうやら何物かによって作り替えら
れている(つまり情報の刷り込み)ということに薄々気付くのです。


確かに私(達)も、偉人の伝記は読みました。志ももった筈です。
しかし、どうして結果が違ってしまうのでしょうか。

戦前のなにか(A)+偉人伝=高度成長
戦後のなにか(B)+偉人伝=失われた何十年

こうして考えてみると、失われた十年だけでなく、
コロコロ変わる総理大臣や、消えてしまったお年寄りなど、多種多様な問題も、
必然的に日本に現れた現象かもしれないと思うのです。