「減速して生きる ダウンシフターズ」をよみました。

社会人になって、仕事もできず、
それでもひたすら頑張っていると、
いつしか職場では中堅、どちらかというと、
「オヤジ組」に入っている自分に気付きます。

いつの間に過ぎてしまったのか?
自分でも分からず、何時しか時間のスピードだけは
猛烈な速さとなっていることに気付きます。

これで良いのだろうか。

誰もが思います。

しかし、上司は頑張れというし、
部下は猛烈にこちらに向かって走ってきます。


過ぎ去る景色を眺める余裕もありませんが、
それでも走るしか無い。。。

そんなサラリーマン人生に、ふと疑問を持って立ち止まったときに、
本書のタイトル「減速して生きる」や、

減速すれば、景色が鮮明に見える。発見もある。–--村上龍

の帯が気になります。


どんなダウンシフトだろう?
・・と、若干他人のプライバシーを除き見るような期待を込めて
本書を手に取る訳です。

悩み半分、興味半分、これが私の心の中身です。
そんな具合です。


本書を読み出すと、タイトルとは裏腹に、
あまりのレベルの高さに驚き、
やっぱりオレは、サラリーマンを走りきるしかない。
(最後はフラフラと歩きながらでも・・)
・・等と思ったりする訳です。



著書の高坂勝氏は、大手流通業を同期で一番の成績を上げながらも、
仕事を通じて知る、様々な消耗戦や矛盾に悩み、
そして30歳で会社を辞めます。
その時の年収は600万円だったと言います。

会社を辞めた後、物に溢れる生活から一変し、
日本や世界をバックパックひとつで旅行することで、物への執着は
亡くなりました。

その後、学生時代に憧れた”バー(飲み屋さん)”のマスターを
目指すべく友人の経営する飲食店でバイトをし、技術を得て、
池袋で小さな”バー”経営を始めます。

開業以来6年間黒字と言いますが、年収は350万程に減ってしまいました。

しかし、お客さんを集客しなくてもやっていける無理の無い戦略と、
十分にある余暇を利用して、お米を作ったり、様々な社会活動をして、
充実した毎日を送っています。

そして、
これからの人は、半農半○を目指すべき。

#○は例えば、画家とか、NPOとか、好きな事が入る。

と解いています。


この背景には、過剰な消費社会への反省と、来るべく金融社会不安への
したたかな備えの考え方があります。

・自分で食べるお米を、自分で作る事ができれば、怖い事が無い。
・一粒のお米から、1000粒のお米が取れる。こんな効率の良いビジネスは無い。

このように、おる意味切れ味の良い、ある意味ドライともいえる感覚を
持ち得た上で、半分は自分の好きな事をしたり、世の中の為になる
ようなことをするのです。

高坂氏を通して、現代の宮沢賢治的世界が見えた気がしました。
そして、賢治と同じ位の頭脳明晰で才能の有る方と感じました。
(私と殆ど同じ年代の方ですが、あまりのレベルの違いに恐れ入る
次第です。)

「減速して生きる」とか「ダウンシフターズ」といった単語からは
全く想像出来ない、意外で素晴らしい内容の書籍と感じました。


高坂氏の考え方がフィットするかどうかは意見のあるところだと
思いますが、自分の生き方を顧みたり、コレからの人生戦略を考える
にはとても良い本だと思いました。


多くの社会人にお勧めしたい一冊です。