「51歳の左遷からすべては始まった」はJリーグ川渕キャプテンの自伝です。

キャプテンといえば・・、
我々の世代ではキャプテン「翼」君ということになります。
この翼君を主人公にした、サッカー漫画「キャプテン翼」は、
1981から88年まで少年ジャンプに掲載されました。(Wiki参照)


その後、日韓のサッカーワールドカップが行われたりするなど
サッカー人気は日増しに大きくなり、
漫画の方も続編が次々と生まれることになりました。

それにしても、この漫画が日本のサッカーに与えて影響はとても
大きかったと思います。
きっと「キャプテン翼」がなければ、現在サッカーがここまで浸透する
ことは無かったのではないでしょうか。


そしてもうひとり、
日本のサッカーを変えたキャプテンがいます。
本日ご紹介する、「51歳の左遷からすべては始まった」の著者でもある、
Jリーグキャプテンの川渕三郎氏です。

キャプテン=(イコール)「翼君」で育った我々の世代は、
キャプテン=おじさん というのはどうも解せません。

がしかし、今時の人は、キャプテンと言えば川渕氏を思い浮かべるのでは
無いかと思うほど、Jリーグ川渕キャプテンの名前は日本に浸透している
のではないかと思います。


日本のサッカーがここまで盛り上がっている現在において、
例えば代表監督を選ぶにしても、川渕氏は重要な立場です。

もちろん、川渕氏が一人で監督や選手を選ぶわけでは有りませんが、
世間の批判を浴びるのは、ほぼ川渕氏一人のように見えます。

私はサッカーに詳しいわけでも有りませんが、
一市民からみても、川渕氏の働きとその責任は絶大に見えます。
(本文でも、キャプテンなのに実は普通の家に住んでいて、
子供に笑われたりするエピソードも本文に書かれています。
もちろんこの普通の家に、様々なマスコミが押しかけるわけで、
ご家族の精神的な負担は大きかったようです。)


川渕氏をテレビで見るたび、疑問に思うのは、
この人(川渕氏)は、どこから出てきて、どうしてJリーグ
キャプテンになったのか?ということです。

昔選手や監督として活躍していたことは知っていましたが、
他にも活躍した人は大勢いるはずです。

その理由を、一言で川渕氏に言わせたならば、

「51歳の左遷からすべては始まった」

という本書のタイトルに集約されます。

川渕氏は、元東京オリンピックのサッカー代表選手であり、
ゴールを決めるなど大活躍をしました。
選手引退後もその後も、古河電工の監督や日本代表監督を務めています。

こうして書くと、普通は一日中サッカーをやっているかのように
思えるのですが、
実際は、「なでしこジャパン」の選手達と同じように、
昼は古河電工の営業マンとして働き、
仕事が終えてからサッカーをしていたそうです。

さらに、サッカーを引退してからは本業である営業マンとして
仕事に燃え、企業戦士として全うする予定だったそうですが、
タイトルにある、51歳で取引先に出向に出されるという
サラリーマンの悲哀をうけ、人生が再度サッカーに向いていった
そうです。

しかし出向といっても、取引先の役員です。
大企業のある年代になれば、こうしたことは良くあると思うの
ですが、本人にとっては営業成績も出しており、
相当にショックだったようです。


本書では、浪人時代から、現在の「なでしこジャパン」の活躍まで
川渕氏の半生を自ら綴っています。
そして選手や監督として活躍したことよりも、
サラリーマン時代の営業のエピソードなどが沢山書かれているのです。

本書を読むと、川渕氏はどこからか出てきたスーパーマンではなく、
我々と同じような、一人のサラリーマン戦士だったことがわかります。

ただ、そこはやはり川渕氏です。
他のサラリーマンとは当時から一線を画しています。
型破りで、上司に文句を言ったりはしますが、
人の何倍も仕事する、猛烈な仕事人だったようです。

そして、プロ化を目指していた日本サッカーリーグJSL)の
総務主事を引き受けることになり、
現在の川渕キャプテンに繋がっていきます。


本書は、川渕氏というよりも、自分も将来左遷
(というか、現代は単にポジションが無くなる。)
をしたらどうして生きていけば良いかと、
ヒントを得ようと興味本位で購入しました。

しかそ実際は、
川渕氏がどうして、キャプテンになったか。
という私の大きな疑問の一つを解消するのに役立った本でした。

もともとサッカーで活躍した選手が現役引退後、
全く別の世界で実績を挙げ、あるきっかけを種にして
再びサッカー界に戻ってきます。

そして、その時は選手としてではなく、裏方を演じるのですが、
そこではじめて、サッカー選手や監督といったスキルや経験と、
ビジネスマンとしてのスキルや経験の両方を混ぜたあたらしい
キャリアが生まれたのです。

本書を読めば、
川渕氏がサッカー一筋の人間だったら、
川渕キャプテンは存在していなかったと感じます。
すなわち「キャプテン翼」君は、川渕キャプテンのようには
なれない。と本書を読んだ後に感じます。

ビジネス的に解釈するならば、
予期せぬキャリアの積み重ねが、その人の類い希無き
仕事の価値を生む。ということだと感じました。


とても解りやすい文体で、川渕氏の素晴らしい人柄も伝わって来ます。
川渕さんをより詳しく知りたい方や、素晴らしいキャリアを重ねるための
ヒントを探していらっしゃる方にお勧めします。



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