中島孝志著「大人の仕事術」を読みました。

(私事で恐縮ですが、)
気がつくと40歳をとうに超え、
”大人”と云うよりも”中年”という言葉が
ぴったりの年頃になりました。

メガネを常用するようになり、
髪が薄く、
おなかも出て参りました。

”中年”をイメージする代表的な3点セットです。

しかし、気持ちの上では、
(10代とは云いませんが、)
20代と大きく変わっていない気がします。

ただ、確実に歳を取り、
50代や60代の将来の様子が垣間見えてきました。
そのためか、どうしようもない焦りだけが募ります。

更に年上の大人の方からすれば、

 「40代は焦る年代」

という事らしく、
つまり孔子先生がいうところの、

 「四十にして惑わず」

は先生自らの不安的な気持ちを表現(反省)する
言葉とも云われます。

孔子先生の時代は、年齢は物理的には40代でも
環境的には、仕事を引退した超大人でした。
それでも、惑う気持ちだったと解釈することもできるのです。

私の場合は、
焦りや惑いがやる気の源泉となり、力に転じる。
と信じて、今日も本を読みます。


さて、本日ご紹介するのは、中島孝志さんの

「大人の仕事術」

です。

大人の仕事術といっても、
年齢のことではありません。

いい年をして何年も仕事をしているのに、
「子供の仕事術」の方も沢山いるかもしれません。

自分に照らし合わせてみると、
仕事の内容は、新人や若手時代を経て、
現在に至るまで、大きく変わってきました。

若い頃と現在とで最も大きな違いは、
20代の若い頃は、
自分一人で出来る範囲を中心に仕事をしており、
現在は、
自分を含む多くの人達の輪の中で仕事をしています。

もっと端的に表現すると、
若い頃は、自分の手作業中心だったものが、
現在は、誰かに仕事を頼んだり、仕事を組み立てたり
するのが主な仕事になりました。

しかし周りを見回してみると、
全員が全員そのように変化すると云うこともなく、
個々人の性質により、
年を重ねても、自分中心で仕事をする人が
多く存在します。
もちろん、どんどん仕事のレベルは上がって、
最後には職人の領域に達する人も多い筈です。

その様子は、極めて日本的で、
日本人に合った仕事のやり方かも知れません。

しかし、その方法は年功序列の制度には合わず、
つまり、若年層では仕事の割に給料が安く、
中年以降では、仕事の割に給料が高くなる。
という事態を招いたり、
諸外国に比べ日本のホワイトカラーの生産性が
今ひとつ低いと云われる原因になっているのかも
しれません。

本日ご紹介する「大人の仕事術」では、
仕事はいつもこの三種類しかない。ということで、

 1,こなす仕事
 2,さばく仕事
 3,つくる仕事

が挙げられています。

こなす仕事は、私が先に書いた、
自分中心の手作業であります。

本書では、1が子供の仕事で、3が大人仕事など
とは書かれてみません。
1の仕事でも、子供のやり方、大人のやり方の2つがあります。

簡単な事例として、
トヨタ流「カンバン方式」の親と云われる、
大野耐一氏と部下の会話が紹介されています。

大野氏「今の生産台数は何台」
部下 「80人で5千台です」
大野氏「それでは、1万台生産するには、どれ具合の人数が必要?」
部下 「160人です」
大野氏「馬鹿者、そんなことは子供でも分かる」
・・・

どこでも有りそうな会話ですが、
ポイントは、ご存じのとおり、
生産量に応じて生産性(要員)は変わってくると云うことです。
つまり80人+80人=160人ではなく、
130人かもしれないし100人かもしれません。

そんなの当たり前という人が殆どかも知れませんが、
笑えない人もいるという話です。

それは、日々問題意識やカイゼンを描き、一つ上の目線で
仕事をしているか。と云った点にあります。
このような感度を常に持ち続けることが、「大人の仕事」
と中嶋氏は述べています。


本書は、「大人の仕事」という観点で、
自らの経験を交えながら、
様々なテーマを論じている内容となっています。

項目や話の繋がりは、本を読むという観点からすると
読み易くスムースですが、
一方、日々ロジカルツリー的な流れを意識しながら
仕事をしている方々にとっては、
オヤジの説教的な読み物と感じられるかもしれません。

本書は、エッセー的な内容となっており、話題も多岐に及びます。
ヒントになる箇所、自己点検したい箇所などは多く点在します。

そういった観点で、中年サラリーマン諸氏に読んでみたい内容です。



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