松島憲昭著「桶狭間は晴れ、のち豪雨でしょう」を読み、歴史解釈は常に動いていることを感じました。

以前に、江川達也さん著
桶狭間合戦の真実」をご紹介しました。
↓こちらです。
江川達也著「桶狭間合戦の真実」を読みました。 - つれづれなるまゝに、日ぐらしMacに向かいて・・・

この本を読んで知ったことは、
桶狭間の戦いは、
少数の織田信長勢が今川義元勢を奇襲したという説は、
明治以降に作られたものであり、

実際は、織田勢が地元の利を生かし、
田んぼの中の一本道にさしかかった今川勢を、
正面から突き崩した説が有力である。

ということです。


さて、
本日ご紹介する松島憲昭さん著の

桶狭間は晴れ、のち豪雨でしょう」

は、タイトルからわかるように、
桶狭間の戦い」のような、歴史上有名な合戦に
天候(気象学)の点から考察を加えた内容です。

もちろん、天候が戦に与えた影響が
大きかった事件をテーマに選んでおり、

元寇
桶狭間の戦い
壇ノ浦の戦い
 ・・etc.

などが選ばれています。


例えば、
鎌倉時代に、元の国(中国)が
北九州〜博多周辺を攻めてきた、
元寇文永の役弘安の役の2回)は、

どちらも神風(台風)が吹いて元の軍艦が
敗れ去ったということになっています。

しかし、特に文永の役が起きた、
現在の暦の11月の下旬には、
過去に博多付近に台風来たことは無く、
この説は間違いであることを指摘しています。

よくよく調べていくと、敗戦の色が濃くなった
昭和18年の教科書から採用されており、
神様が国を守る「神国日本」を表す
政治色が強い物ではないかと考察しています。

※もちろん、当時も著名な歴史学者が検証を行い、
 敗戦後も長い間、教科書に記されています。


また、
最初に紹介した「桶狭間の戦い」は、
現在の暦で言う、6月22日であり、
梅雨の晴れ間の戦でした。

午前中は快晴だったものの、
突然、天気が急変し暴風雨となります。

この様子は、積乱雲が出来るときに
発生する強風であり、
桶狭間の戦いが起きた、名古屋市周辺では
よく起きる現象と解説しています。

豪雨は、織田の陣地側(西)から徐々に
回復していくのですが、
軍が周りの状況を見極め、
戦の体制を整える、
その差わずか10分程度の違いで、
織田勢が有利と成ったのではないかと
解説しています。


何百年も前の、その場所の天気を推測する
ことは極めて困難です。

史書も多くの場合、合戦が終わった
数年後に書かれています。

そういった状況のなか、
過去の天気の統計情報や、
京都の公家が毎日付けていた日記など、
様々な資料から、
合戦や事件のおきた日の天候をきめ細かに
推測しています。


本書を読むと、

科学がどんどん進むと、
過去に対して、どんどん新しい解釈や、
説が出てくることが実感として感じられます。

これまで読んだ歴史の本や時代劇では、
演出として、
ホントか嘘かわからない雨が降っていたり、
豪雨や雷がなっていたりします。

このように新しく歴史が塗り替えられていくと、
歴史の本や、時代劇の表現も
どんどん変わってくるのだと思います。


若干、学問的な難しい話もありますが、
学問は動いていることを感じられます。

特に歴史好きの方にお勧めの、今日の一冊でした。




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