勝間勝代著「まじめの罠」は、勝間さんが好きか嫌いかによらず、押さたい内容と思います。

本日は勝間勝代さん著

「まじめの罠」

をご紹介します。

これまでも勝間さんの本を何冊かご紹介しており、
その都度書いていますが、

私はどちらかといえば、「カツマー」です。

頑張って働いて、少しでも上にのし上がろう。
・・的な考え方は信奉しています。

その勝間さんが、
感張るのは宜しくない。

・・と言い出したので、どんな本かと思って
購入したのが半年ぐらい前のことです。

半年前にしっかり読み終えて、
すぐに書評を書こうと思ったのですが、
・・・半年経ちました。汗)

読んだ記憶が怪しくなっていたので、
今回ご紹介するにあたり、改めて読み直しました。
もしかしたら、これも「まじめの罠」か?

2回目を読んで見ると、
すぐに、最初に読んだときに感じた、
インパクトが蘇ってきます。

今読んでも、
この本は、読む価値があると感じます。


本書は、比較的最近※起きた事件に絡め、
真面目な人の罪の深さを紹介する内容です。

※最近とはいっても、
あとがきに書かれている日付は、
2011年9月ということですから、
執筆時から1年ほどたっています。


冒頭に紹介される話は、
昨年の震災で、多くのの生徒が亡くなった、
ある小学校の事例です。

地震発生後、避難のため先生が校庭に生徒を、
並ばせようとしているなか、
先生の制止を振り切って、
親が半ば無理矢理、自主避難させた子供が生き残りました。

欧米では、正しい結論を導き出すための方法である、
クリティカルシンキング」を家庭や学校で
レーニングすると云いますが、
日本では、

「人を疑ってはいけません」
「先生のいうことは素直に聞きましょう」

といったように、
順応であることが美徳という考え方を植え付け、
目上の人を疑うことを知りません。


果たして、大震災が起きたときに、
自分の頭で考え、
先生の制止を振り切り子供を避難させることが
できるのか?
私には自信がありません。

ひとつは、
私(達)が上記の教育方針に乗っ取り、
先生の云うことに従うのが正しく、
逆らうと叱られる。
といった経験をしながら大人になっている
からだと思います。

多くの場合、先生の云うことは正しく、
また、先生のいうことは、
(多少間違っていても)聞きましょう。

の考え方は、モンスターペアレントや、
学級崩壊に繋がるよりは良いのではないかと
感じます。

しかし、先生(やマニュアル)といえど、
常識を越えたところで正しい判断ができるか
どうか解りません。

この震災の事例は、
単なる悲劇と云うより、

先生の云うことを「正」とした、
これまでの常識に反する出来事として、
日本中に深い疑問を呈してしまったに違いありません。


本書は、「まじめの罠」というタイトルですが、
「まじめ」そのものを否定しているわけではありません。

本書に書かれてる真意は、
例えば次のような事例と考えられます。

ある組織が大きくなり、
多種多様な人が増えるにつれ、
円滑な組織運営のために、
どんどんルールやマニュアルが増えていきます。

しかし、
いつしかルールやマニュアルは本来の意味を離れ、
それを厳密に守り運用する「真面目」な人が、
組織の中心に蔓延ってきます。

その暁には、
新しいことだけなく、時代に合わせた回収や修正すら
できなくなって行きます。

勝間さんは、
上記の様子が日本全体に蔓延っていると、
問題提起しているのだと思います。


本書の帯には、

3ヶ月で100点取る人、2日で80点取る人、
どちらを評価しますか?

と書かれております。

厳しいビジネスの現場では、後者となる筈ですが、
多くの日本人の美意識では、満点が好かれます。

本書では、
アマゾンにおける、日米の梱包の違いの例を挙げ、
「日本のアマゾンの箱って、なんて綺麗なんだろう」
日本の梱包が、アメリカの段ボールのようだったら、
梱包が汚いとクレームが沢山来るに違いない。

と紹介されます。

段ボールに限らず、
必要以上に品質を求めるのが日本の特徴ですが、
高品質で技術立国となっている反面、

半導体などは、高品質過ぎてコスト競争に負けた
などとも云われています。

また多くの職場では、
とにかく長時間労働すること評価に繋がります。

欧米では終業時刻を越えて仕事をするひとは、
仕事の出来ない人と評価されるらしいですが、

勝間さんがコンサルタントとして仕事をしていた頃は、
いかに残業時間を減らすかを商売としていたそうです。


他にも、
本書で興味深かった点をいくつか上げると、

・TKK問題
 →東大、京大、慶応の頭文字。
  これらの大学を出た医者には気をつけろ。
  とある総合病院ではいわれているそうです。

・就職人気ランキングにつられるな
 →勝間さんが学生の頃は、会計士のなり手は少なかったが、
  現在はリストラするぐらい余っている。

・住宅ローンはリスク
 →ローンを組んで住宅を買わせようとしているのは政府。
  不動産価格や売り手と買い手の情報格差が大きく、
  不良品が出やすい(いわゆるレモン市場)。

・手袋の買い方を間違え骨折
・名詞で割り箸を折る

・・etc.
沢山のネタが紹介されています。


本書の最後に、

大阪地検でえん罪をつくってしまった
検事の話が紹介されます。

その人は「割り屋」と呼ばれ、
シナリオ通り自白を取る名人だったそうです。

そんな人がいること自体驚きですが、
次の検察を担うサラブレットといわれていたそうです。

一方では検察をやめ、
現在はコンプライアンスの専門家として活躍している
人も居るとし、
「まじめの罠」にかかってしまった例としています。

残念ながら、
同じ組織に長くいると、多かれ少なかれ、
どうしてもそのような傾向になってしまうように思います。

勝間さんも書かれていますが、
勝間さん自身がこの「まじめの罠」にかからなかったのは、
外資系企業で働くことにより、外から日本を見る経験を
したからではないか。と分析しています。

そういった意味では、若者の国内思考が強まる現状では、
この国は、ますます「まじめの罠」が蔓延っていくことに
なるのかもしれません。

「まじめ」
という単語の本来の使い方と、
少し違う用法かもしれませんが、

実に、考えさせられる内容が多かったと感じます。

また本書に限って云えば、カツマー流の、
上昇志向をあおる内容ではありません。

読んでいない方は、ご一読をお勧めします。




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