島田裕巳著「10の悩みと向き合う 無宗教は人生に答えを出せるのか」この本はお薦め本です。

ベートーベンらの名前を出すまでもなく、

芸術家の多くは、
自らの深い悩みから、
数々の名作を生み出してきました。

また、
聖人や哲学者は悩みから生まれる。
などと云われます。

しかしそのような立派な人と比べるまでもなく、
私たちにも数多くの悩みがあります。

そして女性よりも、
我々男性の方が悩みは深い気がします。

※ご参考URLは男女の自殺率についての考察です。
 2010-06-16

・・などと書きますと、
女性の人に叱らそうな気もしますが、

男女や年代に関わらず、
人生は沢山の悩みと共に生きています。



本日ご紹介する、島田裕巳さん著

「10の悩みと向き合う
 無宗教は人生に答えを出せるのか」

は、人生を代表とする10の悩みに対して、

著者の職業である宗教学者としての知見や、
自らの経験を踏まえながら、
解決のヒントとなる、考えを示したものです。

副題の、「無宗教は人生に答えを出せるのか」
からは、
「出せるのか? 否出せないに違いない。」

といった宗教を肯定する印象も持ちますが、
タイトルほど内容は、宗教色の強いものでは
ありません。


我々日本人の多くは、
江戸時代のキリシタン撲滅のための
檀家政策のため、仏教がもっとも身近な宗教です。

しかし現代の日本人は、
クリスマスを祝い結婚式はお寺ではなく、
教会であげます。
※もちろん、仏前式というお寺で結婚式があります。

更に、年に一回ぐらいは、神社に参拝をして、
おみくじを買ったり、受験前には絵馬に合格祈願を
書き残します。

このような行動から、宗教に対して無節操なため、
日本人が信教熱心と考えている人は少ないと
考えられています。

本書によると、
キリスト教のローマや、イスラム教のメッカなどの
いわゆる聖地には、年間500万人が集まるそうですが、

日本の場合、初詣だけで、
明治神宮成田山、川崎大師などでも、300万人規模の
人が集まり、成田山の参拝客は、年間1,000万を越えます。

海外の人から見たら日本は、至る処に聖地があり、
宗教熱心な国民のように見えると、
と指摘しています。

そのため、日本人は無宗教という考えは、
日本人の間違った認識ではないかと、
著者の島田さんは述べています。

私個人としては、この部分を読むだけでも、
この本を買う意味があると感じました。


ちなみに私の悩みを、
本書の悩みの番号と共に示すとこんな具合です。

 2の悩み お金が無い
 4の悩み やりたいことが見つからない
 7の悩み モテない愛されない
 10の悩み 生きる意味がわからない


ご覧のように、本書に書かれたテーマは、
かなり一般的な内容ではないかと思います。
もちろん、人により深刻度合いは違って来るわけですが。


本書の内容を少しご紹介すると、

例えば、お金が無いというテーマでは、
年収が少ない男性が、
結婚を考えている女性の親に挨拶にいったところ、
数字を聞いて、笑われて帰ってきた。

といったエピソードが紹介されています。

しかし、現代は年収が少なくても
どうにか生きていける社会背景があり、

むしろ、生活に必要な物は殆ど持っており、
物が溢れ欲しい物が無いという、
何を買って良いのか分からない
時代にあることを指摘しながら、

お金という数字に踊らされているだけで、
本当の幸せや解決すべき課題はもっと別の
ところにあるのではないか?

と説きます。


以下のように宗教学者としての話もありますが、

・「働くことは罰である」という聖書の教え
・「宗教には夢がある※」
 ※お経を唱えるだけで、極楽にいける。
・血液型占いも、宗教のような物だ。
・・・etc.

全体を通して感じるのは、

 "生きるとは自分の物語をつくること"

という島田さんの根本的な考え方が伝わって来ます。

物語という観点で考えれば、
大きな波風(つまり悩み)が立ったほうが
面白いわけです。

そして、悩みの原因となる、
荒波を乗り越えることを、
もっと楽しんだらよいのでは?
と我々読者に提案しています。


ポジティブ思考とは少し違いますが、
人生を鳥の目のように俯瞰してみると、
悩みというのは、
生きるための、スパイス位のものかも知れません。


個人的に心に残ったのは、

中村紘子さん(ピアニスト)のようなステキな
 先生について・・・」
(「赤頭巾ちゃんに気をつけて」より)

と小説に書いた5年後に、実際に中村紘子さんと
結婚してしまった庄司薫さんの話です。

夢は言葉に出して言ってみるもんだ。

・・という、夢の大切さを説明する逸話です。

夢を語ることについては、
数々の自己啓発本/成功本に書かれている内容ですが、
まったく畑違いの本に書かれているとすれば、
よりいっそう心に響き、読んだ印象が違ってきます。

しかし普段とちょっと違う本を読むだけでも、
こんなに沢山の気づきがあるのかと感じます。


宗教というと、敬遠しがちな領域ですが、
特定の宗教に偏っているわけでもなく、

文体も読みやすく、
あまり気負いせずに読めます。
かなりお勧めの一冊です。

追伸)
 アマゾンをみると、廃盤になっているようで
 少し残念ですね。



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