相田みつを(解説/立原えりか)「いのちのバトン 初めて出会う相田みつをのことば」を読みました。

たまに日帰り温泉に行くのですが、

そこの廊下に、

観光ポスターと並び、

相田みつをさんの言葉を書いた
額が飾っています。

誰もが知っているであろう、
上手いのかヘタなのか分からない、
独特の個性的な文字で、

にんげんだもの

に代表される言葉が綴られています。


どうすればこんな素晴らしい言葉が
出る人になれるのか。

相田みつをさんについて、
色々調べてみると、

とにかく、苦労を重ねた人のようです。


必ずしも書道に限った話ではありませんが、
およそ芸事というのは、

上手い人は、世の中に腐るほど居る。
という世界です。

特に書道は、
踊りやピアノのような敷居の高さはなく
比較的手軽ですし、
小学校の義務教育でも習うほどです。

加えて圧倒的な歴史の長さがありますので、
日本中に達人級の人がゴロゴロ居るわけです。

そういった中で、
超一流のプロとして認められるに至るには、
書の道に人生を賭けることが必要でした。

それはつまり、書のために、
極限までの貧乏をしたわけです。

その時の様子を、

 途方に暮れた。

とご本人が別の本の中に書いています。

この話は、
「いちずに一本道 いちづに一ッ事 」書評
[hatena.gwbg.ws/dzah]

にも簡単に書いています。
宜しければ是非ご一読ください。


・・という訳で、本日は相田みつをさんの書に、
立原えりかさんが解説した

「いのちのバトン 初めて出会う相田みつをのことば」

をご紹介します。

著者の立原えりかさんに関して、
詳しくは存じないのですが、
沢山の著作がある、著名な童話作家さんです。

本書の構成は、
相田みつをさんの書や文章の後に、
Erika's Story と称した立原えりかさんの
エッセイが続く形と成っています。

本書は相田みつをさん初心者に向けて、
書かれたそうです。

そのためか、
文章自体は、割とたわいのない物が多く、
大変心に残ったとか参考になった
というものでは無いのですが、

相田みつをさんの書の重さと比較して、
本全体が重くならない程度の文章に
押さえているのだと感じました。

立原えりかさんは、
本書の解説を書くに当たり、
初めて本格的に相田みつをさんを
学んだと云います。

偉大なる書家の解説を書くという気持ちは
どれぐらいの重圧だったかを考え、
Erika's Storyを読むと、

特別な重さが感じられない文章は、
良くあっていると思います。

本書の企画時に期待したであろう、
相田みつをさんが身近に感じる効果が
出ていると感じました。


私が立原えりかさんの文章を読んで感じたのは
内容や言葉がとてもお若い事です。

失礼ながら、
プロフィールを見てみると、
私の母親よりも2つほど年上です。

私の母同様、
戦前生まれのおばあちゃんなのですが、

まるで20〜30代の女性が書いたかのような
みずみずしさがあり、私の母と比較してしまうと、
ちょっと別の若い人が書いたのではないか。
という位です。

間違い無く立原えりかさんご本人が
書かれたのだと思いますが、
どうしたらこのような感性が保てるのか。

童話作家という職業がそうさせるのか、
本書とは別の観点で印象深く感じました。


本書のタイトル「いのちのバトン」は、

 父と母で二人
 父と母の両親で四人
 そのまた両親で八人
 ・・・

で有名な相田みつをさんの
「自分の番 いのちのバトン」
から取っています。


本書は文庫本サイズと、
相田さんの文字も小さいのですが、

相田みつをさんの書は、
この小さな印刷物で見ても、

感心・感動を呼び寄せます。
そして一番重要なことは、

なんでこの字が、この形なんだろう。
なんでこの字が、この大きさなんだろう。
・・・
と沢山の想像力が働くことです。


たまに美術館で開かれる書の展示会に行くと、
上手さや賞の優劣をどうやってつけるのか
まったく想像つきません。

そうした書の世界において、

相田みつをさんは、
頭を一つも二つも飛び出したわけです。

そのように考えると、

本当に相田みつをさんは、
本当に凄いと思います。


立原えりかさんの解説を得て、
相田みつをさんが、近くに感じられる、
そんな、今日の一冊でした。



 
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