猪瀬直樹著「二宮金次郎はなせ薪を背負っているのか?」は、最近読んだ本の中でかなりインパクト大です。

本日(11/9)のニュースで、

日本の借金が過去最高の973兆円に達した

ことが報道されています。

国民一人当たりに直すと771万円ですが、

4人家族と仮定すると、
一家で3000万以上の借金を抱える事となります。

国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(平成24年9月末現在) : 財務省

住宅ローンと比較すれば、
そんなものか。と思わせる数字ですが、
しかし大概の家庭の貯金よりも
多い金額では無いでしょうか?

それでも、
この借金が将来の投資にならば許せますが、
公務員の給与などの消えて無くなる物にも、
多くが使用されます。

国債を除いた国の収支の割合を
プライマリーバランスなどと言いますが、

いったい何時・どうすれば、
プライマリーバランスは元に戻るのでしょう?


という訳で、本日は猪瀬直樹さん著の

 人口減少社会の成長戦略
 二宮金次郎はなせ薪を背負っているのか?

をご紹介します。

猪瀬直樹さんのことは、よくご存知と思います。

小泉内閣の行革断行評議会の委員として、
高速道路改革に努力し、
その後東京都副知事を勤め現在は、
石原都知事辞任により知事代行も勤めています。

最近の活躍をみると、
本職がわかりにくいのですが、
もとは作家として名を上げた方です。


昔からスゴい人だなぁ〜。
と感じていたのですが、
その著者を読むのは今回が初めてでした。
(これから沢山の著書を読んで、ご紹介
したいと思います。)

さて、最初に選んだ一冊は、
二宮尊徳こと、二宮金次郎の本です。

二宮金次郎(尊徳は諱)といえば、

薪を背負って本を読む子供として
あちらこちらの学校で銅像となっています。

私の通っていた学校にも、
銅像があったように思いますが、

実際にどんな人かを知ったのは、
大人も大人、割と最近の出来事です。


それまでは、薪を背負って、
働きながら(お手伝いしながら?)
勉強をする勤勉な人位にしか
認識が有りませんでした。

実際、二宮尊徳に関して親や先生に
質問をしたことも有りますが、

お手伝いをしながらも勉強をするえらい人
以上の答えが返ってこないので、

勉強が嫌いな私にとっては、
むしろ敵対すべき人物像でした。


そして高校生になると、
ようやく日本史の教科書に名前が登場します。

しかし、村の財政を救った人程度の記述で、
やはり日本中に銅像が建っている人のイメージは
沸いてきませんでした。


・・・それから何十年もたち、
ネットで二宮金次郎が紹介されている
記事を読みました。
そのなかで参考文献として上げられていたのが本書です。

大人になって初めて知った二宮金次郎は、
私の想像を超えてスゴい人でした。


二宮金次郎は、13歳で父親を失うと、
一家の大黒柱として、母と弟の暮らしを支えなくて
はなりませんでした。

そこで入会地(住民の共同管理地)から
薪(たきぎ)を拾い、街まで歩いて売りに
出かけ家計を助けました。

その頃の様子が銅像となっている訳ですが、

猪瀬直樹さんによれば、
二宮金次郎が背負っている薪や薪(まき)を、
換金可能な商品としてみれば、
江戸時代が違って見えるというのです。

その後、実際に江戸時代の家計の様子が
紹介されるのですが、
薪や薪は料理を作る為の燃料代として、
現代のガスや電気代以上にお金がかかって
います。

(いわれてみれば、そのとおりなのですが、)

昔は薪や薪は、
そこら中に落ちていたように思いがちですが、
市街地ではそんな訳にもいかず、
今と同じように、お金を出して買う
生活必需品の一つだったのです。


本書では、このように江戸時代に
貨幣経済がどんどんと進んだことを示し、
次に地方財源が借金のためどうにもならなく
なってくる様子が示されます。

猪瀬直樹さんの
考えを端的に要約するならば、

 江戸時代の後半は、
 現在の日本と良く似ている。

 人口減少社会であり、労働人口が減り、
 地方から江戸に人口が流出し、
 地方は荒廃している。

 それに伴い年貢米がへるも、
 行政規模や武士の生活レベルは
 変わらず借金がどんどん増えている。

 加えて、富士山や浅間山の噴火、
 冷害による飢饉がおき、
 復興費用はどんどん出て行くばかり。
 ・・・

まさに現代の日本のようです。

そんな江戸時代の日本において、
地方の活性化に成功したのが
二宮金次郎という人なのです。


二宮金次郎は、
若い頃から収入の一部を次の投資に回し、
農作地を得ても人に貸し、
都会で奉公人をして現金収入を得ながら
どんどん蓄財していきます。

その原点は、

巻きを背負って勉強する時間の活用方や、
川の土手に菜種を植え、油とすることで、
自らの収入とする様子です。

特に菜種は、公共の土地である
土手に植えるだけで、
後は何もしなくても収穫出来るわけですから、
たいへんなレバレッジです。

二宮金次郎は、そのようにして得た収入を
自分のために使う事はなく、
身近な人を初を手始めに、お金を低金利
貸して行きました。

この頃の二宮金次郎について、
誤解を恐れずに云えば、苦労してたたき上げた
サラ金や町金融の社長といった感じです。

さらには、
そのように蓄財をなした知恵※を、
荒れ果てた寒村の再生に生かしました。

※「分度」と呼ばれる考え方で、
 過去10年の税金(当時は年貢)の平均から
 支出上限を求め、一定の金額をプールする方法。
 この方法で、天保時代の飢饉を2度乗り越えた。


本書では冒頭に、
日本は既に人口減少社会に入っているとして、
私鉄の乗客率が、1991年の100億人超をピークに、
2003年では1割が減少していることを示しています。

さらに出生率の低下は、1925年から、
「生めよ増やせよ」の戦前戦中を通じても
増えることは無く、

戦後のベビーブームの時代に少し増えた物の、
あとは、一定して現象し続けていることを
指摘します。


著者が本書を通じて伝えたいメッセージのひとつは、
人口減少型社会に日本のシステムを切り替えて行く
必要があるとという事です。

そして、2005年の本書の指摘から8年も経つのに、
未だその切り替えが上手くいってない結果が、
先に紹介した、現在の国の借金の伸び具合です。

同じ資料がやはり、財務省が発表しています。

http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/003.htm

このグラフの様子を、ワニの口と云うそうです。

財務省のグラフは横長なので、
あまりきつい印象を持たないのですが、
本書のグラフをみると、本当に危機感を感じます。
(お互い、見栄えも工夫しているのでしょう。)


私が本書を読んで最も重要と感じた点は、

二宮金次郎は社会情勢の変化の波にのり、
 蓄財(ビジネス)に成功した。
 いつの時代でも、世の中の流れに乗れば、
 ビジネスを成功させ蓄財することができる。

・この国はいつか破綻する。

の2つです。

特に後者は、日本の国際は殆ど日本人が買っているから
大丈夫。といった通説に加え、
最近では外国人の買い増しが増加している。
彼らは逃げ足が速く、一気に売りに出たらまずい。

といった話もあります。

いずれにせよ、
二宮金次郎の時代にも、彼の有益性を知られながらも
お上の役人は、彼と彼の施策を有効に用いることが
できませんでした。

理由の多くは二宮金次郎に、
役人の権限が牛耳られることを恐れたからです。

様々なニュースからも分かるとおり、
その体質は200年立った現在も変わりません。

二宮金次郎が生きた時代と
現代とのあまりの類似性に、
私は、将来この国の破綻を確信しました。


猪瀬直樹さんは、そこらのビジネス本作家とは
全く違うプロの作家であり、
その文章力は鬼気迫る物を感じます。

原文は2005年1月(文藝春秋の「禁欲の国富論」を編集)
とのことですが、
内容は全く色あせずしかも495円で買える文庫本です。

国民全員に読んで頂きたいと感じた今日の一冊でした。




★★★ ツィッターやってます! ★★★

   https://twitter.com/h6takahashi


今日のアクセス:103,151