三輪康子著「日本一のクレーマー地帯で働く日本一の支配人」は、「事実は小説よりも奇なり」そのものです。

本日は三輪康子さん著

 「日本一のクレーマー地帯で働く日本一の支配人」
 ―怒鳴られたら、やさしさを一つでも多く返すんです!

をご紹介します。

著者の三輪康子さんは、
大学卒業後、銀座の画廊やアパレルの店長から、
テルチェーンの支店長に応募し、
新宿歌舞伎町店の店長となりました。

通常ホテルに入社すると、
ベルボーイやフロントから徐々に昇格するのですが、
そのホテルチェーンは、支配人を別枠採用するという
独特の方法を取っていました。

テルマンとなるためには、
専門の学校や大学もあるぐらい専門知識が必要ですが、
三輪康子さんはたった一ヶ月の研修で現場に送り込まれます。

そして、そこで見た物は、、、

ヤクザ(チンピラ?)を泊めろという、
必要以上の脅しをはじめとする、
様々な事件・事故にホテルが巻き込まれる現場でした。

ヤクザがフロントに怒鳴り込み、
社員が震えているのは当たり前、

ホテルのロビーでは恐喝がおき、
駐車場ではヤクザが自分の駐車場のように、
当たり前のように車を止めています。

警察からは犯人が泊まっているホテルと卑下され、
実際に、日本刀を振り回されたり、
血まみれの犯人がホテルに逃げ込んだり、
刑事ドラマのような警察と捕り物が込んだり、、、

そんな具合です。

子供をホテルにおいて、
歌舞伎町のホスト店に遊びに行くお母さんの話達の話や、
女性に誘われホテルに連れ込み、財布だけ抜かれた話など、
まだまだ、序の口といった感じです。


そのむかし、伊丹十三監督、宮本信子主演作品で
ミンボーの女」という、やはりホテルチェーンが
ヤクザに立ち向かう映画がありました。

映画では、宮本信子さんは民事事件専門の弁護士
として雇われ、法律を武器にヤクザと戦う訳ですが、

本書の著者である三輪康子さんは、法律どころか、
ホテル経験すら満足にない、いわばド素人です。

ヤクザが怒鳴り込んでくる都度、
身体を震わせ、
殺されるのでは。と

いう殺気を何度も感じ、

それでもヤクザに宿泊を断り続けます。

その姿には、
逆にヤクザがバックには相当な大物が付いている。
と勘違いもされるほどです。


そして、
クレームを云うのはヤクザだけではありません。
普通のお客さんも、

掃除係が外国人だと、
何かが無くなったとか文句を言い、
片付けのあと、テレビのリモコンの置き方が
少し曲がってたと文句を言い、
(ホテルで亡くなった人は居ないのに)幽霊が出ると
文句を言い、
・・・

とにかくクレームの嵐に遭遇する毎日です。

また、クレームだけではありません。

ホテルにはお金が無いお客様もおり、
出て行ってもらうことも、
必要な仕事の一つです。


そんなクレーム一つ一つに対して

 クレーム対応とは、
 クレームに対応することではありません。
 まず、全力で人の気持ちを理解すること。
 つまり、人への対応なのです。<p95>

とあるように、
あくまでも誠意、やさしさ、
そして徹底的に相手の話を聞き、
納得いくまで話し合う姿勢を貫きます。

映画「ミンボーの女」でも、
ヤクザにはお金を渡して問題解決する話がありますが、
著差の三輪康子さんは、お金で解決することは
一切ありません。

どんなに怖い相手でも、
「相手を信じる」という考え方が、
全ての根底にあります。


そして大切な心がけは、

 感情なんて「雨がふった」とか「波が立った」
 くらいの自然現象にすぎない。<P144>

これぐらいの割り切りというか、
楽観的というか、
達観する気持ちが、クレーム対応には
必要なのではないかと感じます。


そんな事を積み重ね、
現在ホテルからヤクザは居なくなるどころか、
ヤクザが三輪康子さんに敬礼するような、
そんな関係になっていきます。

それが彼らの世界の仁義なのでしょうか?

と本書にはありますが、
とにかく、ま、凄い世界だとしか言いようがありません。


新宿歌舞伎町は、
石原前都知事が就任した2004年から
「歌舞伎町浄化作戦」として、風俗やヤクザの
一掃キャンペーンをしており、
ちょうどその時期と、本書の内容の時期は重なって
いるのではないかと思います。

当時協力してくれた警察官は三輪康子さんを
「同志」と呼び、
所属が変わってくれた現在も、
時折お菓子を持って現れるそうです。

現在の歌舞伎町は当時の歌舞伎町とは
全くかわり、
ホテルも安全で安心できるものに生まれ変わりました。

著者の三輪康子さんは
「新宿のジャンヌダルク」と呼ばれ、
表彰状をもらうに至ります。


本書に紹介されるエピソードは、
そのひとつひとつが衝撃的で映画や小説以上の
ものを感じます。

「事実は小説よりも奇なり」

などと良く云われますが、
本書の事だと感じました。


ホテルを含むサービス業の多くは、
日々クレーム対応との戦いと思います。

私も業務としてクレーム対応を行うことが
多いのですが、本書に比べれば、
まだまだ、序の口以下。

本書を読み込んで、
さらに日々精進しなければと感じた今日の一冊です。

日本のサービス業の方、これは必見の書です。!!



 
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