渡邉 正裕 (著)「10年後に食える仕事、食えない仕事」は雇用とグローバル化の影響が示されています。

会社の寿命は30年しかない。

・・この話は少し衝撃的でして、
私が高校生のときには
既に知っていた記憶があります。

ネットで見る限り、
日経ビジネスの1983年9月19日号の
記事↓がベースとなっているようでした。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090203/184816/

※企業寿命の研究は実際は
 もっと古かったように記憶していますが、
 深掘りして調べることができませんでした。

私はこの記事が出た少後の
80年代後半に高校生活を送りました。

地方の高校性が知っているぐらいですので、
世の中でよく知られた情報だったと思います。

ただ、80年代後半と言えば、
時はバブル絶世記です。

そんな華やかな時代に、
企業の寿命が30年しかないということは
ピンと来ませんでしたが、

後に大学を卒業して就職を探すときも、
この話しは常に気になっていました。


ただ、
幸か不幸か、

私が大学を卒業した年は、
バブル崩壊のあおりを受け、

就職先を探そうにも、
有名企業が採用中止をするような時代でした。

志望はソニーパナソニックをはじめとする
家電メーカでしたが、合格できず、

唯一、多少採用があった業種である、
コンピュータ関連の会社に潜り込み今に至ります。


「会社の寿命は30年」については、
本当の寿命と言うよりも、

上昇から安定期が30年程度ではないか?
など様々な議論はあるとは思います。

しかし、現在の企業状況をみるにつけ、
会社にも寿命があるんだな。
と痛切に感じる今日この頃です。


・・という訳で本日は、渡邉 正裕さん著

「10年後に食える仕事、食えない仕事」

をご紹介します。


最近企業の採用年齢が65歳まで
延長されようとしています。

父の時代は、定年年齢が55歳でしたので、
その頃から比べると10年の延長です。

そしてこれからは、
年金の受給年齢も70歳を越えるでしょう。

・・とすると、
40代の私でもまだ30年もあります。

企業寿命を30年と考えると、
これはちょと怖い時間です。

1960年代に比べると平均年齢は15歳ほど上昇しており、
実際70歳を越える私も父も未だ働いていますが、
しかし、
その働き方は、若い頃とは全く違います。


本書のタイトルが興味を引くのは、
そんな30年後の話題ではなく、

たかだか10年という、
近未来を話題にしていることです。

産業の米とまで言われた半導体DRAM
太陽電池だけでなく、

ついこの間まで「世界の亀山モデル」とTVCMを
流していたシャープの液晶テレビも、
今は見る影がありません。

ウォークマンの市場だけでなく、
携帯電話もAppleやサムソンに取れられて、

あんなに絶好調だったNECも携帯電話生産
から止めるというニュースを見たばかりです。

思えば、現在厳しい企業・業種は、
かつて日本の絶好調を牽引した企業であり、
花形の就職先でした。


本書で示される最も大切なメッセージであり、
キーワードは「グローバル化」です。

なかでも海外(おもに安い賃金)で
出来ることはどんどん海外に流れていく。

ということです。

これは今に始まった事ではなく、
戦後の一時期日本は生地や洋服の生産が
主力産業だったことでもわかります。

工業製品は製造技術が確立されるに付け、
どんどん賃金や土地の安いところで
生産を始める訳です。

こうした流れが花形産業だった、
半導体や家電製品になりました現状です。

さらに、
日産マーチ輸入車となってしまったように、
日本に残っている唯一の工業製品と呼ばれる、
自動車まで飛び火しようとしています。

このような状況を、グローバルという観点から
分析するために、
本書では様々な職業を以下の2軸から、

 日本人のメリット(日本の参入障壁)
 スキルタイプ(専門性、技術力)

次の4タイプに分類します。
※以下の名前は本書で固有に使われるものと思います。

 1.重力の世界
   →人件費が安い中国やインドへ置き換わる職業。
    工業製品の組み立てや、コンピュータ関連など
 
 2.無国籍ジャングル
   →国に関係なくスキルや技術で勝負する職業。
    芸術家やディーラー、国際弁護士など

 3.ジャパンプレミアム
   →日本人であることのメリットが活かせる職業。
    国内営業職やサービス業(飲食店・旅館など)
    熟練職人、しょうゆ製造など

 4.グローカル
   →日本市場で高いスキルや技術が求められる職業。
    役人政治家、医師、人事職、マスコミなど
 

つまり本書のタイトルにある、

10年後に食える仕事とは、
ジャパンプレミアム」や「グローカル」の領域であり、

食えない仕事とは、

「重力の世界」や「無国籍ジャングル(の一部)」の仕事です。


本書のメインメッセージの一つは、

10年後に食えない領域に居る人は、
食える領域に移動すべきである。

ということです。

そのときに若干気になるのは、

日本の参入障壁がある市場を目指すべき。
と捕らえられる危険性ですが、
それは少し違っていて、

例えばジャパンプレミアムの領域である熟練職人は、
ユニクロをはじめ、多くの企業の年輩社員達が海外に
派遣され技術指導などで活躍していることから、
活躍の場は国内に限らず、
逆に海外に売り込みが期待できる産業領域です。


いずれにせよ、
どの領域だったらどういった危険があり、
またどのようなメリットが期待されるか。
そういった事が丁寧に書かれています。

特に筆者は元IBMに在籍経験もあるということで、
IT関連の内容は充実しており(ここでは割愛しますが)、
私も日々同じような危機感をもって仕事をしています。

相当に取材を重ねている様子ですが、
ITの内容が私の肌感覚とも合っていることもあり、
本書の内容の信頼性はかなり高いと感じます。

本書を通じて印象深かった点は、
小さい頃から失敗したら謝る習慣や団体行動など、
の日本の習慣や、微差にこだわる日本文化が、

お客様をもてなすサービスや、
企業組織に知識が蓄積されるなどのメリットを
生むと言います。

細かな事は気にせず、個人主義が徹底している
中国やインドでは真似できないとあります。

そう言われてみると、これからは工業製品ではなく、
ジャパンプレミアム」を真剣に考えて
売っていく時代かも知れません。


最近の企業寿命は5年などとも言われますが、
その現在企業寿命を最も左右するのが
グローバル化です。

グローバル化と職業の未来を検討した本書は、
社会人生活を送る上で押さえておきたい
一冊と思います。



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