漆原 直行 (著) 「ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない」は情報を得る本として読みたいです。

健康や医療のような大切なことでも、
あるひとつの方法について、
必ず賛成反対の相反する意見があるといいます。

例えば、
あるお医者さんは、
手術をしなくても病気が直るといい、

ある健康管理士さんは、
毎日朝ご飯を食べると太るといいます。

このように正解がわからないことは、
何も健康や医療に限った話しではありません。

天気予報でさえ、外れるのは日常茶飯事です。

ですから、
ビジネス本などでは、

自分の頭を使って考えよう。

・・と書かれていますが、

最近読んだ本には、

考えても考えなくても当たる確率は50%
だから考える時間がもったいない。
その時間に行動を始めよう。

・・みたいな事が書かれており、
妙に説得力がありました。

いろんな考え方があるものだなぁ〜。
と思います。

・・さて本日は、漆原 直行さん著

「ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない」

をご紹介します。
(今日は、ちょっと文章が長いですよ。汗)

確率が50%ととはいえ、
いずれにせよ、
私たちは”専門家”と呼ばれる人の意見に弱く、
特に本や作家の意見に対し、
疑いを持たない傾向があります。

ですから、
あるビジネス本に、もっと勉強しないとダメだ。
(ビジネス)本を読まないとダメだ。

・・と書かれていると、
そのように信じてしまう訳です。

得てしてそうした本には、
本を読むだけではダメだ。
読んだら忘れてしまうので、ブログに感想を
書いておきなさい。

・・とか書かれています。(笑)


ところで以前にも
「なぜ勉強しても出世できないか」

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という似たような雰囲気の
本をご紹介しました。

どちらも実に耳の痛いタイトルですが、
特に本日ご紹介するタイトルは、

本を読んでいちいちブログに書いているような、
私には直球で響いてきました。


本書をひと言でまとめると、
タイトル通り、

ビジネス書を読んでも、
仕事の出来る人になれない。

ということが、そのまま書かれています。

帯には、いいことが書いてあって、

□帯の表紙側

 自己啓発成功哲学
 ライフハックや仕事術、
 ロジカルシンキングで、
 年収は上がりましたか?
 独立企業できましたか?
 夢が具現化しましたか?

□帯の裏表紙側

 ビジネス書とはつまり
 島耕作や栄養ドリンクや
 たばこ屋のおばさん
 みたいなものである。

とあります。

あるビジネス本の面を言い当てており、
実に上手い文章だな。と感心します。

確かに私も沢山ビジネス書を読みますが、

独立起業したり夢は実現してません。

しかし、年収は上がった「気」がします。

そして私の感覚でも、

ビジネス書とは栄養ドリンクみたいなものである。

は的を得ていると感じます。

つまり(悲しいかな)、

栄養ドリンク(本)を飲んで仕事を頑張り、
ようやく現状維持。

そんな感じです。

ですから、
ビジネス本を読まなければ、
現状維持が難しいのではないかと思う訳です。


さて本書では、
冒頭にビジネス本の歴史を説明し、
後にビジネス本読者のインタビューで、
ビジネス本を読んでも上手く行かなかった
事例を紹介するような内容となっています。

私の印象ですが、

本書はアンチビジネス本という、
一貫したスタイルで書かれており、

読んでいて、

なぜそんなにネガティブか!

・・と少し読むのに嫌気がさしてきます。。

途中で読むのを止めよう。
とも思ったのですが、

とはいえ、
プロのライターさんが執筆した本です。
内容は、相当に練られている筈なのです。

ですから著者が本当に、
アンチビジネス本なのかは不明ですし、

文章力を生かし、
企画本として、
読者をあおった文体にしている
可能性はあると感じました。

著者自身も、かなりの数の
ビジネス本を読み込んでいる訳です。

もちろん私も、
全てのビジネス本が良いというつもりも無く、

ブログでもちょっちゅう書いていますが、
品質には相当なばらつきがあるように思います。


ビジネス本の善し悪しの感情論は抜きにして、
本書からは様々な関連情報が得られます。

私も知らなかったのですが、
例えば、

自己啓発のルーツは19世紀のアメリカで起きた
ニューソートと呼ばれる宗教活動にたどり着きます。

さらにそのニューソート運動の発端となったのは、
心のあり方が病気に影響を与えるという、
心理療法的な考え方です。

この考え方は、
ナポレオン・ヒルの「思考は現実化する」や、
マーフィーの潜在意識関連の書、
デル・カーネギーの「人を動かす」「道は開ける」
などに影響を与えていると云います。


例えば日本では明治時代に、
サミュエル・スマイルズの「自助論」を
中村正直が「西国立志編」として訳し、
100万部を越えるベストセラーと成りました。

他人の力では無く、自ら志を高くし、努力する。
という考え方のですが、

これは聖書に書かれる、

「天は自ら助くる者を助く」

の考え方そのものです。。


さらに1969年に発行された、
梅棹 忠夫 (著) 「知的生産の技術」


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には、現在○×ハックと呼ばれる、
How toものの知識の多くが書かれているそうで、
つまり、今に始まったことではないということです。

筆者も指摘していますが、
ちまたに広まっている多くの
ビジネス書(特に自己啓発書)には、
オリジナルがあり、

どんどん中身が薄くなっているということです。

一定数の自己啓発書/成功本を読むと、
だいたい同じ事が書かれていることに
気付くのですが、

それでも読み続けるのは、やはり、
「ビジネス書は栄養ドリンクのようなもの」
だからでしょう。

本書の課題と感じるのは、
ビジネス書といっても様々なジャンルやレベルがあり、
これらを、ひとまとめに論じている点です。

ちょっと出世したスーパーサラリーマンが
書いたような本(前者)と、
ドラッカーカーネギーの本(後者)を
まとめて論じるのは少し無理が有ります。

著者が主にダメだしをするのは前者ですが、

これらの著者は、
著者自らが率先してネットやセミナーで
販促するため、
出版社にとっては実に都合の良い話しで
あることが紹介されています。

云われてみればその通りです。

昨日ご紹介した橘玲さんの
「大震災の後で人生について語るということ」には、

日本における「知識層」は人口の10%程度とすると、
経済書やビジネス本を読む人口は400万人であると、
具体的に示されています。

少しビジネス本を読めば、
人口統計的には「知識層」にはいる訳ですが、

いずれにせよ、
出版会社としてはこのマーケットで
ビジネス展開をしなければ成らないわけで、

著者自らが営業してくれるビジネス本は、
ヒットに繋がる可能性も大きく、
営業的に大いに助かるという、

出版社とビジネス本作家との間で、
もちつもたれ合いの関係があります。


本書のインタビューでは、
いかにもダメリーマンが言いそうな内容で、
やや意図的なものも感じます。

典型的なところでは、
ビジネス本好きな上司が、
週末読んで覚えたであろう、
新しい仕事のやり方を試そうとして
部下が文句を言っている様子。

自らがビジネス本に書かれていたことを
実践しようとして、挫折する話しです。

なかでも最もダメなパターンは、
自分だけ勉強して賢くなったように思い、
周囲がバカに見えてしまうケースです。

こういった事を言っている人達は、
本を読んでいることがダメなのではなく、
その前の人間スキルとしてNGです。

著者は仕事が出来る人を目指すなら、
まずは周囲の仕事の出来る人を真似するなりして
着実に実勢をあげるべき。
と全くその通りですが、

「なぜ勉強しても出世できないか」
にも書かれていたような気がします。


私の経験でもビジネス本に書かれることが
そのまま適用出来る事はありません。

会社の集合研修で習った事でさえ、
現場での適用は難しい訳ですから、
まして自分一人が読んだ本を実行することなど
無理な話しなのです。

ただ、
だからといって止めてしまうと意味が無く、
5年でも10年でも虎視眈々と成果を出す
機会を狙いトライし続けることが
大切なのではないかと感じます。

得てして、
仕事のやり方系の本は若い人が
読んで挫折するのですが、
歳を取りいずれポジションもあがれば、

前に書いた、お寒い上司にならないように
注意して適用すればよいのです。


・・という訳で、

少し企画的な内容や文章や、
ビジネス本をひとまとめにして議論している点。
ダメサラリーマンのインタビューを全面的に
採用している辺りが、イマイチな感じがします。

ただ、ビジネス本の歴史など、
しっかりまとめられており、
情報を得るという点では有意義な本です。

テーマの難しさがあり、
なかなか一長一短、ある本だと感じました。


ビジネス本好きな方は、
読みながら腹立たしくなってくる箇所も
あるかも知れませんが、

自分の頭で考えるという意味において、
こうした意見や背景も十分に理解した
ほうが良いと思います。

是非ともお勧めしたい一冊です。



追伸)
なお、著者がお薦めする本は、
7つの習慣」と「思考は現実化する」
の2冊なのだそうです。

確かにこの2冊は素晴らしいと思います。


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