喜多あおい (著) 「プロフェッショナルの情報術 なぜ、ネットだけではダメなのか?」を読みました。

インターネットが普及して
世の中が変わったことの一つに、

「情報を調べる」

ということがあると思います。

今時、携帯電話をもっていれば、
検索一つでネットから様々な情報が
引き出せます。

そのようなご時世から、

 物事を(頭に)覚えることは価値が無い。

などと、
従来の詰め込み型・単純記憶型の
学校教育に疑問が投げかけられたり、
(私は必ずしも賛同しませんが・・)

ビジネスの現場でも、
物事を教える、コンサルのような仕事が
減少しつつあります。

私の場合特に、コンピューター系の仕事を
していることもありますが、

最近は仕事で、専門本や雑誌を使って
物事を調べることは殆ど無くなりました。

未だ若い人や技術職の人は、
プログラムなどの本を読んでいますが、

ネットでいちいち文法やコマンドを調べる
よりも本の方が「便利」だからです。

ちなみに私の場合、
専門誌、専門書は殆ど読まず、
ネットの次は人です。

世の中の最新動向は殆ど人から入って来ます。
そして、人とネットや文献を活用して、
確かさの裏を取っていきます。

本の情報が必要なときは、
プレゼン等で、何かしらの権威付けが
必要な時が多い気がします。


・・・という訳で本日は、喜多あおいさん著

「プロフェッショナルの情報術」
 ーなぜ、ネットだけではダメなのか?ー

をご紹介します。

著者の喜多あおいさんは、
テレビ番組のリサーチャーをしています。

前職は新聞社の記事データベースの仕事だった
そうです。

私よりも少し年代が上の方ですが、

この時代、
新聞社にもどんどんコンピュータが
導入されました。

今時、記事検索をコンピュータが行うのは当たり前で、
一般人も利用できる、
日経テレコンなどの有料記事検索サービスもありますが、

喜多あおいさんが入社した時代は、
まだまだ新聞切り抜きが記事検索の中心だったそうです。

そういえば、私も新人のとき、
新聞の切り抜きをさせられました。(汗)


情報産業などといわれるコンピュータ業界ですが、
その普及にあたって、
特に文字情報を扱う新聞や出版社などは、
劇的に業務が変わった分野があったことは
容易に想像がつきます。

そんな新聞社時代を経て、
著者はテレビのリサーチャーという職業に就きます。

テレビ番組でも最後のテロップにリサーチャー誰々、
と名前が出ることがありますが、

その歴史は意外と浅く、
専門職として一般広く使われるようになったのは、
90年代からのようです。

私の勝手な想像ですが、
テレビ番組にバラエティー系、クイズ系、
それに朝やお昼の情報番組が増えたことに伴い、

そのネタ調べを行うリサーチャーが必要となった
のではないかと思います。

もともとテレビ局は新聞局同様、
取材記者という、調査の専門職が居るわけですが、

ニュース番組ばかり作っているわけでもありませんので、
従来の専門職だけでは足りなくなってきたと云うことでしょう。

また、テレビ局では元々ドラマなどを作るときなど、
時代考証や医療監修などの技術指導などの専門家が
入ることも多い訳ですが、
現在は、そういった専門家の人達を探すのも、
リサーチャーの仕事なんだそうです。

本書を読むと、
テレビ番組製作にあたって、
リサーチャーがどのように関わって行くのか。
断片的に理解することが出来ます。

一番分かり易いのは、クイズ番組製作における、
クイズの答えを考える仕事です。
ある質問に対し、答えが、グレーゾーン含め、
多々存在することがあります。

クイズ番組は、その場で正解の白黒を付けないと
いけないわけですが、
リサーチャーは、様々な想定問答を丁寧に
考え用意します。

本書を読むまで知らなかったのですが、
クイズ番組で、ピンポーン(正解)とか、
ブー(不正解)とか音が鳴りますが、
その音を出すのも、
リサーチャーの仕事だったりするそうです。
常に瞬間的な判断が求められ、
緊張する仕事なのだそうです。
(そりゃそうでしょう。汗)

とにかく、テレビは公共の電波を使って
情報を流すわけですから、
その正確性は何より増して重要であり、
それを担うのがリサーチャーの仕事という訳です。


さて本書では、
リサーチャーという、
常に世の中にアンテナを張り、
情報を扱う人の生き方、考え方が示されています。

他のビジネス本でも語られますが、
忙しい合間を縫って、必ず本屋さんに行きます。

しかも、青山ブックセンターさんとか、
ジュンク堂さんなど個性的な本屋さんや、
紀伊国屋さんや丸善さんなど、
ヘビーな品揃えのお店です。

他のビジネス本著者と違うのは、
基本的に全フロアーを見て回るということです。

紀伊国屋ブックセンターなど、
全フロア回ると、一日仕事になるそうですが、
中のカフェがおいしくて嬉しい。
そんな事も記されています。

同じようにデパートでも、
基本的には全フロアを見て回るように
しているそうで、
ネットに頼らず、実際にモノをみる姿勢を
重視しているように感じます。

つまり、現場にある空気感や、
現場を作った店員さんのセンスを感じとり、
時代の流れを読む訳です。


他にも印象的だったのは、
話しは固有名詞で話せ。という下りです。
例えば普段の日常会話で、

「お昼にパスタを食べた」と言うのではなく、

カルボナーラとか、ペペロンチーノを食べた。
そのように言う人が情報感度が高いそうなのです。

読んで気付いたのですが、

確かに「パスタ」を食べた。と言うよりも、
カルボナーラ」を食べた。と言ったほうが、
状況が目に浮かんできますし、
その後の会話も盛り上がりそうな気がします。

私も早速、マネしなければならない。
そのように思いました。


そんなテレビのリサーチャーの仕事のメインは、
調査対象に関するレポートを作成することです。

決してテレビの面白いネタを作ったり、
企画書を作ったりすることではありませんが、

クライアントであるテレビ局の人
(に限らないと思いますが)は文字を読みません。
レポートを見て視覚的に内容の善し悪しを判断します。

特にレポートの中でも大切なのは、
レジュメ(要約を1枚にまとめたもの)です。

見出しのつけかた、長々と説明を書かない。
写真も良く選ぶ・・等々、
サンプルで具体的に紹介されています。

ただレポーティングに関しては、
我々コンピュータの世界も
どこの世界も同じなんだな。
・・と感じました。


そして本書では最後に、
どうやって「人」から情報が聞き出せることができるか。
といった話題があります。

冒頭、情報は人に聞く。
・・みたいな事を書きましたが、
リサーチャーの仕事も人に聞くということが重要です。

しかも私と違って、
仕事の都度分野の異なる人や、
知らない人から情報を聞き出さなくてはなりません。

いつもいい人ばかりでは無いでしょうし、
取材を断られることも多いと思います。

苦労は私の想像を遙かに超えると思うのですが、
著者が言うのは、

「元来、人は本来おしえたがりなのです」

という考えです。

 役に立つことを教えて喜ばれたい。
 知らないことを教えて尊敬されたい。
 良いことも悪いことも、本当はみんなで共有したい。

そんな気持があるのだと言います。

人から話を聴くというのも大変ですが、
そういった信念がベースにあり、
日々仕事をしているんだなぁ〜。と感じます。


本書の文体を読み、てっきり男性が書いた本かと
思っていたのですが、
(それにしても甘い物とか食べものの話しが多いが)
書かれたのは、女性の方でした。

きっと、すんばらしく、
仕事ができる方なのだと思った、
今日の一冊でした。


それにしてもリサーチャーという仕事は、
知的好奇心が沢山あるという人達にとっては、
天職なのだと思います。

その代わり、休みは殆どなさそうですがね・・。(汗)



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