畑村洋太郎著「図解 使える失敗学 (図解 1)」を読んで、専門家が書いた本を読むことも大切と感じました。

今日は畑村洋太郎さん著

 「図解 使える失敗学 (図解 1)」

をご紹介します。


何か面白い本はないかな。・・と、

会社近くの本屋さんに行き、
レジ前の売れ線コーナーを物色。
黄色い表紙の本書が目にとまりました。

というのは、きっと、
最近仕事で失敗をしてしまいまして、
凹んでいた為だと思います。

あまり難しい・真面目な本は買う気になれず、
さらっと中身を観て、簡単に読めそうだった
点も、購入した理由です。


著者の畑村洋太郎さんは東大の名誉教授です。
もともと機械の専攻していたとのことですが、
現在の主なテーマは失敗学です。
東京電力福島原発の事故調査の元委員長でも
あります。

こうした著者のキャリアを書きますと、
難解な専門書に思えますが、
その専門的な内容が中学生でも読めそうな
平易な文章と漫画的な簡単な図で書かれており、

しかも、
専門家の先生が執筆しているという、
安心感をもって読むことが出来ます。


内容は「失敗学」というとおり、

一つの大きな失敗の影には、
29件の軽度の失敗と300件のヒヤリとする体験がある。

というよく知られた通称
「ヒヤリ・ハットの法則」のような失敗の基礎から、
失敗から想像、失敗の応用までを3つカテゴリで、
85項目が紹介されています。

内容は社会人を20年やって、
たまに仕事で失敗(トラブル)分析も行う私が読んでも、
納得の内容でした。
(但し失敗”分析”の専門書ではありません。)


本書の前半は、
自分や身近な人が失敗に遭遇したらどうするか。
ということを中心に書かれています。

失敗した際最も大切な事は、

 失敗した人の命を救うこと。

と記されており、
ココで軽くショックを覚えました。

統計データなどが示されている訳ではありませんが、
失敗の専門家が観て、
(日本では)失敗を気にして(心の病を発症し)、
自ら命を失ってしまう人が多いと云う
ことだと感じました。

カッコで日本では、と括ったのは、
日本は良く失敗が許されない社会と
云われるからです。

(現在の安倍政権も、
リベンジができる社会を目指していますが、
どうでしょうね。)

私が本書の中で最も大切と思った内容は、
失敗をして、
心が折れてしまったときの対応方法です。

以下に記します。

==
No.11 失敗に立ち向かえないときに
    取るべき7つの方法
    1,逃げる
    2.他人の生にする
    3.おいしい物を食べる
    4.お酒を飲む
    5.眠る
    6.気晴らしをする
    7.愚痴を言う
==

およそ自己啓発本やビジネス本には
書かれない内容ですが、

失敗に立ち向かうには、
コレぐらいしても良いのだと感じました。

ちなみにその前後にあるのは、

 ・失敗したら、失敗を認めた上で鈍感になろう
 ・失敗したら、人の力を借りて元気になろう
 ・失敗した人を助けるためのインチキは
  許されることもある

とあります。

マスコミ報道を中心に
何でも正直に、情報公開が正しい。
といった風潮も感じますが、

人の命を守る(自殺を防止する)ためなら、
インチキも許されると著者は記しています。

常識と180度違う内容を読んで、
著者の有機に心が動いたのかも知れません。


重要と思うページに付箋を貼りながら
本書を読みましたが、
その数は18項目になりました。
他にも印象深かった点をすこし挙げてみます。

==
No.67 魚のいない池から魚のいる湖に向かう大切さ
   (一生のうちには、居心地の良いタコツボから
   飛び出し、広い湖にむかわなければならない
   こともある。)

==
著者が鋳造や塑性加工の研究から、
ナノマイクロの研究に転身した話題を紹介しています。

私も20年も同じ仕事をしており、
先が見えてきた感があるのですが、
どこでタコツボから飛び出すか。
自分自身のテーマでもあります。


==
No.74 自分の頭の吸収力の低下を仮想演習で補おう
   (人間が新しいことを吸収する能力は、
   五歳年をとるごとに半減する。
   しかし常に仮想演習を繰り返している人の
   掌握可能領域は5年で最大5倍になっていく。)

==
人間が新しいことを吸収する能力は、
五年で半減するというのが、著者の体感です。
この説によると、一つの分野で仕事を続けて
いた人が、転職など他の領域でうまくいくのは、
45歳ぐらいまでなのだそうです。

ちょうど私の年ですが、更に続くのは、
その場合でも仕事のレベルは25歳程度なので、
転職してもその程度の収入しか得られない。

と示される点です。
タコツボの話しと絡めると、
私にとって、
予想外に重い話題が突きつけられます。


さて、
先日観た映画「蜩の記」では、
お家のいざこざ、
つまり失敗を主人公一人のせいにして、
切腹させる。というストーリでした。

このストーリーでは、
主人公が清々しく切腹していくので、
感動し観客は救われるのですが、

失敗で責任を負い命を失うことは、
日本から無くなって欲しいと感じた、
今日の一冊です。



今日のアクセス:278,203