アルボムッレ・スマナサーラ 著「心を整える8つの脳開発プログラム」は、教育者の方にお勧めしたい一冊です。

とある本を探しに、
会社の近くの本屋さんに行きましたところ、
探している本の近くに平積みされている、
面白そうな本が幾つか目に付きました。

その日はあいにくカバンが満タンでして、
沢山の本を買うのはどうかと思いつつ、

これも何かの出会いに違いない。
・・と購入したのが一冊が本日ご紹介する、
アルボムッレ・スマナサーラ さん著

 「心を整える8つの脳開発プログラム」

です。

”心を整える”という部分と、
脳科学”という言葉に興味を持ちました。

それに、本屋さんで平積みされているということは、
本屋さんお勧め、もしくは、
売れている本ではないかと想像したのです。


著者のアルボムッレ・スマナサーラさんは、
スリランカの仏教哲学者(スリランカ上座仏教長老)で、
大学で教鞭をとったのち1980年に日本にやってきました。
長老ということで、かなり偉い人ではないかと想像します。

本書はある講演の模様を本にしたものですが、
外国の方とは思えない流ちょうな日本語で、
しかも難しい言葉なども混じっています。
読んでいて、本当に外国人なの?と思うほどです。


本書の副題は、

 悩みを生み出す「大脳」と「原始脳」のメカニズム

となっているのですが、
副題のとおり本書の前半は、
「大脳」という、生物の進化の過程であとから出来た脳と、
(つまり人間の脳)
「原始脳」という、主に生命維持に用いられる古い脳が、
(爬虫類などにもある)
どのように私たちの生き方に影響を与えているのか。
ということが語られています。

恐怖(心)は命を守るために存在するが、
それは原始時代の話しであって、
現代では、命を伴う危険が少ないため、
恐怖(心)が伴う判断は、時に間違うことがある。
だから恐怖(心)を克服することが大切。
・・といった内容の自己啓発本がありますが、

本書でも、人間と爬虫類や他の生き物と、
「原始脳」のサイズは変わらず、
「原始脳」と「大脳」は葛藤を続けている。
ですから「原始脳」をコントロールすることが大事である。
といった内容が語られます。

原始脳に起因する、おびえや存在欲(生命を守る力)が、
怒り、高慢、嫉妬、憎しみ、不安・・・
などの良くない感情を引き起こすのだそうです。

ちなみに仏教ではこれらの感情を1510種類リスト
アップされており、
仏教の心理学的な完成度は高いと著者は言います。

では、ここでいつものように、
8つのプログラムをざっと箇条書きにしてみます。

 1,鵜呑みにする癖を止める。
   →データを調べ考える。
 2,思考妄想を管理する。
   →悪い考え・想像・妄想を止める。
 3.言葉を管理する。
   →悪い言葉を止め、美しい言葉を使う。
 4.行為を管理する。
   →行動を自制する。
 5.仕事を選ぶ
   →仕事の内容を吟味して選択する。
 6.努力する。
   →努力を趣味とする位になる。
 7.目覚める
   →今を大事にする・今を集中する。
 8.集中力をつける。
   →集中力とは心の喜びである。

このように書くと、
他の自己啓発本にも書かれている内容にも見えますが、
仏教の研究者らしく内容は、
自分を律することに重きをおいて、
いるように感じます。

特にユニークで興味を持ったのが、5番の仕事を選ぶです。
仕事に貴賎は無い等と一般的にいいますが、
本書では、
お金に釣られた仕事をしない。
命や健康に影響がある仕事をしない。
など、いくつかやるべきではない仕事を挙げています。

特に仏教的には、
生命の売買(ペットショップなど)、
酒の酒造販売、武器の製造販売、肉の販売
などをしてはいけないそうです。


本書の最後は、質問のコーナーで
主に子育てに関連する相談を著者が回答しています。
例えば、子供に話が通じない。教えても分からない。
といった悩みに関して、

子供のコード(会話の文法)にあって
いないからだ。と言います。

即ち親が子供を理解しようとせず、
こちらの言い分・考えだけで、一方的な
やり取りが発生しているのです。

本書で一番心に残ったところは、
この会話のコードが違う話題です。

最近イスラム国の事件が話題に成っていますが、
コードの違いは、子育てや教育の現場だけでなく、
大人や国際政治含め、
あらゆる場面で起きているように感じます。

相手を理解することは難しくても、
相手と自分は違うのだ。ということを
常に意識しながら、相手を思いやり、
コミュニケーションをする必要があります。

著者は、仏教学者・教育者ではありますが、
脳科学の専門家ではありません。
また講演会の内容と言うこともあり、
専門的で、難しい突っ込んだ内容は
本書にはありませんので、
脳科学的なアプローチで「心を整える」
という内容を期待すると、
本書とは会いません。

どちらかというと、教育論やモラル・哲学
といった分野の本ですので、
学校の先生や、育ち盛りの子供を持つ親など、
教育の現場にいる方向けの今日の一冊です。



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