マネー・ヘッタ・チャン著「ヘッテルとフエーテルのみにくいアサヒるの子」は、時間をかけ作られた力作です。

私の机の周りには、
未だ100冊位の積読本がありまして、
去年にこれらを読み終えるまでは本を買わない。
・・と一瞬心に誓ったものの、、
今週末もアマゾンから本が10冊ほど
届いている状況です。(汗)

積読本が減ったのは一瞬だけで、
減るどころか増えているような気がします。

そんな中であえて、
読まずに取っておいた本がありました。
それは読めば面白くて直ぐに読み終えてしまうのが
分かっているのでもったいないのです。
さらに、その著者の出版物がとても少なく、
次回作も何時でるのか良く分かりません。

そこで読むときは、
せめて一日一章ぐらいづつ読もうと思ったのですが、
読み始めたとたん、
面白すぎて速攻で読み終えてしまいました。


・・という訳で本日は、マネー・ヘッタ・チャンさん著

 「ヘッテルとフエーテルのみにくいアサヒるの子」

をご紹介します。

マネー・ヘッタ・チャンさんの本は
本作で3作目ということですが、
過去2冊もココでご紹介しています。

何度見ても、ふざけたペンネームと思いますし、
何度読んでも、ふざけけた登場人物と企業名の伏せ字です。

しかし良くここまで考えたな。
・・と感心・・など、
本書を読むときは考えません。

ただひたすら面白く、
ただひたすら心動かされます。

今回は3作目と云うことで、

・米作農家の問題
・ダイエットや健康診断などヘルスの問題
・某大企業の不正経理問題や保険金未払い問題
水俣病問題

がテーマに挙げられます。

アマゾンの記事などを見ると、感心した!
という意見と、
3作目に入りネタ切れでは?内容が薄い!
と云う相反するレビューがあります。

マネーさんの本職は、投資家と聞いていますので、
マスコミ記事などの二次情報を元に作って
いるのだと思いますので、
内容の薄さはやむを得ない面があるとは思います。。

また、不正経理問題や保険金未払い問題などは、
新聞や週刊誌等の活字媒体を丁寧に読んでいる
方であれば、なんてことない話題でしょうし、

健康系の問題は、ネットの裏情報サイトを
読んでいる方でれば、常識的な話題かもしれません。

しかし、本書の価値はそういったニュースソースを
丹念に見なくても、内容が簡単に頭に入るように
整理されて作られたと云うことです。

私はマネー・ヘッタ・チャンの本を
首を長くして待っている物ですから、
年一ぐらいで執筆してもらいたいところですが、
難しいのは、本業の合間に事実を調べ、
この独特の物語を作ることだと思います。


テレビや新聞は、CM料の高い企業の悪口は
報道しないといいますから、
何が正しいのか良く分かりません。

そんな中で、こういった本を出せば、
当然我々の想像も付かないほどの
攻撃に遭うわけです。

そうしたなか、あえて批判を浴びるような
本を出すというのは、著者のお金や売名行為
とは全く別の、インセンティブというか、
モチベーションがあるのだと思います。

本書の後書きによれば、
本書を書くきっかけと成ったのは、
東日本大震災でした。

震災(東京電力)が引き起こした原発問題を、
お金の観点で考え、サンプルケースはないかと
探して見つかったのが水俣公害問題だったと
いいます。


本書の一番最後のネタが水俣病なのですが、
読み始めは、
3冊目の最後にして、ついに最近のネタが切れて、
過去の話しを持ち出さなくてはならなくなったか。
と思いました。

しかし途中から、
あまりにも衝撃的で、他の内容を大きく越える
クオリティーというかインパクトを感じました。
もちろん、水俣病に関する多少の知識はあるのですが、
それでも凄いと感じるのです。

そして、震災後、水俣病のテーマを見つけたところから
本書が始まったと後書きで読んで、納得を得たのです。

水俣病と云えば、小学校・中学校の社会の時間に
必ず習う必須テーマです。
チッソ社の水銀を含む排水に汚染された水俣湾の、
魚を食べた人達が次々に、倒れて行くわけです。

40代半ばの私が、社会科の授業で習った位ですから、
色々と問題はあったにせよ、とっくの昔に解決し、
終わったテーマと思っていました。
がしかし、本書に付く年表をみて驚きです。

年表の最後は2010年和解成立とあります。
つい最近のことではありませんか。
原不明の奇病が発表されてから実に
50年の月日が流れています。

そして本書に書かれる内容があまりにも酷すぎる
のですが、本書によれば、原発事故で起きた
事象(政府の対応など)と似ているそうなのです。

最近は隣国中国の公害問題に絡め、
企業が酷いとか政治が悪いとか様々な報道を
目にしますが、それはつい最近日本でも起きた
事だと云うことなのです。

本書を読んでいて一番辛いのは、
水俣病の場合でも、病気になった人や
その家族が周囲のイジメにあったという話しです。

原爆が落ちたとき、被爆者にも同じ
ようなイジメがあったと聞きました。

震災のケースでも、似たような事例があったのでは
ないかと思うのです。
日本人は泣き叫んだり暴動をおこさず、
辛抱強く耐えていると、良い報道しか有りませんが、、

それも結局、日本文化の悪い面です。
そういった事も本書を読んで感じるのです。

他にも、意外と多く流通している汚染米の状況や、
健康診断の悪い面の話しなどは、
是非知っておきたい情報です。

私の実家の後ろには、田んぼが広がっており、
その真ん中を線路が通っています。
線路には草は生えないのですが、
それは砂利を敷いているからではなく、
もの凄い除草剤を捲いているからなのです。

除草剤はゴルフ場などでも問題になりますが、
そうした除草剤は結局地下に流れ近隣の
土壌を汚染します。

中国では日本米が凄い値段で売れているという
ことですが、私たちがクチにする米は、
実際どのような米かはわからない
と本書を読んで感じます。


また、本書の直接の話題ではありませんが、
アップル創業者のスティーブジョブスは、
若くしてガンで亡くなりました。

若くしてもガンで亡くなる人は沢山いるので、
あまり不思議には思わないかもしれませんが、

私は、彼ぐらいのお金を持った人が、
そして本当のベジタリアンであり、
(もちろん米国一安全な野菜を食べるわけです)
健康オタク的な人が、簡単に死ぬのだろうか。
と不思議に思っていました。

人づてに聞いた話しですと四半期に一度
念入りな人間ドック(もちろん米国で最高レベルです)
をしていたそうですし、
それでも、見つかったときは末期ガンだったわけです。
そんなことあるのだろうか。
と思います。
しかも、医療とお金が密接な関係にあるアメリカです。
最高級の治療が施されたに違い有りません。

本書でも似たような話が書かれています。

私たちは原発事故の時、レントゲンに比べて被曝量は凄く小さい。
というニュースを何度も聴きました。

原発事故を中心に考えると、
簡単に流してしまうのですが、
実は一般の我々にとって怖いのは、
原発事故の被爆ではなく、
人間ドックや検査の医療被曝のほうではないかと思いました。


・・という訳で、
週刊誌の小ネタ的な本のように見えつつ、
実際は震災から何年もかけて作り上げた力作である本書は、
心を素直にして、多くの人に読んで頂きたいと
思った今日の一冊です。
本書は広くお薦めしたいです。


ヘッテルとフエーテルのみにくいアサヒるの子

ヘッテルとフエーテルのみにくいアサヒるの子


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