ジェニファー・L・スコット著「フランス人は10着しか服を持たない」はフランスのライフスタイルを紹介する本でした。

本日は、ジェニファー・L・スコットさん著、神崎朗子さん訳の、

 「フランス人は10着しか服を持たない
  ~パリで学んだ“暮らしの質"を高める秘訣~」

をご紹介します。

本書は2014年10月に発売された本で、
本屋さんで平積みされる様子を何度も見ました。

私の部屋は物が溢れていることもあって、
たびたび断捨離本、片付け本を購入し、
読み終えると、そのたびに整理を誓うのですが、
いまだに効果は出ていません。(;_;)

本書も発売当時から知っていたのですが、
そのタイトルから、
てっきり女性向けの断捨離系の本と思い込み、
手に取ることはありませんでした。

しかし、気になるタイトルの本が、
その後もずっと売れ続けていることもあり、

※本日、2016年9月13日現在、アマゾンの
 文学>略>住まい・インテリア部門と
 歴史>略>ヨーロッパ部門で第1位。
 また、
 暮らし>略>住まい・インテリア部門で4位
 です。

ついに購入してしまったのです。

読み終えてみて、
私の事前予想と大きく内容が違っていることに
驚きつつも、期待以上に面白く心に残りました。

そうなんです。
アマゾンのランキングでもわかるのですが、
本書は、文学や歴史のランキング上位の本なのです。

つまり、
「フランス人のライフスタイル文化を紹介する本」
というのが私の率直な感想です。

オシャレなフランス人は、
どんな考え方やテクニックで10枚をセレクトをするのだろう。
という点が興味の対象だったのですが、
その記述は全体のごく一部の話しでした。

多くの女性が私と同じような点に興味を持ち、
本書を手にしたのではないかと思います。
うまいタイトルを考えた編集者の方に完敗です。

ちなみに原題は
「Lessons from Madame Chic」
で、副題の
「パリで学んだ“暮らしの質"を高める秘訣」
のほうが内容を適切に表現しているように思います。


2001年にフランスに半年間留学したアメリカの女学生が、
留学先のホストファミリーの特にお母さん(マダム・シック)
から学んだ事をブログにしたところ、
大きな評判を呼び出版されることになりベストセラーと成りました。

本書を読むと、
フランスで暮らしたのがつい昨日のように感じられるのですが、
(それだけ文章・翻訳が良いと言うことです。)
実際は卒業し、ライターとして職を得て、結婚をして子供が生まれ、
フランス留学から10年位してから書かれた内容です。

時間が経っていることもあり、
今も本当かどうかやや疑問も感じる点はあります。

しかし書かれている内容はどれも、
頷くような内容であり、
日本でかつて存在した、生活の美意識が、
そこにあるように感じるのです。

年配の方ににとってみれば、
そんなことは当たり前でしょ。
と思うような内容かもしれませんが、

私の年代でも、
そういえば祖母が昔言ってたな。
みたいな内容が有る訳です。

つまり、
フランス人は10着しか服を持たないという
ライフスタイルは、古き良き日本のライフスタイルと
似ているということです。

本書が売れ続け、つまり共感を呼ぶ理由のひとつは、
ここではないかと感じます。

ただし、著者の留学先は、フランスの元貴族の家庭です。
一緒に留学した友人のホストファミリーは、ごく普通の
家庭だったそうで、ライフスタイルは似ていなかったそうです。
ですからフランス人一般の家庭の様子ではありません。

本書の一番のポイントは、
生まれながらの大量消費と、
ラフなライフスタイルに慣れた著者が、

大量消費やラフな暮らしとは相反する
暮らしをみて、驚いたということです。

最初の章では、留学の初日の晩に、
ついお腹がすいて、パジャマのまま、
冷蔵庫を物色して、マダムシックに
見つかった話しがあります。

何がまずかったかというと、
若い女子が夜中に冷蔵庫を物色することではなく、
パジャマのまま自分の部屋から出たことなのです。

つまり、パジャマはあくまで”部屋”着であり、
部屋の外に出るときは、たとえ家の中でも
きちんとした格好で出なくては行けないのです。

たとえばジーンズにしても、旦那さんである、
ムッシュ・シックがたまに家の中で履くことは
あるが、他の人は履かないはかないそうです。

自宅で食べる、朝食も晩ご飯、
きちんとした身支度をして食事を取るのです。


本書に記されるのは、
そういったキチンとした暮らしの様子であり、
そのキチンとした暮らしの一つとして、

 長く使える良質の家具をそろえたり、
 上等な食器こそ日常使いし、
 自分に似合う上等の服を着る。

ということがあるのです。

 テレビはみない。
 ジムではなく日常で運動する。
 定番のスタイルを持つ。
 予算の中で一番上等なものを買う。
 サイズのあう洋服を買う。

など、断捨離本・片付け本にかかれるような
内容もあるのですが、
本書で一番重要な点は、
一つ一つに丁寧な暮らしの様子だと感じます。


著者がアメリカに帰り、
夫婦で買い物をして、
こちらが似合いますよ。店員さんに勧められた
高いズボンを、つい見栄を張って買ってしまった
話題があります。

半年フランスに行ったからといって、
著者のライフスタイルが変わったわけでは
無さそうですが、

このとき、きっと、
マダムシックならどうすのか。
とフランスの半年間の暮らしを思い出し、
著者が自らの行動を変えるために、
本書の大本となるブログを書くアイディアが
閃いたのではないでしょうか。

という訳で、オシャレな表紙に相反し、
女性に限らず中年男子がよんでも、
共感が得られる予想外に心に残る本でした。

いつの日か、
本書を携えてフランスに行き、
内容が正しいかどうか、
この目でみてきたいと思った今日の一冊です。

追伸)
本書に記載される、10着のリストをご紹介します。

マダム・シックの10着
 ウールのスカート3〜4着
 カシミアセータ4枚
 シルクのブラウス3枚

ムッシュ・シックの10着
 グレーのスーツ 2着
 紺のスーツ 1着
 セータ 2〜3枚
 シャツ 4枚
 ネクタイ 2〜3本

ちなみに上記は冬のワードローブですので、
季節に応じた10着があるのです。
この点は誤解が多いかもしれませんね。

念のため、他のホームステイメンバーの
家庭も調べたそうですが、枚数的には概ね
同じだったそうです。

そのあと「セックス・アンド・ザ・シティ」を
みて主人公達は服を着替えてばかりいたが、
同時期に観たフランス映画「イヤとはいわない」では、
主人公は3着の衣装だけだったことに気付いたのだ
しそうです。

なんとも云えませんが、
ここにもフランスとアメリカの文化的な違いがあるかも
知れません。
こんどフランス映画を観る機会があれば、
注目したいポイントです。



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