正垣泰彦著「おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ」をよみました。

私が「サイゼリア」に通うようになったのは、
今から20年以上も前の学生時代です。

まだ有名ではなく、
千葉の「ららぽーと」にその店はありました。

ちょっと洒落たイタリア料理の店でありながら、
値段が安く学生の身分でも大いに楽しめたのです。

大学を卒業してからも、
郊外店など、当時付き合っていた彼女と良く行きました。

ご存じのように「サイゼリア」の価格帯は、
他のファミレスよりも安く、
若手サラリーマンで、薄給だった私の懐には
大いに助かりました。

ただ、連れて行かれる女性的にとっては、
味と言うより、その値段の安さが、
少々不満だったようです。

私にとって、
味は申し分なく、
食事のボリュームにしても、
単価が安いので、他のファミレスと
同じ値段を出せばお腹もふくらみます。

女性の不満の気持ちは分からないでもありませんが、

その後、勝間勝代さんも「サイゼリア」に良く行く
話を伺い、およそ食事の際にお金の考えなくても
良い位の、しかも、女性が絶賛するとは、
・・さすが、勝間さん!と感心しました。

サイゼリア」の商品は、
一品500円を切る価格帯が殆どですから、
高給レストランと比べるわけにもいきません。

しかし、安くておいしい、
本当に良いレストランだと私は思っています。

という訳で、
本日は、正垣泰彦さん著

「おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ」

をご紹介します。

著者の正垣泰彦さんは、
サイゼリア」創業者で現在は会長をしています。

実はテレビ東京の「カンブリア宮殿」で
正垣泰彦さんの回を見て、

創業時の話など本書で書かれている概要を知り、
改めて「サイゼリア」と正垣泰彦さんの凄さを
知ったわけです。

その後、著書が出ていると言うことで購入しました。
(そして積ん読となっていました。)


正垣泰彦さんが「サイゼリア」を起業するきっかけ
となったのは、学生時代のアルバイトです。

おまえ(正垣泰彦さん)と店を作りたいといって
オーナーに誘われたのです。

当時の店は、商店街の青果店のビルの2Fにある、
立地としてはあまり条件が良くないビルでした。

名前は最初から「サイゼリア」ですが、
当時はショウガ焼きや味噌汁がメニューにあるような、
普通の喫茶店でした。

1日にお客さんが6人しか来ない日もあったそうで、
人気の無いお店だったそうです。

そんな時に、お店でお客さんがケンカをして
ストーブに引火し、火事になってしまいます。

命からがら逃げ出したのですが、
はやけ、借金だけが残ったと言います。
正垣泰彦さんはそこから、一人再起をかけます。

お店を再開した後も、
やはりお客さんが来なくて、
どうしようかと途方に暮れ、

試しにどこまで価格を下げたら、
お客さんが来てくれるようになるのか。
”実験”してみることにしました。

正垣泰彦さんは、料理人をしていましたが、
東京理科大卒業の、バリバリ理系の頭脳の
持ち主でした。

5割引まで値段を下げてもお客さんが来なかった
のですが、7割引にしたら、店を一周するぐらいの
沢山のお客さんが来るようになり、

しまいには、「サイゼリア」でご飯を食べるのを
待つために、近所でお弁当を買って待つ。
といった人も出る程になったそうです。

そこから、多店舗化が始まります。

それからも理系脳を利用した分析や改善を続けるのですが、
ある日世界で最も売れている野菜が
トマトであることに気付きます。

イタリア料理で使われているのです。

そこからイタリア料理の研究が始まるわけですが、
ポイントは、本場イタリアで見たイタリア料理は
イタリア人が毎日食べているという、
言われてみれば、至極当たり前の結論でした。

つまり、毎日食べる料理というのは、
価格が手ごろであるだけでなく、
面倒な手間がいらない、
割とシンプルな料理ということなのです。

毎日食べる。がポイントですので、
価格帯はタバコ(当時200円台)や、
雑誌(数百円)を参考にしました。

そして、毎日食べるシンプルな料理で大切なのは、
素材の味が確かなことです。

正垣泰彦さんは、創業時代は、
自分で仕入れをして自分で料理を作っていました。

その中で、商品の目利きの仕方や、
仕入れてから料理をするまでの間、
どんどん鮮度が落ちていく様子を体験しました。

そこでいち早くから、
専用の農場を作るなど、
素材の品質向上に勤めてきました。

他にも、店長は集客や売り上げ責任は無く、
コスト管理(主にスタッフのタスク管理)を
する話や、コストよりも品質を重視する話など、
参考になる話はとても多いと感じました。

たまにマクドナルドに行くと、店舗の中を
100項目近くもチェックしてくるのだそうです。

こういった経営者がいて、
良い企業が生まれるのだと感じます。

個人的には、学生をしながら創業し、
火事にあったり7割引にしたり、
どうやって乗り越えたのか一番興味が
あったのですが、そういった話は殆どありません。

あくまでも、起業家というよりも、
飲食店ビジネス向けの内容となっています。

カンブリア宮殿」など、正垣泰彦さん本人が
語る、理系的な考え方、創業時7割引の話などを
聴いた上で、本書のタイトル

 おいしいから売れるのではない
 売れているのがおいしい料理だ

を読むと、本当に腹に落ちて心に残ります。

先日紹介した「そのひとクチがブタのもと」
http://d.hatena.ne.jp/h6takahashi/20121229/1356805325
でも、
食べ物を「おいしい」と感じるのは、
極めて曖昧な概念であることが科学的に
紹介されています。

本書でも、
正垣泰彦さんは、「おいしい」という概念は
極めて曖昧であり、
様々な条件で「おいしい」は変わってくると
指摘しています。

帯にも299円のミラノ風ドリアを1000回改良した
ことが書かれています。
それに伴い、
メニュー、味、価格帯は変化している訳です。

私が昔デートに使っていた頃の「サイゼリア」は、
まだ夜のレストランでしたが、
現在は、お昼の家族連れで混み合うレストランに
変わっています。

商品(メニュー)の改良に当たっても、
正垣泰彦さんの指示は当たらないときもあるそうですが、
全て実験と割り切っています。
ここでも理系的思考が発揮されています。


この本は、飲食店関係者にかかわらず、
多くの方が職場の改善という意味で参考になる
のではないかと感じました。

理系の話を多く紹介しましたが、
数式が出るわけではありません。
幅広く読んで頂きたい今日の一冊です。


※本書は「日経レストラン」2009年5月号〜2011年7月号の
 「土壇場の経営学」に加筆修正したしたものとのことで、
 購入にあたっては、ご注意ください。


 
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