佐藤健主演『世界から猫が消えたなら』は、人の死を新しい解釈で表現した秀作と思いました。

先月に、
会社の同僚が亡くなりました。

朝の通勤電車内で倒れ、
病院へ運ばれるも
治療することも出来なかったそうです。
急性の心筋梗塞でした。

私よりも5つも若い彼は、
独身で不健康そうなところも私とよく似ており、
親近感を覚え、仲良く仕事をしていました。

責任感があって、
とても信頼できる男でした。

当日に「今朝亡くなった」
と彼の上司から聞いたのですが、

このような時は、
「亡くなった」という、
日本語の意味もわからなくなります。

その日は週末の連休も近く、
私と同じように、その日の午後の会議のことと、
連休はなにをしようかな。
など、
ごくごくありふれた事を思って
電車に乗っていたに違いありません。


・・・という訳で、本日は佐藤健さん主演映画

 『世界から猫が消えたなら

をご紹介します。


冒頭から暗い話しを書いてしまいましたが、
この映画の主人公(佐藤健さん演じる)も、
脳腫瘍を患い、余命幾ばくもない。
という設定です。

今時ガンで死ぬのが最も幸せ。とか言われますが、
突然死んでしまった私の同僚や、
映画の主人公と照らし合わせてみれば、
そうなのかもしれません。

実はタイトルからして、
最近流行の「ネコ」に関する物語と思って映画館に行きました。
映画の主役である佐藤健さんと宮崎あおいさんが好きなので
映画を観たわけですが、

最初にも書いたとおり、
実際は佐藤健さん演じる主人公が、
脳腫瘍で亡くなってしまう映画です。

郵便曲に勤める僕(名前はなくて、僕と表現される)は、
ある日の帰り道に、激しい頭痛に襲われます。

病院にいったところ、
脳腫瘍でしかも、上京がかなり悪く、
生きているのが不思議なくらいです。
余命が短いことを宣告されます。

絶対彼は、お医者さんの言っている意味が
分からなかったに違い有りません。

落ち込みながら家に帰ると、
突然、自分とそっくりな悪魔を名乗る男が現れます。
佐藤健さんの一人二役です。

そして、僕に告げるのです。

「世界からひとつなにかを消すと、1日寿命が伸びる」

と。

そしてそのとき、
たまたま使っていた(携帯)電話を消すことを提案されます。
悪魔は、携帯電話を消す前に一度だけ使って良いといいます。

人生最後の電話とすると誰にするのか???
観ている私も考えます。

主人公(僕)は、
3年前に付き合っていた元彼女(宮崎あおいさん)に電話し、
そして再び逢いたいというのです。

その後の詳しいストーリーは映画のホームページやWiki
観て頂くとして、(YouTube版を貼っておきます。)

電話を消すことで寿命が一日延び、
映画を消すことで寿命が一日延び、
時計が消えることで寿命が一日延び、
そしてネコが消えることで、、、
というストーリです。

間違い電話を通じて偶然知り合った彼女ですが、
電話が消えることで彼女との思い出が消えます。
彼女と会っても、彼女は僕を知りません。

映画の趣味を通じて知り合った親友も、
映画が消えることで失ってしまいます。

こうして一日の命と引き替えに、
大事な思い出や人間関係が消えて行きます。

そして、大好きなネコを消そう。と悪魔が提案したとき、
主人公はネコを消すことを断るのでした。
ネコは彼にとって母の思い出の代名詞であり、
大好きだった母親との思い出を消してしまうより、
自分が死ぬ方を選ぶのです。

映画では本人のお葬式のようなシーンは出てきません。
私的には母親は早く死に、一人残された父(奥田英二さん)が
可愛そうなのですが、映画なので仕方ありません。


この映画で表現されるのは、
死に対する新しい物の見方です。

人が死ぬという場合、
周辺の人物の視線で人が亡くなることを表現するのですが、

亡くなる人の視点から見ると、
物や思い出が一つずつ消えて行くという。
そんな解釈もあるのだな。
と映画をみて思いました。

本当は、
主人公である僕は、
映画の冒頭、自転車に乗っていて頭痛に襲われ、
自転車から落ちたシーンで既に亡くなっていた
可能性があるのです。

つまり物と引き替えに、命を一日長らえるのは、
突然に亡くなってしまった主人公の願いです。
そして、どこかの時点であきらめ、自らの死を受け入れる。

実はそんなストーリーではないかと感じました。

突然無くなった人にとっては、
一日長生きすることは何より代え難いことです。
一日あれば、大切な人とのお別れができますからね。

映画好きでレンタルビデオ店に勤める親友に、
余命が短いから、
人生最後に観る映画を選んで欲しいと頼み、
親友が泣きながらDVDを探すシーンがあります。
今自分でブログを書きながらも、
思い出して涙が出てきます。


映画では、その親友が映画の名セリフを幾つか語ります。
心に残るのは『海の上のピアニスト』の、

 何かいい物語があって、それを語る相手がいる。
 それだけで人生は捨てたもんじゃない。

です。


ネコを世界から消さない。
つまり自分が死ぬことを決断した主人公は、
最後の身支度をして、父宛の手紙を書き、
そして愛猫キャベツを父に預けるために自転車で出掛けます。
坂道の途中に実家の時計屋さんがあるのです。

雰囲気の良いところで、
映画の舞台はどこかな〜と想いながら映画をみます。
坂があって路面電車が走っているので、
てっきり長崎かな。と思いながら観ていたのですが、
函館のようでした。

少しだけ難を言えば、
冒頭の頭痛がして自転車から落ちるシーン。
シーンの画的には素晴らしく、
てっきり朝の出勤シーンかとおもったのですが、
後で解説を見たら午後でした。
日の具合から、撮影は朝だとおもうのですがね・・。


そんな訳で、
人が死ぬと言うことを、
新しい切り口でみせてくれた映画です。
やはり大切な事は、物事は先延ばしせずに、
大切な人達には常に、優しい気持ちを伝えて
いきたいものだと感じた今日の一本です。

http://sekaneko.com


今日のアクセス:536862(2016/10/10)