ブラッドリー・クーパー主演「アメリカン・スナイパー」は臨場感がもの凄い映画でした。

アカデミー賞の発表も終わりまして、
そのためでしょう。
この時期ノミネートされた映画が上映されています。
久々、見たい映画がありすぎて追いつかない状況
に陥っております。

そんな訳で今日もアカデミー賞関連の映画を観てきました。

アカデミー賞・音響編集賞ほか5部門にノミネートされた、
ブラッドリー・クーパー主演

 「アメリカン・スナイパー

をご紹介します。


さて、年明け早々だったと思います。
知り合いの映画の達人がこの映画を観たというので、
あらすじと、そしてエンディングを聞いていました。

ストーリーを要約すると、
アメリカ軍の凄腕の、射撃手の話です。

その腕一本でレジェンド(伝説)と言われるぐらい、
敵を倒した人の物語です。
イラクの戦場に4度足を運ぶも無事に帰還し、
退役後は、戦争で体や心に障害を抱えてしまった
元兵士を助けるボランティアをするのですが、
残念な事に、そのボランティアの最中に、
銃で撃たれ亡くなってしまいます。
享年38歳です。
私よりも遙かに若いです。

Wikiに正確なあらすじがありますので、
興味のある方はそちらを読んでください。

そのWikiによると、
映画は主人公クリス・カイル氏の自伝
ネイビー・シールズ最強の狙撃手』
(原題: American Sniper: The Autobiography of the Most Lethal Sniper in U.S. Military History
をもとに作られたそうです。

クリス・カイル氏の情報もWikiで調べてみましたが、
映画と同じようなエピソードが載っていましたので、
かなり原作に忠実に作られた映画と感じます。

もちろん自伝では本人が、
自ら得意の銃に撃たれてしまうところはありません。

映画では、イラクから帰還し軍人を退役後、
自らも心に軽度の障害を抱えてしまい精神科医を訪れます。
その精神科医から、
「ココには心や体に傷を負った元兵士達
が沢山いる、彼らを励まして欲しい」。
と言われそしてボランティア活動をするのです。

実際のクリス・カイル氏は、退役後軍事関連の
会社を設立し、その余暇でボランティア活動を
していたようです。

本人が銃で撃たれ亡くなることは、聞いていたので
どんな表現かと思い注目してみていたのですが、
字幕テロップによる表現で終わっていました。
ご遺族に配慮し、惨殺がシーンは描かなかった
ということです。

その後、ご本人と思われる葬式の映像が流れます。
その中にご本人と奥さんの写真も映し出されるのですが、
これが映画の二人に似ています。

今回、主人公をブラッドリー・クーパーさんが
演じているのですが、むさい中年おやじ的な雰囲気を
漂わせていて、その奥さん役が、シエナ・ミラーさん
というやたら美女系です。

この組み合わせありえないだろう。
・・と思いながら映画を観ていたのですが、

映画のエンディングに映し出される二人の写真を見て、
かなり忠実に役作りをしているらしいことが分かりました。

映画の最後に実際の人達の写真が出てくると、
がっかりするケースが多いのですが、
この映画の二人は良い感じで似ています。

また、どうでも良い話しですが、
映画でのブラッドリー・クーパーさんはTシャツ姿が多いのですが、
やたら胸板が厚く、そしてカシオのGショックの時計をしているのが、
印象的です。

私が前にラッドリー・クーパーさんを観たのは、
世界にひとつのプレイブック」ですが、
「世界にひとつのプレイブック」は、アメリカの重いテーマを抱えたラブストーリでした。 - つれづれなるまゝに、日ぐらしMacに向かいて・・・

この映画とはだいぶ印象が違う気がします。
今回の役に応じて、相当体を作っているように思います。


さて映画の初めに戻ります。

映画では冒頭イラクを侵攻するアメリカ軍を写しだし、
次に建物の屋上から、ライフルを抱え見守る
主人公を映し出します。

そこからは主人公目線となり、
アメリカ軍の戦車の行く手に、
母親と子供と思われる二人が現れます。
母親は子供に対戦車弾をもたせ、
そして子供は戦車に向かって走っていきます。

無線で狙撃の支持を仰ぐも、
現場判断に任せると言われ、隣で同僚は、
間違って子供を撃てば軍事刑務所行きと言うのです。
しかし、彼は子供を撃ちます。
これが、レジェンドと言われる主人公が初めて
敵を撃った仕事だったそうです。

映画では、主人公目線のカットが多用されており、
自分が今その場にいて、引き金を引くかどうかの
判断を任せられているかのような臨場感あるシーンが
沢山出てきます。

そして子供を撃った後、今度は落ちた対戦車弾を
母親が拾い戦車めがけて走って行き、次に母親を撃ちます。

映画では後に、似たようなシーンが再び映し出され、
子供に引き金を引こうとするのですが、
すんでの所で止めます。
観ている私の心臓の鼓動が聞こえてきそうです。

イラクでの戦争の実態(イラク戦に限らないと思いますが)は、
映画のように、民間人とも軍人とも、大人とも子供とも
分からないような人達と戦う事であることが伝わって来ます。

軍人とは言え、仮にも先進国に住む現代の若者の、
まっとうな神経では持たないと思います。
そんなことが映画からビシビシと伝わって来ます。

そんな戦闘シーンから一転し、
主人公がどのようにして海軍特殊部隊である
ネイビー・シールズに入隊したかの経緯が描かれます。

小さい頃、弟がいじめられていたのを助け、
父親からお前は
「お前は弱い羊達を守る牧羊犬になれ」
と言われたことや、
その後成人してからは、カーボーイとして
適当な生活をしていたが、
女性に振られたことや、ちょうどその時、
ケニアで起きたアメリカ大使館爆破事件をみて、
アメリカを守りたい。
・・と軍を志願したことが描かれます。

映画では当時30歳で入隊ということで、
普通は18歳位で入隊するわけですから、
かなり歳の取った新兵さんなのですが、

特殊部隊の辛い訓練にも耐え、
そして射撃の腕を見込まれ、
狙撃手(スナイパー)になります。
ちなみに、ネイビーシールズの訓練は2年ほど
かかるようです。

その訓練期間に、酒場で奥さんと出会い恋に落ちます。
そして、結婚式のそのとき、イラク派兵が決まり、
イラクアメリカを行ったり来たり
する生活が始まります。

戦場から帰ってきても、常に心は戦場にあり、
それが原因で奥さんとの喧嘩の種になります。

そしてついに、
「次に戦場に行ったら別れる」
と奥さんに言われるも無視して、
最後の4回目の派遣に向かいます。

1回目、2回目・・と派遣の様子を、
英語字幕で、確か4th tourと映し出されます。
ツアーという言葉はここで使うの?
と思った記憶があります。

そして、4回目に最も大変な戦いに巻き込まれます。
敵のナンバー1狙撃手を狙うため、
敵のど真ん中の建物を占拠するのですが、
無事敵を撃った後で、逆に敵の兵士達に囲まれ
脱出不能に陥りります。

そして最後は味方のヘリコプターに、
自陣をミサイル攻撃するように要請します。
(敵もろとも吹っ飛ばすということです。)

そんな中、国際電話で奥さんに、
これから帰るから。といい、
奥さんが銃弾の音を聞いて、
帰れないことを悟り泣き崩れます。

その後、砂嵐が訪れ、
手に汗握る脱出作戦で幸運にも、
主人公は無事に帰還するのですが、

このシーンも臨場感がありすぎて、
主人公に生きて帰って欲しいと、
心の中から感じました。
(最近の映画で、ここまで感情移入したのは
無いと思います。)

一見、映画の演出と思いがちですが、
おそらく似たような場面で戦死した多くの
兵士がいたのだろうと思います。


映画アメリカンスナイパーは、
アメリカで上映された戦争映画としては、
最高の興行収入となっているそうです。

そして背後から敵を撃つ、スナイパーをテーマに
した映画と言うことで意見が二つにわかれて
いるそうです。

イラク戦争と言えば、
結局核開発の証拠が見つからず、
戦争を始めた理由が良く分からない状況になっています。
クリント・イーストウッド監督は、
イラク戦争に反対と言うことなのですが、
映画を観た印象では、政治的な意図は感じられません。

ただ表現されるのは、
戦争という辛い現実です。

実際の戦争に比べ何倍も薄められているとはいえ、
辛いシーンが続きます。

海軍特殊部隊でも伝説と言われ、
仮にも五体満足で帰還できた主人公でさえ、
それは奇跡であることが分かりますし、
心には障害を抱えてしまします。

結局この映画が伝えたいのは、
最後に主人公が撃たれてしまうことも含めた、
戦争の悲惨さです。
ですから反戦映画なのではないかと感じます。

映画をみてから、
なぜタイトルが「アメリカン・スナイパー
(原題も同じ American Sniper
なのか疑問でした。
これは主人公クリス・カイル氏の自伝からきている
ようです。

なんとなく、
アメリカン・ヒーロー的なものが想像されるのですが、
きっと、アメリカン・ヒーローの厳しさ・辛さを
浮き彫りにするため、こうしたタイトルにした
のだと感じました。


映画の最後のクレジットロールは無音でした。
それが、お葬式のようで印象的です。

クリント・イーストウッド監督と言えば、
父親達の星条旗硫黄島からの手紙
という名戦争映画もあります。
今回の映画は一人の主人公を通して現代戦争
のなんたるかを見せてくれます。

昔の戦争も、今の戦争も、
人間がしていることの悲惨さ。
すなわち、戦争の本質的な罪には
変わりはないのではないか。
そんな事を感じた今日の一本です。


映画『アメリカン・スナイパー』オフィシャルサイト


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