細田守監督「おおかみこどもの雨と雪」は質の良いファンタジー映画と思いました。

その昔、
私が若い頃には、洋楽が流行っておりまして、
中でもマイケル・ジャクソンはとても人気がありました。

そんな彼が亡くなった頃だったでしょうか。
小林克也さんの有名番組「ベストヒットUSA」で、
久々にスリラーのPV(プロモーションビデオ)を見ました。

昔テレビで流れていたのは、
3〜5分位の短縮版だったと思うのですが、
番組では、全編(10分程)を放映していました。

※ご参考 スリラーのPVです。
YouTube

今見ても斬新な映像ですが、
当時はCG技術が進んでいなかった時代で、
全て特殊メイクなのだそうです。


冒頭で、スリラーの話を書いたのは、
狼男に変身する話を書きたかったのです。

彼女のとデート中、
マイケルジャクソンが、彼女に指輪をあげ、
彼女が、綺麗・・とか言っている間に、
満月が出て、狼男に変身するのです。

その様子を見た彼女は悲鳴をあげ、
狼男となったマイケルジャクソンから、
走り逃げ去ります。


・・さて、映画の話に戻りまして、

舞台は東京の郊外の国立大学です。

親を失い、奨学金とアルバイトで苦労しながら
大学に通う主人公「花」は、
とある人気の無い授業で、教科書を持たずに、
しかし、真面目にノートを取る、おおかみおとこ
(名前の設定はなく、”彼”と呼ばれています。)
を見つけます。

きっと、
真面目な性格の彼に心を引かれたのでしょう。
「花」は「彼」に恋をします。


東京郊外の国立大学ということで、
歴史のある校舎が映し出されていました。

映画をみながら、一橋大学かとおもったのですが、
最後のテロップに、一橋大学の名前があったので、
たぶんそうだと思います。

一橋大学と言えば、石原東京都知事
楽天の三木谷さん、作家で元長野県知事田中康夫さん
そして、漫画家のくらたまさん(倉田真由美さん)
・・・

私も、一橋出身の知り合いが数名おりますが、
彼(女)らは、賢いだけでなく、
なんか一本スジの通った感じがあります。

そういった一橋大学生のキャラクターが主人公「花」に
反映されているのかどうかは分かりません。
しかし並々ならぬ女性です。

映画では、この後沢山出てくるのですが、
問題の殆どを自分で本を読み勉強して解決しています。
さすが高偏差値の人と思います。


「狼男は月夜の晩に変身するのではなかった」

といったセリフがあり、
綺麗な星空のもと、オオカミに変身する「彼」の様子は
それなりにインパクトはありますが、
そこはアニメなので、スリラーのPV程怖くはありません。

そして、マイケルジャクソンPVの彼女とは違い、
「彼」が狼男に変身する様子をみても動じず、
逆に結ばれて、子供(おおかみこども)が生まれます。

ゆるい人物画と、宮崎あおいさんの素敵な声に包まれ、
なんとなく、自然に映画を見てしまう訳ですが、
それが、うまいファンタージ映画ということなのだと思います。

そして、星空がとても綺麗です。
アニメで夜空を表現する場合、
普通は黒を背景色に星を白点で表現すると思うのですが、
本作では少し黄色がかった、黒までいかない
緑っぽい色をベースにしていました。

デジカメで郊外の夜空をとると、そんな感じの色に
成るのですが、なんの影響か、これまでのアニメとは
表現が変わってきた印象です。


その後「花」は二人の子供を、
自分の自宅でしかも、自力出産します。

オオカミの子供が生まれたらどうしよう。
と思い病院に行けなかった。
・・と表現されます。

普通の大人なら、
やっぱり病院に行くとかすると思うのですが、
20歳前後の若者の私なら、
やっぱり「花」同じように、一人でどうにかしよう。
と考えたかもしれません。

私も大人になって、専門家に相談する
ということを知ったのですが、
私の場合、それは30歳を過ぎてからのことでした。


そしてその後、「彼」は突然亡くなってしまいます。
(映画的には、案外早いです。)
「花」一人で二人の「おおかみこども」を育てます。

都会では生活しにくいからといい、
(おそらく)彼の生まれ故郷の山里に借家を借ります。

昔ながらの農家の、ほぼ廃屋といった家で、
朽ちた床や雨漏りを自分で直し、床を磨き、ガラスを磨き・・
そして、廃屋は見事によみがえります。

映画の世界なので、数分でよみがえるわけですが、
ほぼお化け屋敷を、二十歳ぐらいの女性が修復する訳です。
現実的にはどうかと思うのですが、、、

ただ、親の世代をみたりすると、男女を問わず昔は、
そういった気持ちの強い人達がいたように思います。

余談ですが、
修繕後の「磨りガラス」の様子など、
綺麗な絵として表現されるのですが、
もう、あのようなガラスを作る技術は日本に無いのだ
そうです。

また檜風呂に入るシーンが出てきますが、
おそらく上下水道は無いでしょうから、
トイレはどうなのでしょう・・・。
(ここでは書かないことにしましょう。)

私など、田舎出身ですから想像出来るわけですが。
都会育ちの人にはむりなんじゃないかな?

映画中にも出てきますが、
田舎暮らしを初め定着できるのは、
ほんの一握りと言います。

そんななか、主人公は地域の人に受け入れられ、
助けられ生きていくことが出来ました。

「韮崎のおじいちゃん」から作り方を教えてもらった
ジャガイモが収穫でき、近所にお裾分けすると、
その何倍もの大根やお米を頂戴します。
そういった世界も確かに田舎にはあります。
懐かしいです。

ジャガイモは、イノシシなど、山の生き物たちが
収穫前に食べてしまうのですが、
「花」の家には二人のオオカミ子供が追い出すので、
ジャガイモが育った訳です。
その説明はありませんでした。


初雪の朝大騒ぎする様子は、
絵的には綺麗ですが、マイナス10度を超える
であろう寒さを、心の中まで浸透している私には、
ちょっと?とおもったシーンでした。

ただ、細かな話を指摘しだすとキリは無いのですが、
しかし、良く調べて作られているように思います。


そうこうして、子供達は小学校に通うようになります。

姉の「雪」はおてんばで元気全開。
弟の「雨」は内気で静か。

そんな対比を表現しつつ、
二人は成長し、

姉の「雪」は周りの女の子を見て、
女性として生きることを意識し、

弱々しかった弟「雨」は自然や山の世界に興味を持ち、
麓の山の主である「きつね」を師匠として、
自らを鍛えていきます。

「雨」は、何時の頃から姉の「雪」を超える強さを備え、
兄弟げんかのシーンで、「雪」が勝つことで、
男の子と女の子の違いを表現します。

映画では、二人がそれぞれの道を見つけ、
自ら歩き出すまでを描いています。


大変美しい背景のなかで、適当な感じの人物表現。
「雪」の笑い方など、「ぽにょ」を思わせるような
典型的な日本アニメ。

宮崎風というかジブリ風というか、
そんな印象も受けかねないと感じた本作ですが、
私は、このような表現方法も一つのジャンル
で良いのではないかと感じます。

また、先日「へルタースケルター」でも書きましたが、
実在のお店や、車などがリアルに表現されていました。

映画出「花」が乗っていた車は、
少し古い、スズキジムニーと思いますが、
こういった表現も次代の流れなのでしょうか。

声優さんは、「花」演じる宮崎あおいさん、
「彼」演じる大沢たかおさんは上映前に知って
いたのですが、
一番良かったのは、もちろん
「韮崎のおじいちゃん」を演じる菅原文太さんでした。
メチャクチャ味がありました。


監督の細田守さんは私と似たような年
なのですが、良い仕事をしているなぁ〜。
とうらやましく思いました。

インタビューを読むと、同世代の子育ての
様子をみて、本作を考えた。といったことが
書かれてあります。

きっと私と同じように、マイケルのPVを
みたでしょうし(きっと本作でも影響を
受けているはず)、プロフィールを読むかぎり
独身っぽいので、頑張って頂きたいと感じます。

主人公「花」の19歳から32歳までの様子を
描くこの映画は、子育ての母親の気持ちを
描いている映画ですが、

思うのは、映画で「彼」が突然亡くなっても、
力強く生きていく女子にしてみれば、
男は大したものではないのかも知れません。

年をとっても、このようなファンタジーの世界に
浸れるのは、なかなか幸せな時間の使い方では
無いかと感じました。


↑映画URL 映画「おおかみこどもの雨と雪」- キャスト


追伸)2015年1月15日
 この映画に関するブログを発見しました。
 女子の見方が男と大きく違っているように思います。
 映画は非現実的で、男が思うファンタジー
 だから女子は社会進出できない。
 というあたり、一考の価値有りです。
 『おおかみこどもの雨と雪』女性の社会進出に立ちはだかる大きな障害は「理想の母性」か? - wezzy|ウェジー



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