奥山真司著「世界を変えたいなら一度"武器"を捨ててしまおう」この本はかなりお勧めです。

尖閣諸島を巡って日中関係が騒がしくなっています。
私の勤め先でも、
北京の支店が休みとなり、
現地社員は自宅待機とのことでした。

このまま問題が長引けば、
社会生活にも影響が出てきそうです。

私はテレビや新聞を見ないので、
普通の人より情報に疎いと思うのですが、
それでも、この問題はあまり気分が良くありません。

ただ、それは支那(china)の人達も同様、
お互い様かもしれません。

国と国の仲が悪くなるプロセスを、
リアルタイムで感じ取っている訳ですが、

もしかしたら、
何十年か前に戦争を始めたときも、
同じような雰囲気だったかも知らない。
そんな事を想像すると、
お互い様では済まず、ゾッとします。


さて、
本日ご紹介するのは、奥山真司さん著

「世界を変えたいなら一度"武器"を捨ててしまおう」

です。

タイトルに”武器”という言葉が使われますので、
”軍事関連”や”国際政治”の本かと思って
購入してしまったのですが、
内容は少し違っていました。

本書の内容を超簡単に要約すると、

広義の戦いに勝つためには、
”戦略”という上位の概念が必要で、
その下の概念である、”戦術(作戦)”や
”技術”だけではトータルで戦いに勝つことが出来ない。
という話です。

例えば、
零戦戦艦大和の性能(つまり技術力)が
たとえ(当時)世界一だったとしても、
真珠湾攻撃が(仮に)大成功だったとしても、
日本は戦争に負けたわけです。


そして、筆者が説く重要なポイントは、
現在の日本で、使われる”戦略”という言葉は、
多くの場合誤った使い方で、

正しくは”戦術”が正しいという指摘です。

つまり”ある戦い”(ビジネスの場合得てして
営業や販促の局面です)を勝つための作戦や
方法論を超えていないと云うのです。


日本はこの"戦略”を考えることが苦手です。

”戦略”は何かをコントロールしようとするときに
生まれます。
古くから西洋諸国では、外国を攻めて勝てば、
敵国の人達を捕虜を奴隷にするという歴史がありました。

”マネジメント”という最近流行のドラッカーの言葉も、
古くは奴隷を管理して、生産性を最大にするという
ところから始まっています。

一方で日本は、
未だに自然の驚異にさらされながら、
自然を恐れ多いものとして、堪え忍ぶことで生きています。

そのためか、未だに国民性として、
「悪い政府が出来ても、いつかお上も変わる、
それまで頑張ろう」

そんなみ考えです。


つまり諸外国では、
自分の都合に応じてルールを変えたり、
コントロールしようとするのに対して、

日本は決められたルールを頑なに守ろうとします。

例えば外国では、台風の進路を曲げようとか
そういったことを真剣に考えます。
(そういえば、北京オリンピックの時も、
雨が降らないように、天気をコントロール
しようとした話が話題となりました。)

また、ヨーロッパ勢が有利と成るように、
オリンピックのスキーのジャンプで
日本人に不利となるようなルール変更を
したことは記憶に新しいです。


そしてビジネス面で象徴的な出来事は、
現在のApple繁栄です。

有名な話ですが、
AppleはiTuneの登場によって、
音楽ビジネスにおけるCD(レコード)という
物品販売という従来のビジネスのルールを、

ネットを通じ目に見えないデータを販売する。
というルールに変えることに成功しました。

Appleの技術面を見ると、
iPodが販売されたとき、新潟県燕市で研磨
加工された、綺麗な金属カバーが話題になりました。

液晶パネルやモーターなど、
現在でも、Apple製品の多くは日本の
技術で作られています。

一方、Sonyウォークマンは、
大きさや音質の良さなど、技術を売り物にしていますが、
その時既にビジネスのルールは変わっていたのでした。


日本は技術が強いので大丈夫。
至る所で耳にする言葉ですが、

国際政治の「戦略」を専門とする著者は、
技術一辺倒で、やがて沈みゆくこの国を例に取り、

読者が日本と一緒に沈まないための方法として、
「一度"武器"を捨ててしまおう」
と説いています。

武器というのは、個々人が持つ”技術(スキル)”を指します。

実りある人生を生きるには、一度”武器”を捨て、
その上位概念である、人生の”戦術”や”戦略”を
考えてみること。

これが本書のメインメッセージで、
この話を読むだけでも本書は十分に
価値があると思います。


そして、”戦略”を作る際のポイントは、
「順次戦略」と「累積戦略」の2種類を組み合わせる
事が大切と筆者は説きます。

「順次戦略」と「累積戦略」の2つは、
”戦略”を学問的に分けたとき、どちらかに含まれる
最小単位です。

「順次戦略」は数値目標や到達目標を掲げていく方法で、
多くの自己啓発本/成功本に書かれている、
目標を立てなさい。そして紙に書きなさい。
というやりかたです。

「累積戦略」は毎日コツコツと何かを行う方法で、
毎日素振りをするとか、毎朝早起きして勉強する。
というやりかたです。

従来の日本人が得意としていたのは「累積戦略」ですが、
(なんとなく、日本人の美意識とも合致しますよね。)
最近欧米の考え方が入ってきて、
ビジネス本の世界では「累積戦略」が多く紹介されています。

この”戦略”を考える際は、組み合わせることが大切です。


戦略の上に位置する最上位の概念は、
この国はどうあるべきかといった歴史観や世界観です。

著者は、留学先のカナダで、世界各国の留学生に囲まれ
歴史認識について、沢山の議論をふっかけられます。
その時は何も答えられずに、大いに困惑した経験を持ちました。

日本人は思想や主義主張を何も持たない。

そのように他国の留学生に思われてしまうのです。
彼らは留学を終え母国に戻れば、エリートとして政治や
経済の表舞台に立ちます。

そしてその時彼らの脳裏に思い浮かぶのは、
留学先で見た、アイデンティティーの無い日本人なのです。


日本人をバカにするための、
戦後教育などと言う人もいる位ですが、

確かに、学校教育での日本の歴史と言えば、
せいぜい江戸時代位までです。
明治以降は殆どその認識もなく、
あるのは、先の戦争での自虐的歴史感です。

正しい歴史観や世界観を持たないのは、
著者だけでは無いと思うのでが、
この話を読んだときは、大いに国益を損する
ゆゆしき問題と感じました。


さて、最初に書いた日中間の問題がこの先どうなるか
私には全く分かりませんが、

個人として、何が起きても、
したたかに生きていきたいものだと思います。
そのためには、本書の示す”戦略”を考えることが大切です。

本書は、話が発散気味だったり、もう一歩続きが
世みたい。といった部分が多かったようにも
感じますが、

しかし、この本からは、沢山の気づきも得られます。
是非多くの人に読んで頂きたい、今日の一冊です。



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