太宰治著「ヴィヨンの妻 」をよみ、こんなダメな主人公は今時生きていけないと感じました。

これまで3回以上読んだ本は、
高校の日本史の教科書の他には、

太宰治の「人間失格」です。

高校生の頃に購入した「人間失格」の文庫本は、

その後の何度かの引っ越しにも耐え、
今も本棚の何処かに・・・ある筈です。汗)

昔から小説を沢山読む方では無いので、
珍しいのですが、

この小説だけは繰り返し読んだ。

そんな感じです。

その太宰治玉川上水に入水自殺をしたのは、
彼が38歳の時と云います。

私個人的には、
このあいだ坂本龍馬の歳を越えたかと思うと、
いつのまにか太宰治の歳も越えてしまいました。

時が経つのは早いものですが、
どうりで2012年も今日でお仕舞いな訳です。


・・という訳で、本日は太宰治さん著の、

ヴィヨンの妻

をご紹介します。

太宰治はもちろん知っていますが、
この時期に何故この小説を購入したのか不明です。

いつしかアマゾンの欲しい物リストに名を連ね、
単行本という安さも手伝って購入に至りました。

きっと
「ヴィヨン」という謎な言葉に組み合わされた、
「妻 」という更に謎めく言葉の魔力(?)
に違い有りません。

なお「ヴィヨン」については諸説有るようですが、
Wikiにある15世紀のフランスの詩人である、
フランソワ・ヴィヨン」に自分を重ねた説を
ココでは採用したいと思います。

本書を読むに当たって、
その内容は全く知りませんでした。

目次が少ないのですが、小説だからこんなもん。
・・と軽くスキップし、

 ヴィヨンの妻 (もちろん縦書き)

と書かれた中表紙が現れ、
続いて、

 親友交歓

と書かれた中表紙が現れます。

てっきり「ヴィヨンの妻 」の
一章目が「親友交歓」なんだ、
と思って読み進めるのですが、
どうも内容が「妻」のイメージと合いません。

おかしいと思ってよくよく確認すると、
代表作「ヴィヨンの妻 」を冠小説とした
短編集ということでした。

そんなわけで、以下簡単に内容を要約します。
※印は、私のコメントです。


『親友交歓』
 疎開した主人公の元に、
 突然親友を名乗る男が訪れ、
 酒を飲んで適当なことを云って帰って行く話。
 
 ※こんな迷惑の人は、特に田舎には居そうな気がします。
  小説の中ではユーモアなほうと思います。


トカトントン
 なにかあると、終戦の日に聞いた金槌の
 トカトントンという音が聞こえてくると云う
 男の冴えない身の上話。
 
 ※終戦後の検閲等で削除されてしまった箇所が
  相当あるという話です。
  ちょっと意味不明な感じでした。


『父』
 子供の具合が悪くお米の配給に並べないので、
 今日だけは留守番をお願いします。
 ・・と、涙目の妻に懇願され、承諾するも、
 飲み屋の女が誘いに来て、遊びに行ってしまう
 ダメ亭主の話。

 ※途中で行列に並ぶ母子と目が合う当たりが秀逸。


『母』
 旅館をやっているという知人に誘われ、
 汽車で3〜4時間、海沿いの街に短い旅をする。
 料理を運んでくれた女中に”何か”を感じつつも、
 知人は知らないというので、
 飲んだくれて寝てしまうのだが、
 夜中に目が覚めると、隣から話声が聞こえてくる。
 主人公の予想通り、女中さんは夜の女だった。

 ※この小説もユーモアのつもりなんでしょう。


ヴィヨンの妻
 飲み過ぎてお金が無くなってついには、
 いきつけの飲み屋の金に手を出してしまった
 主人公の妻の物語。
 根拠はないが、再び旦那が飲み屋にくると察し、
 飲み屋で仕事を始めるのですが、
 綺麗で実家のおでんやを手伝っていた経験もあり、
 人気者になっていくというお話。<長いので中略>

 ※冷静にストーリーを読むと、かなり暗いが、
  全体のトーンは妙なすがすがしさがある。


『おさん』
 戦争で自宅が罹災し家族全員が住めなくなり、
 旦那を残し、妻子は一時的に疎開した。
 戦争が終わり妻子が自宅に戻ってみると、
 旦那の会社は罹災して倒産し後片付けを
 しているが、様子がへん。
 どうやら留守の間に不倫をしたらしい。
 旦那は悩んだあげく不倫相手と心中してしまう。

 ※最後に妻は、旦那の心中が、迷惑で馬鹿馬鹿しい
  と閉じているところが、印象的。


『家庭の幸福』
 当時高級品のラジオの購入をめぐり、
 主人公が、役人を主役とするストーリーを
 想像する。(←すこし違っているかも。。)
 最後は定時きっかりに出生届けと出そうと
 やってきた女性に対し、
 時間ですから明日にしてくださいと退け、
 窓口を閉じる。
 女性はその後玉川上水で自殺するも、
 主人公にとっては関係ないと締めくくる。

 ※最初意味不明で少し間違えているかもしれません。
  役人のダメ具合とエンディングが不気味な作品です。


『桜桃』
 育児が大変な奥さんと、家庭のことは
 全く出来ない主人公との夫婦げんかの話。
 主人公もそれなりに子供育てを心配しているが、
 奥さんに「人を雇え」というのがギリギリで、
 ケンカした後は給料袋を持って外に飲みに行き
 今日は泊まると。飲み屋の女性に豪語する。
 最後に桜桃を食べ種を出しながら、
 子供より、親(自分が大事)と自分に言い聞かせる。

 ※このダメ具合はどうにもコメントのしようがありません。

 桜桃とかいて、”おうとう”と読みます。
 そういえば、昔”おうとう”という言葉を良く聞きました。
 サクランボのことです。

 参考URL
 桜桃(ユスラウメ)


最近この手の小説から遠ざかっているせいか、
太宰のこの文体を読むのはちょっと辛い感じでした。

ただ今回ブログを書くに当たり軽く2度読みしたのですが、
1回目よりはちょっと頭に入りやすく、
慣れは有るなぁと感じます。

この短編集は、やたらとダメ亭主が出てきたり、
自殺が出てくるのですが、
今時こんなダメ亭主が生きていけるはずもなく、
また不倫で心中する人なども居ないと思います。

こんな時代もあったのか?
・・とそんな印象です。


最後に亀井勝一郎氏の解説があり、
普通に読みやすいので、
てっきり今時の方が書かれたのかと思いきや、
なんと昭和25年12月記とあります。

こちらの文章は、今から60年以上前の物でも、
現代の文体や意見に大きな違いが無いことが驚きです。

ヴィヨンの妻 」に記載される一連の短編小説では、
主人公の人物像や家庭像が、
太宰治そのものでは無いかと思わせるような内容、
があるだけでなく、
玉川上水で自殺」といった単語まで登場します。

しかし解説によると、
それは、必ずしも太宰治の家庭ではなく、
彼の描写、筆致の上手さである。とあります。

文学的なことは、全く分からないので、
亀井勝一郎氏の解説を信じたいと思いますが、

本書を読むに当たり、この解説は、
有り難いと思いました。

ビジネスマンたる物ビジネス本ばかり読んでいては
いけないそうですので、

いずれ残りの太宰治主要作品も読んで、
ブログにコメントをしてみたいと思います。



 
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