橘玲著「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」に紹介される内容は、知って良かった点が多かったです。

本日は橘玲さん著の

「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」

をご紹介します。

橘玲さんの本はたまに購読しチェックしているのですが、
衝撃的なタイトルの本書を外すことは出来ませんでした。

ただ一つ問題があって、
橘玲さんの本は、内容が濃いので
パパッと読んで書評を書くには相当向きません。

じっくりと読む必要があるのですが、

私の机の右手にはそういった本がどんどん溜まってきて、
積ん読本の山の中に、橘玲さんの本が、
まだ2冊も埋もれている状況です。汗)


さて本書は冒頭に、
2010年におきた勝間勝代さんと香山リカさんの
バトルの掘り下げから議論を始めています。

(本書は震災前の2010年9月末の出版であることを
冒頭において読んで頂けたらと思います。)

橘玲さん自身、お二人には特に面識が無いと言うことで、
他人のふんどしか?
・・みたいな感想を持ち少し引きました。

ご存じのように、
この女傑二人のバトルは、

ひたすらスキルアップをして道を開いていく「カツマー」派と、
努力をしても心が折れるのでマイペースの「カヤマー」派
に分かれます。

橘玲さんは、二人の議論がかみ合っていない点や、
どちらかと云えば、カツマー派であることを書きながら、

人間の能力は努力や教育だけではどうにもならない、
先天的なものがあるという話を、
一卵性双生児の研究結果などを引き合いに説明します。

 努力をしてスキルアップすべき。

というテーゼ(方針)は殆どのビジネス書の基本
と成っているのですが、

 そんな事をしても効果が無い(効果が少ない)。
 だから意味がない。

というアンチテーゼつまり反対の考え方を
展開するのです。
(カヤマー派の意見と似ていますが、理由が違います。)

最近、頑張らない系のテーマの本も出ているようですが、
心が折れるという以外の、
ある程度照明されている意見を読んだ事は私的には新鮮で、
それだけでも、この本の元をとったと思いました。

しかし本書を読み進めていくと、
話はココで終わっておらず、
脳や我々人間の進化と照らし合わせ、
もっと不都合な現実を突きつけます。

例えば、
人間の能力は、親の教育からは多くの影響を受けず、
むしろ周囲の友達から影響を受けるといった点です。

この端的な例は、
耳が聞こえない(しゃべれない)親の
子供は普通にしゃべれることです。

人間は古くから、社会的に関係しあいながら
成長する生き物で、
子供の場合は、自分と年齢が近い周囲の子供の
影響を受け成長するのです。

ここから得られるポイントは、
家庭での幼児教育よりも、
良い子供が集まる幼稚園や小学校に入れる事に
努力した方が良いという結論です。

お受験という単語は昔から有りますが、
こういった人間の学習メカニズムから
説明している事例はあまり聞いたことが無く、

何歳から英語を習わせると良い。
そんな小手先の技術論争が世の中を占めている
ように感じられます。
(私に子供がいないからでしょうか?)

子供は、
自分が属するコミュニティーに照らし合わせ、
一番得意になりそうなことを見つけます。
そしてそれがどんどん好きになります。
この循環が子供のある能力を育てるわけです。

自分の好きなことは、二十歳前には既にやっている。

とは様々な成功本やセミナー講師が言うことですが、
つまり、
このようなロジックがあるということまで、
語られるケースは今回初めてでした。

同じ子供でも属するコミュニティーが違えば、
体育が好きになったり、算数が好きになったり
するということです。


他にも印象的なのは、
「自分の好きを仕事にしよう」という
テーマで紹介されるバイク便ライダーの話です。

実は就職した頃、あまりにも仕事が辛いので
会社を辞めてバイク便のライダーになろうか?
・・等と、考えたことがあります。

その割りに、その過酷な事実を本書を読むまで
知らなかったのですが、

バイク便のライダーの場合、

自前のバイク、自前のガソリン代、
自前の運転技術、

好きなバイクで仕事をして、
月に100万円稼ぐミリオンライダーを
目指すのですが、

事故や排気ガスの影響で身体をこわす人が
相当数いるようなのです。

彼らは好きを仕事にしているわけですし、
会社は若本達から何かを搾取している訳でも
ありません。

似たような話は、芸事やスポーツ、
アニメなどの人気業種で、古くから聞く話です。

好きを仕事にして成功するのは、
ほんの一握りであり、

子供がそちらの方向に進もうとすると、
多くの大人は反対します。

それでも成功本には、
「好きを仕事にしないと成功できない」
と書かれており、

実際に嫌いなことでは、
仕事に身が入りません。

自分探しをして食いっぱぐれるか、
イヤな仕事をして歳を取るかの2択しか
無いようにも思えます。

本書ではこのように、世の中一般の標準的な
考え方と照らし合わせて、
都合悪そうな考え方を、
タイトルにある「残酷な世界」と表現して、
全体の263ページ中の、251ページを裂いて
説明しています。

そして残りの9ページに、

「生き延びるたったひとつの方法」

が書かれています。

ヒントと成るのは本書の帯にある、

「伽藍をすててバラ−ルに迎え!」
「恐竜の尻尾のなかに頭を探せ!」

の2つのコピーです。

「伽藍」は既存の社会の仕組みを差し、
「バザール」は、グローバル市場をさします。
これはインターネットと考えても良いかもしれません。

「恐竜」は、ロングテール(の図)を指し、
「尾びれの中の頭」とは、ニッチ市場における1位のことです。

これを私なりに解釈すると、

 自分の得意・好きな分野を決めて一番になること。 
 そして儲けの仕組みは自らが構築すること。

もっと別の言葉を使うと、

 ランチェスター戦略を用いたて
 ビジネスモデルを構築する。

・・となるのですが、

それが出来たら苦労しませんぜ。
と云いたくなるような結論でもあろうかと思います。
(アマゾンの書評でも、似たような事を
書いている人がおりましたが・・。
この点は少し物足りない感じがしました。

だからといって、
本書に、価格1,500円の値段が無いかと云えば、
10倍も100倍もの価値はあると思います。

新しいビジネスモデルを作り成功することは、
誰がやっても難しい訳で、
それを書いていないから悪い本というのは、
成功の結果だけ売ってください。

と言っているのと同じだと思います。
(もちろん、意見としてはアリと思いますが。)


ここで初めの、カツマーVSカヤマーの議論に戻れば、

私はどちらかと言えばカツマーなのですが、
はやり本を読んで勉強した方が、

たとえ頭は良くならなず、
たとえスキルアップが出来なかったとしても、

より幸せな選択が出来るような気がします。

こんな感じで、本書はどちらかと云えば、
雑学的ナレッジを蓄えるための本と感じました。

ただ内容が若干衝撃的なので、
内容を知らない人には、特にお勧めしたい
今日の一冊です。



 
★★★ ツィッターやってます! ★★★

 https://twitter.com/h6takahashi