「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」は良いお話で、TV版を観ていない方にもお勧めです。

一昨年の秋に、
友人が一泊二日の小旅行を企画してくれました。

宿の手配など面倒なことを全て彼がやってくれ、
私は彼の運転する車に乗っているだけで良い
というのです。

なんて楽ちんなツアーかと思まして、
即参加の返事をしました。

そして、何処に行くかと聞けば、

秩父

・・と言うわけです。

秩父」に何があるのだろう?
旅行先としてはあまり耳にしない気がします。

何の知識もない私が、
現地に行って知ったことは、

近くをSLが走り、
とあるアニメの舞台でもあり、

オタクな方々にとって立派な観光地
(というか聖地ともいう)ということでした。

つまり、
アニメの聖地に行きたい彼に、
付き合うためのツアーだったのです。(爆)

※今日珍しく写真付きです。

↑当時は至る処にこのようなポスターが張ってました。


・・という訳で本日は、秩父を舞台にしたアニメ映画

 「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。

をご紹介します。


8月31日公開のこの超人気アニメ映画を、
最初の日曜日である、
9月1日に見たのは、ちょっとだけ訳があります。

そろそろ公開が終わりそうな、
ある映画を観るため朝一で映画館に行ったところ、
(だって朝しかやってない。)

あろうことか、
その映画が満席(正確にはラスト1枚)
になってしまったのです。

年配向けの映画ではあったのですが、
朝から満席。とは予想外です。

自販機で券が選べず、
不思議に思い係の人に訊ねたところ、
最前列の1枚だけ残っているというのです。

通常私は深夜のレイトショーで
映画をみるのですが、

いつも、貸し切りか、!!

・・という位のお客さんしかおりません。

ですから、
いつも一番良い席で映画をみるのですが、
(そのために、わざわざ深夜行くのですが、)
さすがに最前列で映画をみるのは、
どうかと思い、

同時刻帯でやっている、
この映画を見ることにしました。

まだ席に余裕がありそうですし、
なによりアニメオタクの方々が朝一で
映画を観るはずがありません。(笑)

きっと空いているに違い有りません。
・・と勝手な想像をしました。

しかし、期待もハズれ、
やはり超人気アニメ&日曜日と云うことで、
良い席は取れず、
端っこのほうでこの映画を観ることになりました。

ちなみに、
シネコンで一番大きなスクリーンです。

・・と、すいません。
どうでもよい前置きが長くなりました。


私は映画、

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。
※以下「あの花」と略します。

を見るにあたり、
前提知識は殆どありません。


秩父旅行で訪れた現地の記憶と、
現地に貼られるポスターの登場人物、
なぜかヒロインの髪が白く、
主人公が「地底人」という文字の、
プリントのTシャツを着ていることです。


↑「赤いTシャツの人が地底人です。ちょっと見にくいですね。」

その他の知識は、
旅の道中、友人に教えてもらった
ヒロイン「めんま」が幽霊であることです。

そのときは「めんま」ってラーメンか、とか、
名前が気になって仕方なかったのですが、

今にして思えば、名前やTシャツの文字はどうでもよく、
幽霊である情報が大事でした。

というのは、
ヒロインがお化けと知らずに、映画をみていたら、
途中まで意味不明だった可能性があった訳です。

もちろんお客さんの殆どは、
テレビ版でみて、もう一度映画版を、
という方々と思いますので、
その点は問題無いと思いますが、

そういった方々は逆に、
テレビ版からの省略がたくさんあり、
物足りなく感じるのだと思います。


映画は主人公がヒロインを背負い、
彼らの秘密基地に走るシーンから始まります。

有名な秩父橋(旧)を走っていくのですが、
その橋を実際に渡った私の感覚は、

あり得ない。

・・です。

橋は割と長く、しかも周辺には大したもの
が無いのでかなりの距離を走らねば
ならないのです。


↑映画でも、橋の上の奥に工場(コンクリート工場?)が
 あり感動しました。


しかし、
よく旅行などで行ったことがある観光地が
テレビで映し出されると、
食い入るように見てしまったり、
一緒に行った家族らと、
会話が弾んだりするのですが、

映画を観ながら、
行ったことがある場所が映画に
映し出されるというのは、
良いモノだと感じました。


↑橋の入り口です。欄干の上に上がれる人は・・・、きっと、おばけでしょう。


↑橋に行くと、もちろんコスプレの方々が・・

このアニメもそうですが、
最近のアニメの背景表現は、
写真のようにリアルに表現されており、
実に良く感情移入できるのです。

そして、
今回はじめてヒロインの声を聴きました。

なんちゅーアニメ声というか、
映画館の音響的にもかなり甲高く、
最初耳障りな感すらありました。

それも段々と慣れてくるのですが、
あとから思えば、

子供の頃に死んでしまったという、
幼さの表現であったと思います。

ヒロイン「めんま」は、
いかにも萌え系キャラクタですし、
高校性が主人公の映画ですから、

いい歳したアラフォー男子が見るアニメか。
・・と旅行中は友人を小馬鹿にしていた
のですが、実際アニメをみてみると、
実に深い話しでした。


幽霊の映画といえば、
「ゴースト」や「シックスセンス」などが有名です。

実はこの夏に「シックスセンス」のDVD
を見まして、付属する監督の解説も見ました。

シックスセンス」の特徴は、
最後に大どんでん返しがあることですが、

解説によると、
ストーリを知ったあと、二度三度、
映画を見直しても、
場面が破綻しないことを前提に、
沢山のルール、

たとえば、お化けは、お化けが見える人
としか会話しないなど。

を作ってストーリーを構成したとのことでした。

こうした、知識を持ちながら、
「あの花」をみると、
制作側は「シックスセンス」を含め、
幽霊映画を研究して、作品を作ったのだと感じました。


映画を観て分かったことは、
主人公「じんたん(宿海 仁太)」は、
いつも「地底人」のTシャツを着ている訳では
無いと言うことでした。
(まったく重要な情報ではありませんが・・)

映画中では、
レンタル屋さんでバイトをするシーンが多く
フリーターかと思ったのですが、
映画の後半に、進級できるの。
と友人に聞かれるセリフがあります。

夏休みのバイトか。
・・と思い直すのですが、映画を観た後でWikiを見ると、
高校受験に失敗した設定になっています。

そのほか、ヒロイン「めんま(本間 芽衣子)」
の髪が白いのは、ロシア人の母親の血を引く
ためなのだそうですが、
私はてっきり幽霊なので、
白くしているのかと思っていました。

TV版を見ている人であれば、
私は映画を観た後、
Wikiをみて「そうなんだ」と思う点が多々あり、

映画「あの花」として考えると、
すこし説明的なストーリーやセリフがあっても
良かったのかな。と感じました。


映画のストーリは、
小学生の頃、友達がいない「めんま」を、
「じんたん」が仲間に誘うところからはじまります。

超平和バスターズ」というグループ名が、
彼らのグループの名前で、
橋を渡った山の上のほうにある小屋を片づけ
秘密基地としています。


↑もちろん山の上にも昇って散策してみましたが・・
 秘密基地が有るはずもなく。。

彼らに限らず、
小学校も高学年になると、
誰が好きとか嫌いという話題になるのですが、
彼ら友達グループでも、

めんま」と「じんたん」はお互いに好きで、
それをからかう男性陣と、
「じんたん」が好きな女性(あなる)がいます。

好きなら好きと白状しろ。
と男性陣にからかわれ「きらい」と答えたあと、
秘密基地を走って出て行く「じんたん」ですが、
映画ではその後の様子を全く表現していません。


時折「川に浮かぶ靴」の絵が出てくるので、
きっと「めんま」が「じんたん」の後を追い、
川に落ちて亡くなってしまったのだと思いました。

それから、
数年たち「超平和バスターズ」の仲間も
疎遠になったころ、
めんま」が幽霊として
「じんたん」の前に現れるのです。

映画をみていると、
好きだった「じんたん」が、
引きこもってゲームばかりする不甲斐ない
人生を送っているところに「めんま」が現れ、
彼が立ち直っていくような、

幽霊と人間のはかない
恋愛ストーリを想像するのですが、

実は「めんま」が合いたいのは、
「じんたん」だけではなく、
超平和バスターズ」の仲間全員なのです。

「ゴースト」や「シックスセンス」は、
幽霊と主人公の二人が中心の物語ですが、
「あの花」はあくまで「仲間」に主題が置かれます。

二人の関係に関しては、
TV版を映画化して省略されて都合もあるのだと
思いますが、

めんま」がお化けとなって現れた本当の理由は、
彼女が「じんたん」の母との約束だったことなど、
人と人との繋がりや「和」を表現している印象を
持ちました。

日本人がお化け映画を作ると、
個人ではなく、集団になってしまうのかな。
と少し感じました。


彼らは「めんま」が亡くなったあの日から、
様々な悩みを抱え生きてきました。

めんま」を恋敵と思う気持ちや、
めんま」が死んだのは自分のせいかもしれない。

と思う気持ち。。

めんま」が成仏できずにお化けとして現れるなら、
あの時の恨みや嫉妬がある、自分に違いない。
そんな事を思います。


↑「めんま」が成仏するように、
 (確かメッセージ入りの)巨大なロケット花火を
  上げるのですが、地元の有名なお祭りでした。

 

そういったところに共感するのですが、

この映画が共感を呼ぶ一つの理由は、
こういった悩みや感情は、歳を取った私でも、
つまり幅広い年代で共感できるということです。

先日「一瞬の後ろめたさも許さない」が日本の文化
であることを書きましたが、
この映画には多くの人が持つであろう、
ある種の罪の意識が表現されていると感じました。

また高校性の年代にしては、
洋服などの雰囲気やセリフが妙に大人なのですが、
そんな点も、
ファン年代を広げるための、製作側の意図かも
知れません。

(個人的には、
めんま」より「あなる」のほうが可愛いし・・。)


映画では幽霊である「めんま」を、
「じんたん」以外の仲間は見ることができません。
そういった意味では、彼はシックスセンスに登場する
少年のようです。

仲間たちは、「めんま」を見ることが出来ず、
彼らの苦悩も心を動かします。

そんな仲間達の救いとなるは、
めんま」は辛うじて仲間に手紙を書くことが
できることです。

幽霊映画のルールを一つ破ることが、
シナリオ的に大きな効果をもたらします。

ただ結局「めんま」が成仏する直前に、
仲間全員が「めんま」を見ることができるのですが、

個人的には、「手紙」だけで十分だったと
思ったりもします。

しかし、そういったロジックとは別に、
つい感動して涙が出てくる場面でもあります。

・・という訳で、
夏も終わりですが、是非とも見てみたい、
お化け映画です。
初めて見る方でも、ちょっと泣けます。


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