渡辺謙主演「硫黄島からの手紙」アメリカ人が作ったとは思えない良質の映画です。

今日は終戦の日にテレビ放映されました、
硫黄島からの手紙」をご紹介します。

先の戦争の最大の激戦地のひとつ硫黄島の戦いを、
日本の視点で、クリント・イーストウッド監督が
描いた映画です。

当初監督は日本人でと考えていたそうですが、
「資料を集める際に日本軍兵士もアメリカ軍兵士と
変わらない事がわかったというのがその理由である。」
Wikiより引用
とのことで、

全部日本語のこの映画を、イーストウッド監督が
指揮しました。
日本人が主人公で日本語を、外国人が監督をする
ケースは初めてのようです。

なおキャスティングは、
主役の栗林中将演じる渡辺謙さんを除く全員が
オーディションで選ばれたそうです。


戦争に対して、小さい頃から興味をもっていて、
その手の映画・テレビ・本の類は良く観るのですが、
そんな私が観ても、細かな所を除けば、

(たとえば、二宮一也さん裕木奈江さん夫婦は、
裕木奈江さんが年上(14歳)過ぎないかとか、
・・最も裕木奈江さんも若く見えますが・・)

など、その程度の話しです。

同じくWikiの引用ですが、昭和史に詳しく、
数々の著書がある作家の半藤一利さんも、

「細部に間違いはあるが、日本についてよく調べている」
朝日新聞2006年12月13日)と高く評価しており・・

とのことで、概ね普通の日本人が観て違和感があるところは
少ないと思います。

ちなみに私が違和感を感じたところは、

・冒頭渡辺謙さんが載ってくる飛行機が、アメリカっぽい。
・二宮さんに召集令状がきて、裕木奈江さんがうろたえる
 シーンで、婦人会と思われる人達が、(日本語であるが)
 なんかへん。外人っぽい。
・島の形が、最初硫黄島なので、凄いと思ったが、
 途中の空襲シーンなどは何処?って感じになっている。

・・・等々あまり書いても仕方ないのですが、
本質的な話しでは無いと思いました。

実際、硫黄島の戦いでは、
司令官の栗林中将と部下や海軍との様々な確執や、
上陸時の作戦(海軍がすり鉢山から砲撃を始め、
米軍の集中砲火を浴び、早い段階で壊滅したなど)
などはあまり描かれていませんでした。

他にも、時系列がわかりにくい感じもありましたが、
映画という一定の時間内に納めるため、やむを得ない
と思います。

この映画が素晴らしいのは、
史実(と思われる)を、上手く映画化している
ところだと思います。

軍事(史実)上は重要な点も、
恐らく大胆にカットする一方、

細かな点は、
日本軍の厳しさや脱走や様子だけでなく、
脱走兵を撃ち殺すアメリカ兵を描くところや、
米軍の火炎放射器の残忍さなど

日米どちらかに偏った様子が無い点が、
日本でヒットした最大の理由なんだろうと思います。

イーストウッド監督も、「日本映画」といい、
日本人監督である、僕(イーストウッド)が作った。
発言しているようです。

アメリカでヒットさせようとしたら、
このような映画が作れる筈は無く、
アメリカ視点のもう一つの映画
父親たちの星条旗」とセットだからできた
のではないかと思います。


映画でも渡辺謙さんが家族に手紙を書くシーンが
度々でてきますが、
本当に筆まめな人だったようです。

文章の最初に必ず、
自分は元気にやっている。とあり、その次に、
ココは暑くて水もなく、ハエや蟻、蚊やアブラムシが
襲ってきて大変。と続き、
東京の暮らしについて、細かく指示を出したり、
時には子供の手紙の漢字間違いなどを指摘しします。
そして奥さんには必ず、苦労をかけた。とねぎらい、
この先も心を強く持ち頑張って欲しい。
と結ぶのです。

映画では、ハエ・アリ・蚊・アブラムシが襲って
来る様子は描かれていません。

映画でもあるとおり、硫黄島では穴を堀巡らせ、
爆撃を避け、地下からゲリラ攻撃をしたわけで、

ずっと地下にいたのかと思っていたのですが、
地下にいると身体がおかしくなるので、
外にテントを張って寝ていたようです。

手紙の様子も後で詳しく紹介したいと思いますが、
70年後の私がこの手紙を読んで、良くこんな手紙が
毎日爆撃が続く戦場から書けたものだと感心します。

爆撃の中で、常に家族を心配し、
家のすきま風の防ぎ方を、長男に指示し、
被災したときは靴が心配。と押し入れにある自分の
靴の話題を書きます。
特に最後には妻へのひとです。
(戦争中に書けるか。という気もする。)

どこか日本人離れした感もあり、
一方世界中の誰が読んでも心を動かす手紙です。

ですから、外人のイーストウッド監督がこの映画を
作ることになったのだと思います。


映画に戻りますが、
この映画の良いところは、役者さんが私たちの
イメージ通りの良い演技、つまり個性というか、
味を出している点だと思います。

二宮和也さんは、二宮さんらしいし、
伊原剛志さんは、相変わらずカッコ良い。
中村獅童さんは、ちょっとひと言あるスネた感じがよいですね。
・・・

監督が外人さんだったので、
日本語で指示を出さなかっためでしょうか。
この映画がヒットした一因と感じました。


映画の最後で、
二宮さんが、ミミズをとってこいと命令される
シーンがあり、とってきたミミズを水の代わりに
司令官である渡辺謙さんに差し出します。
その後食べるシーンは無かったのですが、
実際はどうだったのかと思います。
そもそも、絶海の孤島にミミズがどのように
渡っていくのか気になります。。(これは余談。)


その渡辺謙さん演じる栗林中将ですが、
映画の通り、最後は自身の階級章を外し、
敵陣に切り込みました。

このような戦いで死んだ人も、
司令官クラスになれば、後で敵方が確認するようですが、
栗林中将の亡骸は未だ確認できていません。


何故か日本人には作れないのですが、
外国人の監督が作ったことで話題となり、
それで硫黄島の戦いが有名になったのは、
良いことだと思った今日の一本です。


【ワーナー公式】映画(ブルーレイ,DVD & 4K UHD/デジタル配信)|硫黄島からの手紙