瀧澤中著「「幕末大名」失敗の研究」は、幕末の時代の流れを、著名人物の知られざる一面から学びました。

どんな国でも、
祖国の歴史や文化を学び、
愛国心を育て、

そして、外国の人達と交流するときには、
その正しい知識をもって、
すばらしさを伝えることが出来る。

真の国際人にとって当たり前の
姿ではないでしょうか。

ましてや日本は二千年以上の歴史を持つ国です。
いくら学んでも学びきれません。

最近、高校の授業で、
日本史が必修となるかも知れない。
という記事を読みました。

高校進学率の増加や日本の国際化を考えると、
日本史必修と成るのは遅すぎる位だと思います。

日本史を勉強すると、
尊皇攘夷運動が起きて、
戦争でも引き起こすのではないか?

などと思っている人達が今もいて、
反対しているのでしょうか?

最近の皇太子さんの発言ではありませんが※、
※参照URL
皇太子さま誕生日会見 海外は「歴史を正しく伝える」に着目 安倍首相の動勢と絡める | NewSphere

良いことも悪いことも含め、
正しい歴史を学ぶことが大切と思います。


・・・という訳で本日は、瀧澤中さん著

 「「幕末大名」失敗の研究」

をご紹介します。


私は小さい頃から歴史が好きで、
特に高校性の時は、
日本人は「日本史」だろう。
・・と、世界史のほうが受験で有利。
みたいな情報にも惑わされず、
社会科の選択では「日本史」を選びました。


さて、
歴史好き、特に日本史が好きな人でも、
その好きの9割は、「戦国時代」と「幕末」に
集中するのですが、
もちろん私もその一人です。

日本史の知識はたいてい、
この2つの時代から覚え、
次に源平の合戦や、日清日露戦争など、
戦争を軸に知識を広げていく訳です。

それでも高校卒業から30年も過ぎると、
殆どの知識が忘れ去れているのですが、

幕末や戦国時代に関しては、
2年か3年に一度、
大河ドラマで取り上げられるので、
知識というか、知っている登場人物が
どんどん増えていきます。

また、司馬遼太郎をはじめとする、
日本史の良質な小説が山のようにあります。
(しかも長編大作が多い。)

読み出すときりがないことを知っているので、
私はあえて歴史小説・歴史本は読まないことに
しています。
(仕事を退職したらゆっくり、歴史小説
読もうと思っているのですが・・。)


すっかり、前置きが長くなりました。
本書は、幕末大名の失敗の研究です。

本書を購入したのは「失敗の研究」という、
”失敗”という単語に興味をもったからです。

このブログでも、
幾つか失敗をテーマにした本を
ご紹介していますが、
失敗本は個人的に興味のあるテーマなのです。

内容を確認せずにアマゾンで購入したのですが、
幕末の大小様々な藩の失敗の様子を書いた
本かと思いきや、

 井伊直弼と安倍正弘、
 山内容堂坂本龍馬
 松平容保徳川慶喜
 西郷隆盛島津久光
 水戸藩長州藩

という幕末の著名人物にフォーカスし、
歴史背景やその人物の功績を説明し、
さらに現代の政治家や、対象と成る幕末の人物と
対比させ、彼らの失敗を紐解いていく内容です。

たとえば、幕末の似たような時期に、
似たような地位にあった、
井伊直弼と安倍正弘を
現代の政治家、田中角栄福田赳夫と比較しながら、
人物像や失敗を分析していきます。

最初、読みながら、
特に現代の政治家を出す必要があるのか?
と著者の知識の押し売り的な印象を持ち、
イマイチな本かな。と感じたりもしました。

しかし、読み進めていくと
幕末の著名人の知らなかった面が数々
紹介されていく毎に、
興味が入り込んでいきます。

例えば井伊直弼には、
安政の大獄という、悪いイメージがつきまといます。
しかし彼は、
心の痛みよりも論理を優先したであろう点や、
井伊直弼の知らないところで,
幕府の様々な決め事が進んでいたことなどを
解き明かされると、
井伊直弼に対するイメージが変わってくるのです。

そして少し歴史を学んだ。
という爽やかな充実感を覚えます。


最終章では水戸藩長州藩を比較します。

幕末の尊皇攘夷運動に火を付けた水戸藩からは、
華族となった人は2名しか出なかったにも関わらず、
水戸藩と同じ規模の長州藩からは、
華族が31人も出ているという謎に迫ります。

超簡単に書くと、
水戸藩の血で血を洗うような内部紛争が激しすぎて、
明治期には人材が枯渇してしまったことが原因です。
藩士が二手に分かれ、
殿様の統制も効かなくなるような内部紛争があったのです。

そして、藩内の紛争に負けた一派が、
後の桜田門外の変を起こす一派と成っていくわけです。

日本史の教科書では、
水戸藩脱藩浪士が、桜田門外で、
大老井伊直弼を暗殺した。
程度の記述しかないのですが、

私はてっきり、
水戸藩に迷惑をかけないために、
形式的に脱藩した水戸藩士が、
桜田門外の変を起こしたのかと思っていたのですが、
全く違っていたのでした。


このように、
日本史の教科書からは全く読み取れなかった
幕末の流れが、
歴史小説の読むかのごとく、
面白く読ませて頂きました。

その他、島津久光は言われるほど
悪い人物ではない。といった分析や
上司徳川慶喜に振り回された
松平容保の悲劇など、
興味深い話しが多々記載されています。


幕末の歴史好きを名乗る男子は、
結構多いのですが、
こういった本を読んで、
基礎的な時代の流れを学ぶのも、
また一興かと思った今日の一冊です。


「幕末大名」失敗の研究 (PHP文庫)

「幕末大名」失敗の研究 (PHP文庫)


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