パラマハンサ・ヨガナンダ著「あるヨギの自叙伝」を最後まで読み切れば、きっと人生に何かの影響を与えます。

トマ・ピケティ氏の「21世紀の資本」という、
分厚い本が売れていることが話題となっています。

本当に最後まで読み切ったのか?

そんな下世話な話しもネットに出ていまして、
途中で挫折した人も多いようです。

私が読んだ記事に、
最後まで読んだ人はどのような環境で読んだのか?
という質問がありました。

きちんと机に座って読んだ。
という方が多かったようです。

少し意外な答えですが、
しかし、

フランス語版で950ページ、
英語版では文字を小さくして700ページ、
日本語版でも650ページもある本なので、

混雑する通勤電車で、片手で本を読みながら
読破できるものでは無さそうです。


私も「21世紀の資本」のような、
厚い本も読んでみたいなぁ〜。
と思いつつも避けてしまいます。

それは、
こうした本を読むと、
普通の本を何冊も読めるほど時間がかかって
しまうからです。

特に未読本の山に囲まれた私にとって、
厚いページの多い本は避けて通りたい鬼門です。

ただ。
この本だけはどうしても読まずにはいられませんでした。


・・・という訳で本日は、パラマハンサ・ヨガナンダ

 「あるヨギの自助伝」

をご紹介します。


今年の1月に参加したあるセミナーで、
本書を知りました。

世の中沢山の本が紹介されているが、
どうやって選べば良いのか?
という質問に対して、

その一つの方法は、
値段の高い本から読んでみる。

という事を講師の先生が話していたのです。

さらにその本が長い間書店に並んでいるような
ベストセラーならなお良いということ。

確かに新規に出版される本は一日に200冊、
年間8万冊ともいわれますから、

参考URL
60年あまりにわたる書籍のジャンル別出版点数動向をグラフ化してみる(最新) - ガベージニュース

そうした山のような新書の中で何年間も
書店の店頭に並んでいる。
しかも値段が高い本というのは、

おそらく100%間違いのない本、
逆に考えると人生必読の一冊とも言えそうです。

セミナ講師の方は、何冊も推奨本を
紹介しているのですが、
その中で一番高い本が、
本日紹介する「あるヨギの自助伝」でした。

しかもです。!

あのスティーブ・ジョブス
自らのiPadに入れた、たった一冊の本で、
彼は二十数年来、毎年1回この本を読んでいたそうです。

Appleという会社、
そして彼の数々のアイディアから生まれた、
製品や映画はこの本を読むことによって得られた。
というのです。

セミナーの後で調べてみると、
日本語版の初版は1983年で、値段は4,500円ほどします。
(本日Amazonで調べたところ、4,536円でした。)

いまだに本屋さんに売られているというので、
それを確かめるべく、会社の近所の丸善にいきました。
そしたら確かに売られていたのです。

21世紀の資本」と同じような大きさの本です。
重いのでネットで買おうかと思ったのですが、
この場で買うことに意味を感じ、即購入しました。

最後のページをみると、524ページとあります。
21世紀の資本」よりも少ないですが、
小さいフォントで2段組。
しかも写真のページは少なく、文字だらけです。

買っては見た物の、
なかなか最初から読む気にもなれず、
スティーブ・ジョブスは本書の何処を読んだのか。
とか終わりはどうなっているのか。
そこだけ読みたい気になります。

買った日の夜に、目次を見て、
気になる章を少し読んでみるのですが、
スティーブ・ジョブスが気に入ったポイントは分からず、

本書の終わりには、
著者である「パラマハンサ・ヨガナンダ」氏が
亡くなった後も、その遺体が腐敗しなかった。

というロサンゼルスの死体安置所の所長の記事があります。
その前のページには、氏が亡くなる1時間前の写真が
掲載されているのですが、
ふっくらとした笑顔の顔は、若々しく、
至って健康に見えます。

この顔の人が、一時間後に亡くなったとは、、信じられません。
(この時点で、かなり不思議な本です。)


結局、スティーブ・ジョブスが何度も読み直した謎と、
著者が亡くなったこの不思議を探るため、
524ページ、49章あるこの本を、
一日一章のペースで寝る前に読むことにしました。

つまり、
約2ヶ月をかけてようやく読み終えた。
ということです。


そんなわけで、ここでは、
この524ページ2段組の内容を、
超簡単に要約したいと思います。


小さい頃から霊的※なものに興味があった、
パラマハンサ・ヨガナンダ」氏
(以下ヨガナンダと略します)は、

※幽霊の霊ではなくどちらかと言えば精神世界的意味合い

ヒマラヤの山奥で修行している僧の元に弟子入りして、
修行したいと願います。
家出をして兄に連れ戻されたりする出来事が、
本書の前半に紹介されます。

そして本書の中盤ではヨガナンダの師である、
「スワミ・スリ・ユクテスワ」と出会い、
師との交流を描きます。

お互い、前世からの知り合いであるように、
師と弟子は会った瞬間から、お互いの存在が
解るのです。

高校を卒業し、師の薦めで大学に入るのですが、

君は将来アメリカに行く。
アメリカでは学歴が大事だ。
だから大学を卒業したほうが良い。

と師からいわれます。
そして渋々大学に入ります。

ヨガナンダの父親は鉄道の重役をしており、
彼も当時のインドの上流階級の出のようです。

小さい頃に母を亡くし、父の手で兄弟は育てられ
ました。
ヨガナンダは小さい頃から進学せずに僧になりたいと、
ことある毎に親や兄ともめていたようで、
大学進学は親にとっては予想外で嬉しいことだった
ようです。

ただ本人にとって大学進学はあまり意味を
感じなかったようで、ろくに勉強をしないのですが、

勉強のできる友人から卒業試験の勉強を習い、
そして偶然友人の予想した問題があたり、
奇跡的に大学を卒業をするのです。

そしてこの弟子であるヨガナンダの未来を、
師であるユクテスワは全て見通しています。

本書に書かれる、”霊的”というのは、
お化けの話しでは無く、精神世界を表現しています。

ただ、インドでは日本と同様(というかインドが
オリジナルですが)死んでも生まれ変わるという、
輪廻転生の世界観があります。

歳を取って死ぬと死後の世界があるとか、
生まれ変わるなど、
私はあまり信じていないのですが、
しかし小さい頃からそういった話しを聞いて
共通する概念があるためか、
ヨガナンダ氏の話は、違和感なくすんなり入ってきます。

大学を卒業したヨガナンダは、
インドに学校を作り子供達を育てます。
そして師の予言通りアメリカに渡るのです。

そしてアメリカでも沢山の人に迎えられ、
学校を作り沢山の弟子ができます。

ヨガナンダは小さい頃の家出から、
渡米しアメリカで学校作る時でも、
度々お金の問題が起きるのですが、
彼は全く不安を感じません。
常に誰かから助けを得ることができるのです。

そうした天性の運というか、何かがあり、
ヨガナンダはアメリカでも大成功を収めます。

そして15年ほど過ぎた頃、
師ユクテスワが、そろそろ人生を終わりにしたい。
というテレパシーのような霊的なものを感じ取り、
インドに帰国します。

本の後半では、師との再会そして別れ、
ガンジーを初めとするインドの偉人、聖人、
聖女との出会いが書かれます。

私もガンジーの事は知っていますが、
本書で第三者から見たガンジーを初めて知りました。
彼は腰布程度しか持ち物がなく、禁欲的な生活を
していたそうです。

本書でも度々話題に成るのですが、
結局精神的に満たされると、
お金も含めた物には興味が無くなるのです。

特にガンジーの場合は、物を持たないことで、
貧困層と一体化して彼らの支持を得ると言うことも
あったのでしょう。

また、全く物を食べない聖女ギリバラの話も興味深いです。
幼くして結婚した彼女は、大食いが原因で、
姑にいじめられる原因となっていました。

物を食べずに生きたいと願ったら神様の啓示があって、
以来60年近く何も食べずに生きているという、
嘘のような話しが紹介されます。

本書を読むと、ヨガナンダ自身は、
結構食いしん坊という印象です。
インドに帰ってマンゴーを見て喜んでいる様子など
が書かれているのですが、
ですから余計食べずに生きるという話しには
興味を持ったのでしょう。

そして、最後には再びアメリカに帰ってからの出来事と、
最終章では体と魂や霊的な物。世界の宗教について。
そういった内容で締めくくられています。

インドにはカーストの階級制度があり下層階級は酷い。
といった話しを聞きますが、
ヨガナンダによれば、もともとは身分の上下や差別ではなく、
役割分担と、構成比率を表した物なのだそうです。
確かにお坊さんが沢山いても仕方ないですからね。

それがいつのまにか、元々の意味からかけ離れてしまった
のだそうです。


・・と、このような内容の本です。

アマゾンの書評を読むと、
どんな事が書かれているのか良く分からず、
凄い本みたいなことしか読み取れませんが、
私的に要約すると、こんな内容でした。


本書を読みながら感じるのは、
まさに、今そこで見ているかのように
イメージできるような文章であるということです。

日本語訳が良質であるためかも知れませんが、
こういった感覚は普段、本(特に訳本)を読んで
感じることは少ないです。

不思議な話が沢山書かれているのですが、
違和感もなくイメージできてしまう。
この本の凄いところです。

しかし肝心の、私が最も気になった、
なぜスティーブ・ジョブスがこの本を何度も読んだのか。
どこから閃きを感じたのか。
その点は最後まで分かりませんでした。


本書にはあまり書かれていませんが、
ヨガナンダはいわゆる「ヨガ」を
アメリカ(つまり世界中)に広めた人らしいのです。

ハワイなどに行くと、朝ホテルの庭などで、
ヨガをやっている人達を必ず見かけますが、
アメリカでは日本で思う以上に一般的なのだと思います。

なんとなく「ヨガ」といえば、変なポーズをしたりする
柔軟運動的なものをイメージするのですが、
本書を読むと、それはかなり表面的な解釈で
実際は全く違う物であることが分かります。

本書によれば、
「ヨガ」とはサンスクリット語で、
神と一体になるというという意味です。
瞑想によって神と一体化するというインドの
古来からある考え方のようです。

そして「ヨガ」の修行者が本書のタイトルの
「ヨギ」です。

ヨガナンダは、師ユクテスワと同じ、
スワミ教団の僧となり、
パラマハンサという称号をもらいます。
偉大な聖人であるヨガナンダが、
自分の著書のタイトルに「あるヨギ」と
謙遜するのは、意味があると思います。

この話しも本書では書かれませんが、
彼はアメリカに渡り相当に苦労したようです。

アメリカでヨガナンダの映画が公開されて
おり、その予告編にもあるのですが、

当時のインドはイギリスの植民地であり、
しかも人種差別が当たり前のアメリカに渡り、
多くの白人の信者を集め、ヨガを広めました。

ヨガナンダの力が本物だったということなのです。

そうした彼の本当の凄さというものは、
本書には全く書かれません。
真の聖者は、自分の力を見せたりはしないのです。
そうした凄さのアピールは全く無く、
逆に書かれるのは、
一人の純粋な少年が、ヨギに憧れ、修行を重ね、
僧となり、人々に教えを広めていくその姿です。

そして彼は最後には、笑みを浮かべたあと、
自分で自らの心臓を止め、亡くなったのだと思います。


この500ページに渡る本書を読んで一つ変わるのは、
ネットやメディア、科学や常識で語られることの無い、
なにか別の真実・大切な物が存在するのではないか。
という気持ちになることです。

そしてもう一つ大切なのは、
人間が何かを思い、それを叶えるにあたって、
限界は無いのではないか。
という気持ちが芽生えることです。

瞑想、つまり、自分の頭で考えて考えて考え尽くせば、
必ず何かが生まれると言うことです。

スティーブ・ジョブスがこの本を愛したのは、
ヨガの不思議な話しでは無く、
この点にあるのではないか。
・・と今は思います。

ただ本当のところは、
本書を20回位読まないと分からないのかもしれません。


・・という訳で凄い本です。

しかし本書を読み切るには相当なパワーが必要で、
読み切ったからと言って何かを知る訳でもありません。

ですから、
全ての人にお勧めできる本ではありません。

ただ、最後まで読み切れば人生が変わる。
そんな一冊であることは間違い無いと感じる
今日の一冊です。



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