リース・ウィザースプーン主演「わたしに会うまでの1600キロ」を観て、過酷な旅と人生の共通点を感じました。

夏休みも終わり、あっという間に9月になりました。

しかし、・・今年は何故か、
8月の後半から観たい映画が目白押し!
早くも見逃しつつある映画があります。(凹)

そんなわけで、本日ご紹介する映画も、
予告編を見て公開を楽しみに待っていた一本です。

アカデミー賞主演女優賞助演女優賞にノミネートされた、
リース・ウィザースプーンさん主演映画

 「わたしに会うまでの1600キロ 」

をご紹介します。

映画のタイトルとポスターの写真を見れば、
なんとなくストーリーが分かるのですが、
イメージ通り、そのままの映画です。


母を失い、麻薬とセックスの依存症となった主人公は、
誠実な夫さえも失います。

そして、たまたま街で知った、
PCTという過酷な山歩きの一人旅に挑むのです。

過酷な旅に挑戦することで、
何時しか狂ってしまった人生を取り戻そうとする
主人公を描くのがこの映画のストーリーです。


日本でもお遍路さんといって、
時に道に自分を取り戻したり、
何かの罪ほろぼしに歩いたりすることがあるようですが、
そういった気持ちは日本人もアメリカ人も変わらない
ということなのでしょうか。


さて、
「トレッキング」という言葉を耳にすることも多いのですが、
山歩きの事をさします。
登山との違いは、「トレッキング」は山頂を
目指さないのだそうです。

とはいえ、キャンプを張り露営しながら、
何日かの日程で山岳地帯を歩くのです。
確かに登山と違い、岩山を登ったりはしないのですが、
かなりの重装備と体力が必要です。


その様子を登場人物達は、
「ハイキング」という言葉を使って表現します。
私たちが「ハイキング」という場合、
「トレッキング」よりも軽い、
それこそ日帰りで数時間程度の山(というか丘ぐらい)を
散歩するイメージです。

しかし英語のハイキング(hiking)は全く意味が違います。
登山、トレッキング、ピクニック全てを含み、
とにかく自然の中を歩くのがハイキングなのだとか。

※参考URLです。
登山とハイキングとピクニックの違い – アメリカで10倍うまく立ち回る方法


上記のページには、ハイキングが時に命がけである
ということも記されており、
日本後の「ハイキング」は、英語の「ピクニック」程度
ということのようであり、全く意味が違うのです。


そしてリース・ウィザースプーン演じる主人公は、
アメリカ西部を南から北まで縦走する、
パシフィック・クレスト・トレイル(PCT)と呼ばれる
ハイキングコースの、1,600キロを約3ヶ月かけて歩くのです。

Wikiで調べたら、実際のPCTはメキシコの国境から、
カナダの国境まで、総延長は4,000千キロ以上有るそうです。

それを知らないと、
映画の1,600キロは凄いと思うのですが、
実はPCTの半分にも満たないわけです。

毎年300人位が全区間を歩くことをめざし、
その成功率は6割程度なのだそうです。

だいたい4〜6ヶ月掛かると言うことですが、
アメリカというのはやはり凄い国と思います。
仕事や学校を休んで、こんなことをチャレンジする人が、
年間300人もいるということです。


もっとも「わたしに会うまでの1600キロ」は邦題で、
原題は「Wild」です。
ワイルドというタイトルからは、全くストーリーが
わからないので、宣伝のしようがないのですが、
実際は大自然の「ワイルド」を体験することで、
主人公が変わっていくことを示すタイトルなのです。


映画ではガイドブックを見ながら歩くのですが、
途中難所で歩けないところがあり、
車でヒッチハイクをしてバイパスをしたり、
「神の橋」と呼ばれるところにゴールを延長したりします。

彼女は全区間踏破といった明確な目標はなさそうです。


映画で主人公を演じる、
リース・ウィザースプーンさんが
背負った装備一式は35キロだったそうで。
成人男子でも重いです。

学生時代、登山部の人達がだいたい30キロ位背負って
学校の階段を上り下りしていた記憶があるのですが、
少し調べてみたら、
陸上自衛隊の山岳レンジャーが背負う装備が
約40キロということでした。

映画の冒頭、リュックを背負おうとして、
苦労するシーンが描き出されます。

素人の女性がそんな重い物を持って、
アメリカ南部の砂漠(といっても多少草はある)を歩くこと
事態が危険です。
命を失う怖れがあると思いました。

そんな彼女が初日に歩いた距離は8キロです。
普通の人なら3時間もあれば歩けます。
この手の人達(男性)は、
だいたい一日30キロ位は歩くわけですが、
彼女は、8キロ歩くところから力を付け、
困難を乗り越え1,600キロを歩き切るのです。


コンロの燃料を間違えて、火がつけられず、
冷たいお粥を食べることになるトラブルは
序の口でしょう。

映画を観て、アメリカ人も、
お粥、つまり米を食うのか。と思います。
それ以外は、ナッツとビーフジャーキーです。

私も昔一日何十キロも歩いたことがあるのですが、
身軽な状態で、何十キロ歩くのと、
カバン一つでも装備を持って、
何時間も歩くのでは大違いです。
しかも一日中歩くと、
痛くて二三日は動けないのです。

トレッキングの途中に出会った男性に、
初めは痛さとの戦い。と言われますが、
体中痛い状況で歩き続けるのです。


予告編にも出てくる、
足の親指の爪が剥がれ、それを自分で抜く。
という観るも痛いシーンは、映画の冒頭に出てきます。

その処置をしている歳に、
彼女はあうことか登山靴を谷底に落としてしまいます。
その後どうなるのかと注目すると、
やけくそになって、残るもう一方の靴を谷底に投げ捨てて
しまいます。

結局彼女は、スリッパにガムテープを巻き、
何十キロも歩いて、山小屋に着いたのでした。

映画の解説をみると、原作にあって表現したくでも
出来ないところが沢山有った。と脚本家が言うのですが、
こういった話しは全て真実で、映画に表現出来ないネタも
沢山あったのだと思います。

砂漠の途中で水が無くなり、
給水地点のタンクの水もないシーンなども印象的です。

その後どうにか、ハエが湧くような、泥溜まりの水をみつけ、
それを濾過し、薬剤をいれて消毒し飲むわけです。
ここまで来ると本当のサバイバルです。

しかし、映画をみて思うのは、
実際に怖いのは、寝袋に入り込む毛虫や、
夜の動物の鳴き声でもなく、
砂漠や雪山の大自然でもなく、生身の人間(主に男)です。

実際彼女は襲われることなく、
トレッキングを終えるのですが、
彼女が、そうした人間に、
恐怖を感じたシーンが幾つも映画で出てきました。


映画の主人公である、
リース・ウィザースプーンさんは今年で39歳です。
得てして外国の女性は歳を取るのが早いので、
20代ぐらいの役者さんかと思ったのですが、
外人さんでも、歳を取っても若い人がいるものだと感心しました。

特にトレッキングシーンは、リアル感を出すため、
ほぼノーメイクで撮影したのだそうです。

原作は、実際の出来事を小説化したもので、
実際の主人公は26歳でトレッキングに出ました。

DVの父親を持ち、
主人公の母親は主人公と弟をつれ離婚して
二人の子供を育て上げました。

そして二人が成人したあとは、
仕事を続け、母親業も完璧にこなしながら、
娘と同じ大学に通い始めたのです。

そんな理想の母親は、
45歳の若さでガンを発病し死んでしまうのです。

その後主人公は結婚して、
そして離婚するのですが、
その経緯は映画では登場しません。

しかし、7年間(の結婚生活)に別れを告げ、
といったセリフがあることから、
夫とは7年以上付き合っていることが表現されます。

母親が亡くなったことで主人公は、
セックスと麻薬の依存症となり、
他の男とセックスとヘロイン(麻薬)をする現場に、
夫が彼女を助け出しに行きました。

なんという良い夫と思います。

離婚した後、元夫は他の女性と付き合っている物の、
彼女がトレッキング中に
緊急の連絡先と成ったり、
トレッキングの装備を送ったりしながら、
友人として彼女を支えています。

日本では、離婚した二人がこのような関係になることは
考えにくいのではないかと思います。
これもアメリカなのでしょうか。

そしてこの映画で大切なのは、
時代設定が1995年ということです。

時に道に迷いそうになるシーンを観ながら、
なんで携帯を観ないの?と一瞬思うのですが、

そうなんです。
携帯の無い時代の物語なのですね。
もと夫とのやり取りは、公衆電話だったり、
手紙だったりするのです。


この映画で、唯一納得出来なかった点が、
旅の後半で街に出た際に、たまたま出会った男性と
行きずりのHをしてしまう点です。
これでは昔と変わらないじゃないか。と思います。

しかし、彼女はそこで立ち止まることなく、
トレッキングに帰って行き、
そしてゴールである「神の橋」にたどり着きます。
ちょっと微妙です。


ゴールとなった「神の橋」は、
名前のもつイメージと違って、ただの鉄の橋です。
ゴールというのは案外そんなものですが、
このなんともいえない感じは私もわかります。

そのあと、主人公が、4年後再びこの橋を訪れ、
8年後(?)結婚し、9年後(?)子供が生まれた。
というセリフで映画が終わります。

どこか物足りない映画の終わり方ではありましたが、
思うのは、PCTをひたすら歩く彼女の姿は、
人生そのものだと言うことです。

常に困難や身の危険と隣り合わせで、
しかも、それでもゴールを目指して歩くのです。
そのゴールはたどり着いてみればなんてことがありません。
また、次のゴールを目指し、歩き続けるのです。

それが人生なんだ。とそんな事を感じた今日の一本です。


映画『わたしに会うまでの1600キロ』オフィシャルサイト| 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント


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