外山滋比古著「考えるとはどういうことか (知のトレッキング叢書) 」は、知識の泉のような一冊です。

年末に部屋を掃除したら、
2年ほど前にアマゾンで注文し、
・・・そのまま箱に入っていた本達が出てきました。(汗)

今日はその第一弾として、外山 滋比古さん著

 「考えるとはどういうことか (知のトレッキング叢書) 」

をご紹介したいと思います。

著者の外山滋比古さんは、
1923年生まれ、英文学がご専門で、
お茶の水大学の教授などを歴任されました。

記憶が定かではないのですが、
国語の教科書か、受験の例題で文章を読み、
名前を知ったような記憶もあります。
かなり以前から名前だけは存じていたのですが、
本を買うのは今回が初めてです。

本書はそのタイトル通り、
考える事、思考法に関して、
幾つかのテーマを外山滋比古さんが語るものです。

語るというのは、
本書はいわゆる書き下ろしではなく、
著者が語った話しを、複数の編集者がまとめ
本にしたとのことです。

読みながら、そういった背景は気づきませんでしたが、
内容が難しいわりには読みやすいのは、
そのためかもしれません。

また、本書の最終章に、
「二次的創造」という話題が出てきます。
プレーヤーや著者、モノを作る大工さんよりも、
監督者、指揮者、編集者、デザイナーなど
二次的創造というものに価値が生まれるように
なったという話しです。

本書も、名前は出てきませんが、
編集者の力が大いに発揮された一冊と感じます。


本書は「考えるとはどういうことか」について、

次の6つの切り口でまとめられています。

 1.平面思考から球面思考へ
 2.触媒思考
 3.選択の判断力
 4.曖昧の美学
 5.民族論理学
 6.二次的創造

目次の章立てを見ても、
私のようなサラリーマン的には馴染みの無い、
初めて読む言葉が並んでいます。

さらに、本書で語られる話題は、
沢山の知識がわき出す泉のようであるにも関わらず、
現代では知識よりも考える事が大切。
と知識をひけらかす様子は感じられません。

いかに普段の生活や、読んでいる本の内容が浅いか。
ということを感じます。

また専門が英文学ということもあるのでしょうか。
視野の広さを感じます。
世界的・地球儀的な観点でテーマを語るのです。

例えば、冒頭の球面思考の話題では、

 "A rolling stone gathers on moss."

ということわざについて語ります。
ロックバンド「ローリングストーンズ」の
生の由来となった言葉です。

元々イギリスのことわざです。

 ころがる石は苔を付けない。

ということは、
背景として、苔は美しいモノという考えが
ありますから、
転職や引っ越しを繰り返しすぎると
信用はつきませんよ。という意味となります。

それはイギリス人にとっては常識なので、
わざわざことわざの意味は考えないといいます。

一方アメリカでは、
同じ所にじっとしていると、
苔つまり垢や錆が付くよ。
という意味になります。

戦後多くのアメリカ人が日本にやってきた時、
英語に詳しい日本人が、それまで知っていた
意味と違う事に気付き、驚いたそうです。

その後日本では「所変われば品変わる」ということで
辞書には両方の意味が併記されています。

イギリスのようにことわざの意味を考えない
平面思考にたいし、日本はどちらの意味もある
と考えます。
こういった両者の違いを理解するのが、
球面思考の例です。

この「所変われば品変わる」に比較的上手く
対応しているのが我々日本人ですが、
世界では、平面思考に気づかないゆえ、
もめ事が起きているわけです。

その他の話題として、
俳句や川柳の例を出すまでもなく、
日本の詩はとても短いわりに、

知識と経験という、混ざりにくいもののなかに、
川柳は見事に混ぜ込んでいる。
という触媒思考の話しや、

戦後アメリカに留学した人が、
自分たちは週末デートに使わないと、
良い相手が取られてしまう。
日本には、見合いという制度があり、
羨ましがられた。
しかし、今は見合いは古い制度と考え、
恋愛結婚が主流が主流となった。

という、まったく知らなかった情報など
興味深い話しが本書には沢山紹介されております。
筆者の博識というか、教養を感じずにはおれません。

普段ビジネス書や専門書ばかりよんでいる方は、
たまにはこういった本も読んで、
教養を広めて頂きたいと感じた、今日の一冊です。



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