村上龍著「櫻の樹の下には瓦礫が埋まっている。」を読み、震災を思い出し視野が少し広がった気持ちです。

年末に部屋を掃除したら、
2年ほど前にアマゾンで注文し、
・・・そのまま箱に入っていた本達が出てきました。(汗)

今日はその第五弾として、村上龍さん著

 「櫻の樹の下には瓦礫が埋まっている。」

をご紹介します。

その昔「カンブリア宮殿」という村上龍さんが
ホストを務める番組が好きで、
毎週録画して欠かさず見ていました。

(最近テレビを全く見なくなって、
この番組を見られないことが少し残念です。)

それ以来、村上龍さんが好きになってしまい、
本を何冊も買って読んでいます。

今回ブログを書くに当たり、
ここで紹介するのも何冊目でしょう。
・・と書くため、調べて驚いたのですが、
村上龍さんの本を紹介するのは、初めてのようです。
我ながら意外です。

何冊も読んでいるのに。
と思ったのですが、その原因はというと、

私が読む村上龍さんの本は、
殆どが雑誌の投稿のエッセイをまとめた本で、
○×を覚えました。勉強になりました。
的な私のブログには書きにくいのです。

そのようなわけで、
今日もこの本を紹介しようかどうか迷い、
紹介しようと決め、再度内容確認のために
ページを流し読みしたのですが、

やっぱりエッセイ−的な文章にコメントを
書くのは難易度が高いなぁ〜。
と思いました。


さて、本書のタイトル、

「櫻の樹の下には瓦礫が埋まっている。」

ですが、
もとは小説家、梶井基次郎の有名な、
小説から取ってきた物です。
本書ではこの表現を「負の想像力」として紹介し、
作家には必ず必要なもの。と解説されます。

 桜の樹の下には屍体したいが埋まっている!
 これは信じていいことなんだよ。
 何故って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。
 俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。
 しかしいま、やっとわかるときが来た。
 桜の樹の下には屍体が埋まっている。これは信じていいことだ。
 <青空文庫より抜粋>


「瓦礫」という単語からわかるとおり、
このエッセイは、2011年1月から2012年6月までの
約一年半をまとめたものです。

そのためか、冒頭の幾つかのエッセイは、
婚活や貧困、朝鮮問題など社会問題をテーマにしていますが、
その後に続く多くの話題は震災に絡めたものとなります。

私が2012年に購入した本の幾つかは、
震災の事が書かれます。
ほんの少し、臭わせているだけの本もあれば、
本書のように、大きく紙面を割いているテーマもあります。

特に村上龍さんは、取材をベースにした社会小説を
書いていたり、テレビで経済番組を作って居るような
方ですので、震災に関する情報量は相当お持ちだと思います。
云いたいことも沢山あるに違い有りません。

震災当日はホテルにいて、地震後唯一動いたエレベータで
外に出て、コンビニに行きカップ麺を買い、
夜はホテルのバーで飲んでいたそうです。
その日のうちにホテルのルームサービスなどは再開した
ようで、カップ麺を買わなければ良かったと書かれますが、

あの震災のときに、ホテルで飲んでいた人もいるのだなぁ。
と感じます。またあの震災のときに、
ホテルの人は淡々と働いていたんだ。と思います。
飲んでいた人も働いていた人も、どちらが良い悪い
という訳では無く、こうする他のすべを知らなかったのです。

その後ホテルのバーには、
近くのデパートの店員と思われる人が来て、
帰れない人を追い出すのは心苦しかった。
という会話を横で聞いていたそうです。

今なら百貨店をはじめ、様々な企業では
帰宅難民に対して、全く違う対応をするでしょう。
震災から学ぶべき点が多かったことを再度認識する内容です。


私は村上龍さんのエッセイが大好きなので、
殆どの本を読んでいる気がするのですが、

この種の本は、
世の中の問題に対し有る男の視点で、
物を見ることが出来き、
そこから学ぶ点は多くあります。

例えば、
「給料が低くこれでは結婚出来ないのですが
 どうすればいいのでしょうか」

というのは、人生相談なのだろうか。
と問題提起は考えさせられます。

私も独身ですし、
婚活に関する様々なデータを見聞きするわけですが、

私個人的の意見では、
お金が無い。という点と、結婚できない。
という二つの問題は別の問題のように思います。

世の中定職に就き、キチンとした収入があるにも
関わらず結婚出来ない人も大勢いるわけです。

本当はそうしたあたりを紐解けばよいと思うのですが、
村上龍さんも含め、得てして結婚している人は、
この問題に対して他人毎のような気がします。
もちろん独身者のひがみかも知れません。

結局村上龍さんは、
二宮尊徳ではないが、朝は新聞配達をして、
昼は勤め、夜は風俗の送り迎えをするとか、
ハードに働けば。少しはましになる。
という答えを書いたそうです。

ある意味正しいのですが、
これでは根性論を述べているに
過ぎない気がします。

例えば、2人で稼げばアパートや食材などの
共用部分のコストが減るので、収入が少なくても
2人で働けば暮らしてやっていけるのでは。

など、戦後の暮らしはもっと厳しかったわけで、
昔の人はそのような事を考えた筈ですが、
そんな内容だと、当たり前すぎてつまらない
のでしょうか。

ハードに働くことと、
2人で暮らしてコストを削減することが
車の両輪ではないかと思うのです。
それに、2人暮らしをすれば、ハードに働く
モチベーションにもなるかもしれません。

いずれにせよ、お金が無いから結婚出来ない。
というのは、何かの言い訳のように思えて成りません。

・・・と村上龍さんを批判するような
コメントを書いてしまったのですが、
大切な事は決してコレではありませんでした。

繰り返しになりますが、
問題は、

「給料が低くこれでは結婚出来ないのですが
 どうすればいいのでしょうか」
 というのは、人生相談なのだろうか。

に私も大いに共感してしまったのです。
村上龍さんの感じた気持ちと
一致するか分からないのですが、

私は、世の中の悪さ、先の見えない閉塞感。
個人ではどうしようもない問題を
この文章に感じてしまうのです。

現代の多すぎる情報量に対し、
それを使いこなす能力が伴っていないこと。
地域社会の崩壊や、個人の対人能力の低さ・・

結局、貧乏だと辛い。
と考えるのは、ネット社会の弊害で、
豊かな情報が世の中に反乱しすぎている
わりに、個人の対人能力が伴わないため
ではないかと思う訳です。
(ま、私の事でもありますがね。)

そういったことを、
もっと書いて欲しかったような気もします。


若者のアングラ文化をテーマにした小説が
村上龍さんの代表的なスタイルですが、
誰も書かないから、書いているだけなのだそうです。

歳を取り、高校性に取材するのも辛い。
若者にはもう興味が無いんだ。
と。そんな内容も書いています。

先日紹介した伊集院静さんの本にも、
仕事で楽しかったことは一度もない。
と書かれていましたが、小説家というのは、
相当つらい商売なのだと、この歳になって
少しずつ判るようになりました。

本書では他にも
腰痛の話しやテニスのうんちくなど、
本書から得られる知識も数知れないのですが、

一ファンとしては、
これからもこうした本を沢山書いて、
私の頭を刺激して欲しいと思った今日の一冊です。



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